これは老女の備忘録として書いています。
Audibleのお試し期間終了が近づいてきていて、もう止めようか、続けようか迷っていたところ
何故か、今まで敬遠していた村上春樹の本を開けてしまいました。
「ノルウェイの森」。
村上春樹はその文体が翻訳文のようで、目で追うと、生理的に馴染み悪く、最初から敬遠していた作家でした。ところが、なんとなく聞くのならどうだろうか?と思って聞き始めた矢先、先日の私の転倒事故以来、弟君からのメールが届きました。
「ノルウェイの森」は、なんとなくその静かな物語の流れと、寡黙な主人公の佇まいが好ましくて、試聴続行中でした。ただ、ところどころ噴き出すフレーズが散りばめられていて、これは私が著者村上春樹さんとややかぶる世代であり、主人公の過ごしている時代を明確に想像できる故かもしれません。
しかし、主人公の名前がいくら偶然にせよ「ワタナベトオル」はないでしょ!?
ついつい、あの亡くなられた、いつも元気そうだった俳優氏のお顔が浮かんできて、あまりのミスマッチに思わず笑ってしまいました。(亡くなられた方なので、なんとなく心苦しいのですが、これ、正直な反応です。)
寝付けず、ずっと聴いていると、次の日に入った時刻に、弟君からこれも又、昔を回想するような内容のメールが着信、自分の心持とちょっとタイミングが合いすぎて、なんとなく落ち着きませんでした。
そう、「ノルウェイの森」で、私が青春のころの感覚に戻されていたところに、弟君のメールには、
「バーブラ ストライザンドの追憶のテーマ曲を聴いているんだ、あの頃がすぐそこにあるようだ・・・」というなぜか普段の彼にはふさわしくない感傷的な一文。
そして次には
「マリアカラスも聴いている、なんか、昔、姉さんと向き合っていたころを思い出したよ。マリアカラスを聴く時と同じで、僕はいつも少し緊張していたような・・」と。
青春時代でしたねぇ。
人は年を取るとなぜ昔を懐かしがって、いろいろ思い出すのかしら。
少なくなった持ち時間、そんなに遠くない日に、この世界から離れていくという予感が常に頭にこびりついている今。
だから、輝いていた時代、刺激的だった時代をノスタルジックに回想するのでしょうか。
私がかって、あんなにも拒絶していた文体に素直に添っていけるのは、こちらが受け入れられる状態になってきたからということなのでしょう。
それは、現在の弟君も同じなのかもしれません。
それで、返事はどうし返したかって?
「再会した時から、そういえば、昔のように人の話を途中で遮るような
焦った物言いを一回も聞かなかったわ。
あなたは大人になっていたのよね。
とっくに、立派な大人になっていたんだわ。」
そう、人は成長し、成熟し、それに伴って変容するのです。
二度と、あの頃には戻れないのです。