今年(2026年・令和8年)も早や7月。あと二か月もすれば新米の出荷が始まります。一方、この2年間ほど世間を騒がせた「令和の米騒動」の影響で、高値掴みをした25年産米を抱えた中間業者は、新米が出る前に損失覚悟で在庫を捌く必要があるため、そろそろ「バーゲンセール」が視野に入る頃かと思います。しかし、これを単純に「中間業者の経営ミス」で済ませられるでしょうか?ここで発生した「中間業者の損失」が「生産者」に押し付けられるのか、「消費者」に転化されるのか……。騒動が落ち着いた今、改めて「令和の米騒動」を考えてみたいと思います。

 

2024年夏に始まり、2025年、そして2026年初頭まで尾を引いた「令和の米騒動」。メディアでは「南海トラフ地震の臨時情報」「転売ヤー」「減反政策」など、さまざまな“犯人探し”が繰り返されました。しかし実際にデータを追っていくと、騒動の本当の出発点は、もっと地味な数字――「等級」にあったことが見えてきます。

ここで前提知識として以下の3つの事実を踏まえた上で、先を読んでいただきたいと思います。

①米の国内消費量は食の多様化などにより、1962年をピークに現在に至るまで年々減少傾向にあり、それに合わせて生産量を調整してきたこと。減反政策は2018年に廃止された以降は生産が自由になったとはいえ、消費量の減少傾向を考慮すれば米を増産する積極的な理由がないこと。

②「作況指数」とは過去30年間の傾向を元に、その年の収穫量が平年と比較して数値化した指標のこと。そこには①の影響による生産量の減少傾向も反映されるため、例えば今年の生産量が「平年並み」と判定されたとしても、過去の生産量と比較すれば減っていること。

③2020年初頭から始まったコロナ禍により主に外食・業務用米の需要が激減し、2020年産米以降の米価が暴落したこと。よって、米価の向上=生産量の増加に向けての流れは2023年5月に感染法の5類に移行して社会・経済活動が正常化したことを受け、2024年産米から始まること。

 

1 すべての発端は2023年産米の「歩留まり悪化」

2023年夏、記録的な猛暑と少雨が日本各地を襲いました。特に深刻だったのが新潟県です。8月の平均気温は平年より4℃以上高い30.6℃を記録し、降水量はわずか2.0mmと全国最少。このフェーン現象による異常高温・乾燥が3回も発生したことで、主力のコシヒカリの多くが「白未熟粒」(米粒が白く濁る現象)を起こしました。

その結果、例年70〜80%前後だった新潟県産コシヒカリの1等米比率は、2023年産では3〜5%台まで急落(時期・調査機関によっては1%台という報告も)。過去に例を見ない品質低下でした。

 

2 「等級」は「おいしさ」ではなく「歩留まり」の指標

「1等」「2等」とかを聞くと、「1等の方が美味しいもの」と思いがちですが、等級とは外観検査で健全な粒がどれだけ含まれているか(整粒歩合)を測ることで判定されるレベルのことで、「精米したときにどれだけロスが出るか」を示す指標です。なので、等級が下がっても味は変わらない、というのはお米屋さんや農水省関係者も繰り返し説明してきたことです。

ただし、小売の主流は白米販売です。等級が低い玄米は精米時に砕けたり除かれたりする分が増えるため、同じ量の白米を確保するには、より多くの玄米が必要になります。つまり「収穫量(作況指数)」が同じでも、店頭に並ぶ白米の実質的な量は減ってしまうのです。2023年産米の作況指数は全国的に「平年並み」とされていたにもかかわらず、この歩留まり悪化によって、2024年夏の段階で実質的な供給不足が生じ、これが「令和の米騒動」の始まりとなりました。

 

3 2024年も「先食い」で不足が連鎖

2024年産についても、作況指数は「平年並み」の見込みとされました。しかし2023年産の不足を補うために、2024年産米を早い段階から前倒しで消費する「先食い」が進みました。ある研究者の分析では、2023年産だけで約40万トンの供給不足が生じ、その穴を埋めるために2024年産米が本来の消費期間より早く食い潰されていったとされています。その結果、2025年にも再び品薄・価格高騰という「米騒動」が発生することになりました。

 

