あなたの趣味は何ですか とよく聞かれる。それはドイツで頻繁に聞かれる質問で、英国では聞かれたことがない。
何時もお母さん、主婦と何かしらの仕事を掛け持ちしてきた人生の私にとって 趣味ということを気にしたことさえない。
娘にマフラーを編んでほしいと せがまれたときには 編み物が趣味だし、美味しいものに目がないので、料理が得意といえばそれまでである。
人生一貫してリラクゼーションとしてやっているものの一つに トイレ掃除がある。
日本の産みの父親を育てた 彼の養母は家事に厳しい人で、毎日 朝早く玄関先とその前庭の掃き掃除をさせられた。トイレ掃除もしかりで、トイレをピカピカになるまで磨くのである。
そのせいか トイレ掃除がいつしか快感になるという奇妙な現象が起きた。
ドイツのトイレも英国のトイレも 単純なデザインのせいか 掃除がしやすい。
本当は ねじまで 取ってトイレのふたを 外して掃除をしたいのだが、ドイツの ねじはかなり頑丈にできていて とりにくい。
何度もねじを 回すのに 失敗してきた夫は お願いだから ねじはとらないでくれと懇願してくる。なのでドイツの トイレのふたを外したことはない。
洗剤の種類を増やすのが嫌なのと 環境汚染をなるべく少なくするため、 普通に使うものを洗浄に使う。
手を洗うせっけんなどは かなり技術が進んでいて いろんな汚れを落としてくれる。
いつか ロンドンで 同僚の細菌学者と 石鹸についての議論をしたことがあった。 アフリカで エボラ熱 根絶するために働いていた彼女が 漏らしたのが 手の洗浄である。 アルコールではなく、石鹸とお水で洗うのが一番効果的だったともらす彼女に私も同意するしかなかった。 というのも化粧品会社で 製作を担当していた時 様々な実験をしたのだが、 お水と石鹸の二つがやはり 細菌やウイルス を払しょく するのに最も効果的だったからだ。
それはさておき、私のトイレ掃除は お水から始まる。 きれいに水で 拭き掃除するというのが かなり床などには効果的で、たまに スペイン製の 赤ちゃん用コロンなどを一振り 入れて 香りをよくすることもあるが、 毎日もしくはきずいたときに汚れを取る ということにしている。 汚れがたまるということはあり得ず、 よく来客に来た 友人たちに あなたのトイレは新品のようにピカピカしていると お褒めの言葉をいただく。
私は 金沢という 古都の郊外に生まれたが、 随分最近まで、 トイレの神様を置き 敬意を表すという習慣があった。
欧州にはそんな素敵なかわいらしい 神様はいないけど、 私の中に その小さな神様は住んでいて 今でも養祖母の トイレ掃除は あなたを美人さんにしてくれる というつぶやきが聞こえてくる。
お金もかからず、 毎日お金を稼いでくれている夫に ささやかな貢献ができる一石二鳥の趣味であり、自分でも満足感がある。
人生 物の値段 というよりもこの 満足感や 安らぎ感といったものが大切で それにはお金がかからないけど効果的 というものが多数ある。
英国の祖母もトイレは いつもきれいに と態度で示した人で、彼女のピンクのカーペット が敷き詰められた イギリスのトイレは 何となくメルヘンチックで ラベンダーの香りがいつもしていた。
私はこの二人の祖母に トイレの女神さまを 授けてもらい 末永く幸せに と トイレ城の お姫様物語は 続く。