大学の講義の帰りに、フランクフルトのスターバックスに立ち寄った。ここはちょっとこじゃれた窓の席のある静かなカフェで、この辺に3つあるスターバックスの中でも私がよく立ち寄る場所だ。

席に座った途端、丸顔のお兄さんがこの間はどうもありがとう。と声をかけてきた。

このマニラからきている今年50歳のお兄さんは私のカップを片付けてる間に、人生相談になり、ドイツの大学を卒業したけれども、ずっとカフェでアルバイトして生計を立てているとのことだった。顔を見た瞬間、前世でそろばんの先生をしていたのが浮かび、あなた数字が得意でしょ?というと急に涙を流し、数学で食べていきたかったけれど、職がなくてと、泣きくづれてしまった。

まさか日本の江戸時代にそろばんを教えてたのよ、なんていうこともできず、でもね、数字が好きだったら、会計の仕事や、アナリストの仕事や、いろんなものがあるじゃない?というと、きらきら目を輝かせて。そうですね、希望を持ちます。と去っていった。

それから週数間の今日である。そんなことを言ったのも忘れてた私に、今日上機嫌で話しかけてきたお兄さん。なんでも、新しい勉強を始めたそうである。それを支えてくれてる奥さんの手料理のうまさを自慢していた。

 

こんどその新しいことの話をするから、とキッチンへ戻った彼は4倍くらい元気で幸せそうだった。5分ほどの会話だったけれど、私をも元気にしてくれたお得な会話である。

 

フィリピン人の彼は、たぶんかなりの確率でカソリックだと思うので、輪廻転生というコンセプトを説明してもわかってもらえるかどうかはわからないけれど、元気になってもらえて、それだけでも今日はよかったと思える一日である。こんな一日一日が増えていくごとに私の人生もほかの人たちの人生も幸せになっていくのだと心の中が暖かくなった。

 

ちなみにこの文章は作家のひすいこたろうさんのお話=ゲーテの恋文の逸話からかこうと思い立ったものです。大学の帰り際、いつもゲーテのお家を通ります。

ひすいこたろうさんにぜひお見せしたいフランクフルトの街並みです。