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君と喧嘩して些細なことで拗ねていた俺は、あるものを隠すため、秘密の部屋へ向かった。
喧嘩の原因は俺の嫉妬。
後輩と話してる君を見かけて、妬いてしまって…分かってる、君が浮気しないことくらい。
けど、嫉妬の感情は押さえきれなかった。
結果、君に八つ当たりして。
そんなことをぐるぐる考えているうちに、秘密の部屋へたどり着く。
カチャリ、とドアを開くと…
なぜか君がそこにいた。
びっくりして、口をぱくぱく動かして…
『ごめんね…』
あー、くそ。可愛すぎる。拗ねていた気持ちとか全部ふっとんで、そっと抱き締めるとキスをした。
「…許す…でも、どうして?」
どうしてここがわかったの?
顔に出ていたのだろうか…
『いつもそうじゃない(笑)和が隠れる場所っていつもここでしょ?さすがに覚えちゃったよ』
あぁ、なんでもお見通し。
コイツには隠し事できないなぁ……
とはいえ、理不尽な八つ当たりには君もちょっと拗ねていたみたいで。
『買い物、付き合ってね?』
問答無用のキラースマイル。
なんだかんだで俺は将来君の尻に敷かれるのかな…でも、惚れた弱味だ。
そんな生活だって悪くない。
君がいない世界に比べたら。
買い物と言う名のデートは生憎の雨。
俺たちは傘をさして歩く…のだが…
色とりどりの傘に邪魔されてフラフラしてる君。
「ふっ…くくっ…(笑)」
堪えきれず思わず笑ってしまう。
『和くん?』
膨れっ面でこちらを見つめる君。
そのくせ、目が潤んでるんだから…
―反則じゃん。
「ごめん」
まだ唇が尖ってる…
まわりに誰もいないことをサッと確かめると、啄むようにキスをした。
みるみる頬を赤らめる君。
『和くん、ちょ、こ、外っ!』
慌ててる君も可愛くて。
こんな姿をずっと隣で見ていたくて…
だから。
「…結婚しよう」
驚いたように俺を見つめて…
嬉しそうに『はい』と呟く君。
役所で手続きを済ませて。
婚姻届に捺印した。
帰りには雨は上がっていて。
空には虹がかかっていた。
『虹、キレイだね』
ぽそっと呟く君。
でも、俺には…
『オマエの方が…』
キレイだよ。
そう言おう、
そう思ったとき…
君が視界から消えた。
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あのとき、急に視界から消えた君は、居眠り運転をしていた大型トラックに轢かれてしまった。
即死だった。
医者には『痛みを感じている間もなかったと思います』と言われたのがせめてもの救いだった。
あれから3ヶ月たち。
俺の心の時間は止まったままだった。
君と過ごした時間を失うのにはあまりにも唐突で。
幸せにすると誓ったばかりだったのに…
泣くことも、喚くことも出来ずに。
仕事で笑うしか出来なくなっていた。
メンバーは敢えて気付かない振りをして普段通りに話しかけてくれる。
もう何が夢で現実か…分からなくなってた。
『大丈夫?』と聞かれれば「大丈夫」と答える。本当は大丈夫でもなんでもないのに。
どんどん壊れていく俺。
ぼーっとする時間が増え、だんだん友達も減り。
気が付けばいつのまにかメンバーしか俺のそばにいなくなった。
君が居てくれたらそれだけで、俺は幸せだったのに…
いつものように携帯に入っている君の笑顔の写真を眺めていたら、ひょっこり相葉さんが顔を覗きにきた。
『ニノー!今日飲みにいかないっ?』
無駄にハイテンションだな…
こういうときの相葉さんは断るとあとがめんどくさいから…
「わかりましたよ…行きます」
観念したように両手をあげる。
『やたっ!』
嬉しそうにはしゃぐ相葉さんが君と重なる。
また気持ちがぐちゃぐちゃになりそうだ。
その夜、個室の居酒屋につれていかれた。
『とりあえずビール!ニノは?』
「…あー、私も同じものを」
ビールを一口のんで。
お通しに箸をつけたところで、相葉さんが口を開く。
『ニノさ、生きてる?』
何をいってるんだ?