 4 「平年並み」という言葉が招いた増産の見送り

今から考えると、2023年産の歩留まりの悪化を考慮して2024年産で増産に舵を切るべきでした。しかし皮肉なことに、2023年産の作況指数が「平年並み」と発表されたことで、農水省をはじめとする農政サイドから明確な増産シグナルは出ず、中間業者(卸・集荷業者)からの増産依頼や契約も行われませんでした。

長期的に見て日本の米消費量は下降トレンドが続いていることとともに、コロナ禍で米価が暴落した直後だったことを考慮すれば、この判断にも致し方ない面はあります。農政サイドの増産要望やJA等の中間業者からの仕入れ価格の値上げ・仕入れ量の増加契約がなければ、生産者側に米を増産する理由は生まれません。結局、この2024年時点での判断ミス――「平年並み」という数字の裏にある歩留まり問題を見落としたこと――が、2026年まで続く騒動の根本的な原因になったと言えます。

 

5 「災害不安」「転売ヤー」は主因ではなかった

2024年の騒動においては「南海トラフ地震臨時情報や台風への不安による買いだめ」と「メディアの煽り報道」が主な要因として指摘されました。実際、2024年8月の地震臨時情報後、防災目的の買いだめが急増し、店頭から米が消えたことは事実です。それに続く2025年の騒動では、「転売目的の悪徳業者の存在」と「メディアの煽り報道」が槍玉に挙がりました。しかし後の農水省の在庫調査では、疑われた業者の在庫はむしろ前年より減少しており、「消えた米」は実際には存在しなかったことが判明しています。

つまり、どちらの説も影響が皆無だったわけではないものの、構造的な主因ではなかったということです。ただし、根拠の薄い「犯人探し」を煽り立てた一部メディアの姿勢は、社会不安を不必要に増幅させたという意味で、批判されてしかるべきでしょう。

 

6 「実質的な減反」説も「流通の目詰まり」説も誤りだった

騒動のさなか、一部の専門家がしきりに主張した「実質的な減反が続いている」という説がありましたが、これは実態と整合しません。減反政策が廃止された2018年以降も農政サイドからJA等を通じて生産量の目安的な数値は出されてはいますが、仮にそれに従わなかったとしても罰則があるわけでもないので、「実質的な減反」など生産現場には存在しません。

また、「大豆や小麦・飼料米への転換が実質的な減反だ」という意見もありますが、米の価格が長らく低迷していたことを踏まえると、「限られた農地から最大の利益を生む」ことを考える生産者からすれば、経営判断として当然でしょう。こういった主張は生産現場の状況を把握していないと思われます。

一方の農水省自身も一時、「米は足りているが流通が目詰まりしている」という説明(いわゆる流通スタック論・流通悪玉論)を展開しましたが、後にこれを撤回し、「コメは足りているとずっと申し上げていたことが誤りだった」と陳謝する事態となりました。農水省が生産現場の実態、特に等級低下による歩留まり悪化を正確に把握できていなかったことが、この一件で露呈した形です。

 

7 これから焦点となるのは「値下げ圧力」との綱引き

米騒動の混乱の中で高値がついた2025年産米ですが、2026年産の新米収穫を前に値崩れは避けられないとみられています。高値で仕入れた中間業者の損失はほぼ確定的で、2027年産に向けては値下げ圧力が強まるでしょう。

一方の生産者側も、燃料費・資材費・人件費の高騰を抱えており、簡単には価格を下げられない事情があります。次の2027年産の価格形成において、この「値下げを迫る流通側」と「コストに耐えられない生産者側」のどちらが優位に立つかによって、今後の日本の米づくりの方向性――中間業者・消費者優位となるか、生産者優位となるか――が左右されることになりそうです。

 

8 まとめ

「令和の米騒動」は一見すると地震報道や転売ヤーといった“わかりやすい犯人”によって語られがちでしたが、根っこにあったのは2023年の猛暑による「歩留まり悪化」という地味な構造問題でした。そこに「平年並み」という言葉のミスリードが重なり、増産のタイミングを逃したことが、3年越しの混乱につながったのです。「作況指数」に関しては2025年に廃止され、25年産から新しい指標を使用することになりましたが、これも農水省が生産現場の状況を正しく把握できなかったことの証拠ともいえます。

「令和の米騒動」は農水省をはじめとして、専門家を含むメディアから発信される数字の裏側を見ることの大切さを、あらためて教えてくれる出来事だったのではないでしょうか。

 

 

