最後の呟き壺 -2ページ目

最後の呟き壺

あと何年生きるかわからないけれど、今を楽しんで生きるつもりです。その時々の思いを忘れないように記録しています。

これは老女の備忘録として書いています。

やっと、するべきこともやり終わり、ほっと人心地ついた
昨日、今日です。
この頃、日常の心の動きの中で、ふと思い出すのは、昔、身近にいた人たちから聞いた印象深い言葉の数々です。

小学校5年生だったでしょうか、同じクラスに転校生がやってきました。
その少年は落ち着きのない子で、九州の訛りを早口でしゃべり、突然大きな声で笑ったりして、クラスメートからは異端者扱いを受けていました。今にして思えば、彼は新しい環境の中で、自分を守るために道化に徹していたように思えてなりません。
ある日、国語の授業だったでしょうか、先生が「すばらしい詩を紹介する」と言って作者の名も言わず読み始めたのです。
『有明の朝はポンポン蒸気の音から始まる・・・』
彼がやってきた有明海の遠浅の海。そして、刻々と変化する海色と空色のグラデーションの中、小型の船がなん艘も同じ方向に滑っていく・・それが私の頭の中で映像として映りました。
小学校5年生の私はその詩に感動しました。
読み終わった先生が作者の名前を言った時、みんなから
「えーっ!」という驚嘆の声があがりました。
そう、あのお道化者の彼がその詩を書いた張本人だったからです。
その日を境に、彼に対するクラスメートの態度が少し変わったように思えました。
今でも、この季節になると、色白でピンクのほっぺをした
少年と、詩のでだし「有明の朝はぽんぽん蒸気の音で始まる」を思い出します。卒業間近になって、彼が慶応中等部に進学すると聞きました。そうか、やっぱりね。
私は深く納得した覚えがあります。

もう一つは中学生の頃、担任の女の先生がホームルームの時に私たちにたずねたのです。
「ねえ、皆さん、この頃ね、春が近づいてきたなぁって思うの。それは、真夜中、遠くから聞こえる電車の音が、なぜか今までより軽く聞こえるの。皆さんにはそんな日常の音の変化で季節の移り変わりを感じるってことないですか?」
我が家は線路からは離れた場所にあったので、電車の通過音を直に聞くという経験はなかったのですが、この先生のおっしゃている意味はよく分かりました。
そして、深夜の電車の通過音と闇の中で咲いている線路沿いの菜の花が頭に浮かび上がったのです。
日常をよく見つめる人はみな、誰もが詩人であるのかもしれません。

春はもう始まっていますね。