今年で二十歳になるZZR400Nが点火系のトラブルで入院した翌日の事。夜の国道のBPを走っていたらほぼ全ての車が追い越し車線に入らず走行車線側を走っていた。何台か処理しながら走っていくと前方に赤いランプが点滅しているのが見えたので赤いランプから4台後方で走り続けた。しばらく行かないうちに後方から路肩をすり抜けながら勇者様が乗ったスクーターが追い抜いて行く。勇者様は何も恐れず赤い回転灯の前に出て制限速度プラスαで走る。我々の様な分別のある者は赤い物には警戒するものだが、勇者様は違う世界に住んでいるので行動原理が違う。
勇者様の英雄的行為に恐れをなしたかどうかは解らないが赤いランプは点滅したままの状態で数分が過ぎ、BPの峠を越して長い下り坂に差し掛かった時に前方から男性の声が聞こえた。赤いランプの前を塞ぐ勇者様の走る速度が若干落ち、大きな交差点の手前で勇者様がスクーターを停めたのが見えた。我々は慎重にその横を抜けながらミラーで様子を窺うと赤いランプから人影が出てきて憮然としている勇者様に近づいて行く。
我々が見た最後の勇者様の姿はここまでであった。勇者様は国家財政に喘ぐこの国の為にその身を挺して国庫に貴重な寄付をしてくれたに違いない。勇者様は決して死なないしリセットで何度でも蘇る。凡庸なる我々には真似の出来る事ではない。君子危うきに近寄らず。死んだ御祖母ちゃんの言う通り。