●追記

消費者庁「玄米及び精米に係る食品表示制度の改正について」によると、等級ごとの歩留まりは1等92%、2等89%、3等85%(規格外は不明)となっています。

24年産の主食用米の全国収穫量は679万2000t(前年比2.7%増)であり、等級比率は1等:75.9%、2等:19.4%、3等:3.5%、規格外1.2%と平年並みの状況でした。これを計算をすると収穫量は1等515万5128t、2等131万7648t、3等・規格外31万9224t(歩留まりの計算のため合計した)となります。これに上記の歩留まりを使用して計算すると、精米後の白米量は1等474万2718t、2等117万2707t、3等・規格外27万1340t、合計618万6765tと推計されます。

なお、食料・農業・農村政策審議会では24年産の歩留まり率89.2%とされ、それを計算すると白米量は605万8464tとなります。推計値は3等と規格外を合計したものを3等の歩留まりで計算しているので、推計値より約13万t低いこの値は納得のいくものであり、一応の基準としておきます。

それを踏まえて、問題の23年産米を考察してみます。その年の全国平均の等級比率は1等:60.9%、2等:約30.4%、3等:7.0%,規格外:1.7%と、この数字からも品質低下がうかがえます。主食用米の全国収穫量は661万tなので、計算すると1等402万5490t、2等200万9440t、3等・規格外57万5070tとなります。これを歩留まりで計算すると、精米後の白米量は1等370万3451t、2等178万8402t、3等・規格外48万8810t、合計598万662tと推計されます。

一方、同審議会で示された23年産の歩留まり率は88.6%。それを元に23年産の白米量を計算すると585万6460tとなり、推計値より約12万t低い値となります。24年産と比較すると妥当なように思えますが、そもそも一等米が15ポイント低く、3等・規格外が4ポイント高いのに、歩留まり率が0.6ポイントしか違わないのは、これまで腑に落ちないところでした。

しかし、実際に等級別歩留まり(1等92%・2等89%・3等85%)で加重平均を計算し直すと、理論上の差もほぼ0.6ポイントとなり、実測値の変動と一致します。等級低下の大半が「1等→2等」の移動にとどまり、歩留まりが大きく下がる3等・規格外への移動は限定的だったためと考えられます。なお、農水省の実測値(88.6%/89.2%)と等級別データからの理論計算値(90.48%/91.09%)の間には約1.9ポイントの差がありますが、これは実際の精米工程でのロスや、便宜上3等米と合計した規格外米の実際の歩留まりが当然3等より低いためと考えられます。
このように、数値上は23年産の歩留まり低下が「令和の米騒動」の原因であるとは見えにくいため、机上でデータのみを観察している農政サイドや専門家ではなかなか原因が見つけられず迷走し、加えてそういった農政や専門家からの情報でニュースを作るメディアが更に煽る……という状況が「令和の米騒動」の正体と言えるのかもしれません。どこかで「歩留まり」という現場の人間なら分かる情報を元に検討されていれば、ここまで傷口が広がらなかったのではないかと思います。

 

 

●出典・参考資料

①②2023年産米の等級低下について

・農林水産省 発表資料(令和5年9月30日時点速報値):新潟県産コシヒカリ1等米比

 率が前年79.2%→3.6%に低下(マイナビ農業 2023年12月4日配信記事にて引用)

・新潟県「令和5年産米に関する研究会」報告書『令和5年産新潟米の1等級比率低下要

 因と対応について』(令和5年12月):10月31日時点のコシヒカリ1等級比率4.9%、

 8月の日平均気温30.6℃などのデータ

・新潟日報デジタルプラス 2023年9月15日「新潟県産コシヒカリ1等米比率過去最低か、

 記録的高温響き0%台推移のJAも」

・日本経済新聞 2023年9月28日/12月8日 記事(新潟コシヒカリの品質低下)

・農林水産省 農産物検査結果(確定値):令和5年産全国1等60.9%/2等30.4%/3等

 7.0%/規格外1.7%

・農林水産省 農産物検査結果(速報値):令和6年産全国1等75.9%/2等19.4%/3等

 3.5%/規格外1.2%(12月31日時点)

 

③④2024年産の作況指数と先食い、増産見送りについて

・農林水産省 作柄概況(令和6年8月15日時点発表):新潟県「平年並み」(新

 潟日報デジタルプラス配信)

・キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)山下一仁氏 コラム(2025年6月24

 日):2023年産の約40万トン供給不足、「先食い」構造の分析

 