『ちゃんと生きてるって言える?あの子にも。前に進まなきゃ、人間死んでるのと同じだよ!』
君に…生きてます、って言える?…
感情がぶちギレた状態の俺は人間らしく振る舞っているだけの操り人形なんじゃ…
『泣きたいなら泣けよ!喚きたいなら喚けよ!そうじゃなきゃ生きてるって言えないよっ!』
目には涙をため、必死になって俺に説得する相葉さん。
「…っ…」
いつの間にか氷のように凍った心が溶け出して。目から大粒の涙がこぼれた。
「っ…いっぱいいっぱい、アイツに言いたいことがあったのにっ…」
―好きだよ、も、愛してるも。
あのとき言いそこねた「キレイだよ」も。
すべて相葉さんにぶちまけた。
相葉さんはだまってずっと聞いてくれて。
そして一緒に泣いてくれた。
泣きすぎて目がいたくなって。
お互いに真っ赤に泣き腫らした目で。
「ニノの泣き虫っ」
『泣き虫ほあんたでしょうが!』
噛みついたあと、二人で笑った。
久々に心から笑った。
「ニノさ。あの子は死んでも忘れなければニノの心の中で生きていられるよ。だから一緒に歩いてけばいいじゃん」
帰り道、相葉さんに言われる。
ああ、そうか…
俺が忘れなければ君はずっと心の中(ここ)にいる。
一緒に歩いて行ける気がした。
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あの事故から早三年。
時は過ぎるのが早い。
でも、君のいない時間はつまらない。
君とキスしたあの部屋も、君の荷物もそのままに。
あのときとあまり変わっていない部屋。
変わったのは俺が三歳歳をくったのと、君がいないことくらいだ。
君に作ってもらっていたご飯も、君が残してくれたレシピ集をみれば再現できるようになった。
今日はシチューだ。
二人分よそって、ひとつは俺の前に、もうひとつは君の遺影の前におく。
「いただきます」
写真に今日あったことを喋る。
当然、答えはない。
けど、心の中で相づちを打ってくれる君がいて。それだけで幸せだ。
俺の皿は空っぽになり、君の皿には残ったまま。
それにもやっとなれてきた。
もっと上手く作ったら、少しは減るのかな…
答えはnoだ。
けど、期待して頑張ってしまう俺がいる。
お皿を片して。
缶ビールを片手にソファーに座って。
開けた窓から入ってくる風が心地良い。
いつの間にか3本も空けていた。
心地好い酔い加減。
(和くん、またそんなに飲んでぇ!)
幻聴か?君の声が聞こえる。キョロキョロしても見えるはずもなく。
「…ずりぃんだよ…」
君には見えているんだろう、けど俺には見えないんだよ、きみの姿が。
「…俺さぁ…なんか変わったかな…」
(んー、だらしなくなった。和くんもっとシャキッとしなよっ!)
また聞こえる心の声。あの頃から変わらない君の声。
「…はぁい」
ちゃんとしなさい、と言うように窓からふわり、と風が入ってきた。
缶を片してベッドに入った俺は、また君の事を思い返している。
―あのとき、照れてどうして言えなかったんだろう。
「好きだよ」
「愛してるよ」
「…キレイだよ」
この世のどこを探しても、君より大切なものはない。
今ならそう誓える。
君と見てきた世界が、時間が、空間が。
beautiful worldであって、
かけがえのない大事な思い出。
失った今なら言える。
―虹より君の方がキレイだよ。愛してる。
だから、いつか。
そのときが来るまで待ってて。
一番に君を迎えにいくよ…
―Another story―
ねぇ、和くん?
君はちゃんと食べてるかな。
私がいないからって、だらしないこととかしてないよね?
私がいなくなってしまってもう三年。
貴方は傷付いて泣けなくなってたね。
どうして神様は私の命を奪ったのかな…
でもね、
今日、貴方に再び巡り会えました。
貴方のお家でまた一緒に暮らせるんだね。
…………………………………………………
今日、家に犬がやって来た。
小さくて人懐っこくて。
『ニノん家、犬飼える?』
聞いてきたのは翔ちゃん。
なんでもブリーダーをしている友達がいて、そこで仔犬が産まれたらしい。
『俺さぁ、動物苦手だから助かったよ』
苦笑いで俺に仔犬を渡す翔ちゃん。
ケージの中にはちょこん、と柴犬が座っている。
「ありがとう、大事に育てる」
受け取ってケージを開けると一目散に俺の足元に寄ってきた。抱き上げると嬉しそうに舌を出している。
『なんか…似てるね、あの子に』
しみじみ、といった感じで俺の手の中の仔犬を見つめながら翔ちゃんが呟く。
「…ふっ(笑)」
確かに似てる。
甘えん坊な所も、なんか憎めない可愛らしさも。
『じゃあ、よろしくね。あ、メスって言ってたよ』
ひらひらとてを振って出ていく翔ちゃん。
さて、名前はどうしようか。
―和くん
名前を呼ばれた気がした。
仔犬を見つめるとこちらを見つめていた。
まるでここにいるよって言うように。
―和くん、私だよ。
そういっているように見えた。
だったら名前は…
君の名前を付けよう。
ずっと呼んでいたあの名前を。
「おかえり。」
Fin.