前にも話したが うちのドイツの お義母さん はとっても健康志向で いろんな薬を持っている。
まるで 富山の薬屋さん の 置き薬のように 色々出てくる。
小さいころに 富山の薬売りのおじさん という方がいらして 半年か 一年おきに 漢方薬をもって 売りにいらっしゃった。
うちの 日本のおばあちゃんが ひいおじいちゃんのころから使ってるというその薬箱は大変年季の入ったもので その黒光りのする 箱からはいろんな薬が魔法のごとく出てきた。
中でも子供心に 苦くて嫌だったものに 熊の胆 という黒い塊がある。 それは かわいらしい熊の絵が付いたポップなデザインの袋に入っていて なんでも熊のタン汁を乾かしてできたという胃薬である。
胃の調子の悪いときに飲まされたもので 今でもその苦さは覚えている。 おばあちゃんの 熊の胆薬は その苦い味とともに なぜかなつかしい 安心感を与えてくれているもので そんなほっとした 気分を ドイツのうちのお義母さん も与えてくれるのだ。
家族で インド系カレーレストラン で おなか一杯食べてきた私たちはもう動けなくなって テラスで まつたりと過ごしていた。
葉巻の大好きなお義父さんは お気に入りを出してきては 私たちに説明している。
そんな中 登場したのが 今まで見たこともない タンポポ系 のイラスト入りのお酒である。
抱えて出てきたお義母さん はとても誇らしげである。
これとっても体にいいのよ、 胃にも優しいし、 試してみなさい と 小さなショットグラスに注いでくれる。
どうやら薬用酒 ということらしい。 でもアルコール度数が 四十度近くとかなりの強さで ためらう私。
この間いってきた アルプスで見つけたものらしく タンポポに似た 黄色い鼻の根っこから取り出した ものをもとに作るらしい。enzian schnaps とよばれる この飲み物。 日本の焼酎に似た かなり強めの 飲み物で 口にしたときからもう胸が熱くなってくる。
ドイツの強いお酒の苦手な私は 一口飲んで勘弁してもらい お義母さんの 薬草講座に聞き入った。 その効用は心臓病の予防から リュウマチに至るまで様々で、 聞いていて 驚きだ。
お酒を普段あまり飲まない お義母さん、 強い薬用酒には びくともしない。
ウオッカもウゾも 一気に 飲み干してしまう。
そんな うちの お義母さんに皆 安心感を与えてもらっている。
一家に一台 うちお義母さん がいれば大丈夫。 そんな ほっとした感だ。
そんなお義母さん のハンドバック いろんなものが入っていて 時々 スズメバチ対策の道具まで出てくるのが笑える。
外でいろんなことが起こりすぎてる今、 こんな 富山の薬屋さん 安心感が必要なのかもしれない。毎日誰か一人にでもこんな安心感を与えて上げられれば 私たちの心の平和が 静かにやってくるかも そんな夢を見ている私だ。