⑤⑥「災害不安・転売ヤー」説、「流通の目詰まり」説、農水省謝罪について

・Wikipedia「令和の米騒動」項目(最終閲覧:2026年6〜7月頃の版)

・週刊ポスト(NEWSポストセブン)2025年2月28日

・マネー現代(講談社)2025年9月3日:農相の陳謝発言

 

⑦2025年産の価格動向、2026年産以降の見通しについて

・日本経済新聞 2025年10月24日「26年産米は一転減産『2%減』 農水省が目安、供給

 不足に懸念も」

・東京新聞 2025年10月24日「『コメ増産』小泉進次郎前農相の方針は2カ月で転換 鈴

 木憲和新農相『需要に応じて生産』で価格はどうなる?」

 

⑧作況指数廃止について

・日本経済新聞 2025年6月16日「コメ作況指数を廃止 小泉農相『生産現場の実態と合

 わず』」

・日本経済新聞 2025年9月10日「コメ作況の新指標、農水省が提示 直近5年と比較し

 猛暑の影響反映」(新指標は2025年産から適用予定)

 

⑨追記(歩留まり計算)について

・消費者庁「玄米及び精米に係る食品表示制度の改正について」(2021年6月22日、原 

 資料は農林水産省提供):等級別精米歩留まり 1等92%/2等89%/3等85%(規格外 

 は記載なし、本記事では3等の歩留まりを準用)

・農林水産省「米の需給見通しについて」(令和8年3月、参考資料4、農産局)12〜13

 ページ「精米歩留りの推移」:5年産88.6%、6年産89.2%、7年産(速報)88.8%(と

 う精数量実績調査、398精米事業者集計)

1月半ばからの約2週間、何回ものピーク来た寒波がようやく落ち着きました。
この間、毎朝の積雪量と道路の除雪状況の確認が日課となり、それを見て早朝からの除雪をし、在宅の日なら降雪量が多い日は夕方にももう一度除雪、仕事がある日はハラハラしながらの通勤を強いられました。
2月に入ってその日々がようやく終わり、ようやくブログを書く余裕ができたのですが、今週末はまた大雪予報が出ているので心配しています。日曜日は仕事があるので困るのですが…
(寒波と除雪の様子については動画を出しています)
その日曜日(2月8日)は衆議院議員選挙が予定されています。前回の参院選では各党の農業政策を見て分析する試みをして投票先を決めたのですが、今回は選挙期間が一週間と過去最短期間であり、かつ投票先はほぼ一択と考えてよい状況なので、政策内容の確認・比較はしませんでした。で、日曜日は仕事もあるし、大雪が予報されているので、期日前投票をしてきました。結果はどうなるか…
ただ一つだけ言えることは中革連……、あれは選挙が終わったら無くなるのではないですか?
立憲と公明が合同した政党ということですが、それは衆議院だけで参議院は残っているのでしょ。これは政党助成金を受け取れるようにするからという指摘もありますが、それ以前から厳しい選挙結果が予想されていた立憲と公明の議員が生き残りをかけたカモフラージュなのは明確です。特に立憲の得意技の「党名ロンダリング」の一種に過ぎません。その証拠に公明が突きつけた安保関係法の容認(違憲と批判していた)と原発再稼働容認(原発反対を主張していた)をいとも簡単に認めた(ように見せている)訳です。
選挙に受かるためには自分の主義主張を簡単に曲げ、ろくに説明もできないような輩は信用できないし、ましてや政権担当能力などなく、それどころか政治権力を与えてはいけません。
本人たちはとにかく自分が国会議員を続けられることが第一で、選挙の結果が良ければ中道を続ければいい、悪かったらまた元に戻ればいい(だから帰る所を残した)としか考えていないでしょう。
来年の今頃には「中道?そんなものありましたっけ?ウフフフ…」、こんなのが目に浮かびます。

前回から引き続き、2025年参議院選挙における各党の公約チェックの最後です。


今回最初に取り上げるのは左翼の新興勢力であるれいわ新選組です。

色々書いてありましたが、「国が農産物の価格保障をする」とか「目標価格が市場価格を下回ったら政府が補てんする」とか言ってる時点で落第決定です。

①でも述べましたが、いったい誰がどのような根拠でモノの価格を決められるのでしょうか? その権限があるところは必ず利権化し、汚職にまみれます。共産主義国家がその典型例です。まったく話にならない!


一方、右翼の新興勢力である参政党。

こちらも同様に農業政策をつらつらと述べられていましたが、「農家の公務員化」の一点で落第決定です。

公務員化するということは、何をどれくらい作るかは国が決めるということになり、できた農産物も国のモノになるはずです。ならば、農産物は国が販売するということ? そこから生まれた利益の配分はどうなるの?と、数々の疑問が湧いてきますが、それらの答えはありません。唯一分かることは、こんな非効率なことをやっていた共産主義国家がどうなったかという結末だけです。左右両極端の勢力だと思いきや、目指すところは一緒なのは興味深いですね。こちらも話になりません。


あと、日本維新の会と日本保守党。

今回ほど農業政策が注目される選挙の公約で、あの短くて内容の薄い政策を出してくるところを見るに、これらの政党が農業に関して知見もなければ、関心もないということがよくわかりました。


その他の政党に関しては…、見る価値ありますか?

どうせこれらの支持者は他党の公約と比較する気もないでしょう。ご自由にどうぞ。


これで公約のチェックは終わったわけですが、正直言って絶望感すら漂っています。どの政党も諸手を挙げて支持は出来ません。その中でよりマシなものを選ぶしかないわけですが、一つ考慮できることとすれば継続性でしょうか。農業は年単位で動く産業ですから、コロコロと土台が変わっては困ります。そうなるといくつかに絞られますが、どうにもまだ決められません。結局は他の政策を参考にしつつ、あと1週間悩みそうです。


皆様も色々な考えがあるでしょうが、投票だけは行きましょうね。お互いに。

前回に引き続き、2025年参院選における各党の農業関連公約を見ていきます。


今回は一時の勢いは自爆で減退するも、勢力増が期待される国民民主党から。

色々と記載がありますが、全体を通すと与党との親和性が高い内容のように思われます。ただ、米については「需給調整を国が行う」と書いてあります。表ではあれだけ「減反はダメ」と言っておきながら需給調整をするとは、一体どうやるのでしょうか?

あと、さらっと「種子法を復活させる」と書いてありますが、どのようにとは書いてありません。色々と意見はあると思いますが、廃止されるにはそれなりの理由があるはずで、それに対する対応がないまま単に復活だけを約束するのは、いささか無責任だと思います。


次に立憲民主党です。

彼らは今回も農家戸別補償制度の復活を標榜しています。しかも、内容が強化(増額)されています。

メディアでは「自民党が農協を使って農家票を買っている」という指摘がありますが、それはもうはるか昔の話で、前回の民主党政権でこの政策を実行して以降、下野してから現在に至るまで、この政策を掲げることによって農家票を買っているのは立憲民主党です。現に新潟県の国会議員はほぼ立憲民主党が勝っています。(前回の衆院選は自民党不利ではありましたが、それ以前からも立憲の方が多いです)確かにこの制度は農地を耕作しているだけで補助金が出るので、貰える農家は嬉しいでしょう。しかし、農地に補助金を付加するやり方には大きな欠点があります。


農業を知らない人ほど、農業は「自分が持っている農地を自分が耕作する」というイメージが強いと思いますが、実際は「農地を地権者から借りて耕作をする」パターンの方が多く、特に農地面積を多く必要とする米農家はその割合が顕著です。でも、その農地自体に補助金が紐づけられるとどうなるか、まず補助金目当てに耕作能力が低下した高齢農家や兼業農家からの農地の流動が減ります。これによって専業農家への農地集約が止まり、新規参入が減ります。しかし、耕作能力の低下は否めないので、耕作放棄地が増えます。また、生産コストである地代の値下げ交渉が雲散霧消するどころか、最悪は増額圧力まで出ます。これらは実際に民主党政権時に起こったことです。

将来的に仮に立憲が与党入りしてこの政策が実現したとしても、立憲政権が長続きするとは到底思えませんので、立憲の下野とともにこの政策は打ち切りとなります。でも、高止まりした地代と増えた耕作放棄地は残ります。悪夢再びです。その一方で都市部のサラリーマン向けに、新規参入支援を今の10倍にする…農業を舐めてんのか!と言いたい。


さて、両党とも政策内で「食料安全保障の確立」を謳っていますが、食料安全保障には農産物自体の自給率の向上だけでなく、生産資材の確保も重要であるということは、以前のブログで指摘したとおりです。この点については、国民民主党は「飼料の国産化」は書いてあるものの肥料農薬については記載は無く、立憲においてはその具体的方策は一切ありませんでした。

これについては国内政策だけでなく、地政学、経済関連条約、外交防衛も踏まえた政策が必要になりますが、これらは特に立憲民主党の「一番苦手な分野」なので、何も書けなかったのだろうと推察するところです。そんな政党に一票入れられますか?


長文になったので、今回はここまで。次回、残りの野党に触れて終わりにしたいと思います。

参議院選挙選挙投票まであと1週間、投票先をどうするかまだ決めかねている方も多いはず。今回は主要各党の農業政策を確認して、評価してみようという試みです。私見とはなりますが、投票先を決める際の一助となれば幸いです。


まずは政権与党の自民党から。

公約の詳細を確認しましたが、はっきり言って目新しいことはありせん。これまでの政策の継続です。

気になる点としてまず一つは小泉農相が決めた作況指数の公表停止と、それに代わる新たな統計をどうするのかについて何も触れられていません。そもそも今回の米騒動で露呈した農水省の状況把握の不備に対する対策もないのが不満です。

そしてこれも政策にはないのだけれども、石破首相・小泉農相をはじめ、他の政党党首などが口をそろえて「米を増産する」と発言しているわけですが、一体どうやってするつもりなんでしょう?

農家は職業選択の自由に基づき農業を生業としており、その自由な経済活動の一環として稲作の可否を決定し、経営判断として品種の選択や生産量を決めているのであって、そこに政府や役所の指揮命令権などありません。例え首相であっても、農家に稲作を強制する権限は無いのです。なのに「増産する」という発言をするのはどういう了見でしょうか? もし農家は唯々諾々と自分の命令(無権限)に従うに違いないと考えているのであれば、「馬鹿にするな!!」と言いたい。それこそ農家を舐めるなよ。


次に同じく政権与党の公明党です。

こちらは政策に「米を増産する」と書いてありました。でもその手段は書いてありませんでした。本当にどうするのですかね?

で、その次の項目にコメの価格が急落する際には、備蓄米の買い戻しで対応するとありましたが、私は基本的にモノの価格を政府が操作することを良いとは思いません。それは自由経済の原則に反することはもとより、古今東西の歴史上、うまく行った試しはないからです。


例えば、昨年末から今年の始めにかけて、キャベツが高騰しましたよね。一玉1000円を超えることもありました。でも政府は何もしなかったし、国民も政府に対策を求めることもなかった。自由経済ですからそれでいいと思います。でも、それが米の価格高騰となると状況が変わりました。マスコミの連日にわたる米騒動報道に惑わされる都市部住民。的外れな犯人探しと、それに乗っかる政治家。その結果、元々は市場価格の調整に使わないとの約束で始めた備蓄米制度を急改変し、明らかに銘柄米の価格低下を狙う始末。この数カ月の状況を、私は非常に苦々しく思って観ていました。


農業は気象環境に影響を受けるものですから、全体が凶作なのに一部だけ豊作とかはありません。よって、豊作なら単価は下がるけどたくさん売ることで利益を確保し、凶作なら量はないけど単価が高くなることで利益を確保する、それで平年の利益はトントンになるという商売です。キャベツ農家は一玉1000円にすることで利益を確保できたかもしれません。でも、米農家は単価を上げようとすると政府やメディアなどが一斉に邪魔をするわけです。メディアでの「米が高い」との発言を聞くと、「コメ農家は儲けてはいけない、貧乏なままでいろ」と聞こえてしまうくらい腹立たしかったのです。

実際には24年産の米を卸業者にほぼ売ったあとに令和の米騒動が起こったので、市場価格にコメ農家は関与できなかったのですが、外からこの状況を観れば「やっぱりコメ農家は儲けられないな」と思われても仕方がない。これでまた耕作者の減少が進むでしょう。


モノの価格は市場での需要と供給のバランスで決まる、この大原則を無視して「適正価格は◯◯円」とかのたまう政治家やコメンテーターはバカだし、こういう世情を批判しない経済学者や自称評論家どもは恥を知れと言いたい。とにかく、備蓄米という手段で米の市場価格を人為的に変えようとする今の政府の政策や公明党の公約は、否定的に評価せざるを得ません。


ヒートアップしたので今回はここまで。少し頭を冷やして、野党の公約をチェックします。