発達障害について 5
ADHDは日本語で注意欠陥多動性障害と訳される発達障害の一つです。
症状の特徴に、不注意・他動性・衝動性があり、「落ち着きがない」「集中力がない」「期日が守れない」など周囲に誤解されやすく、叱られてしまうこともあるかもしれません。
しかし、それは本人のやる気やだらしなさのせいではなく、ADHDが原因なのです。
ADHDの症状はたくさんあり、現れ方も異ります。下記のような3つの症状が主にあります。ADHDの人が全て当てはまるわけではありませんが、これらの症状は日常生活に支障をきたすほどです。症状の現れ方には、不注意のみ現れる場合、多動性・衝動性のみ現れる場合、不注意と多動性・衝動性の両方が現れる場合などがあります。
1 不注意
注意力・集中力が持続せず、あちこちに意識がいってしまいます。
教室で物音がすると、すぐに物音のしたほうに意識がいってしまったり、そわそわしていているように見えたりします。1つの物事に集中できないことがあります。
子どもでは日々の宿題や長期休暇の課題、大人では重要な書類などを期限内に仕上げることができないなど、大事な「期限を守れない」ということになります。
忘れ物が多い、物をなくすことが多い、片付けられないという症状もあります。
2 多動性の症状
多動性はじっとしていられずに、動きが多いのが特徴です。
授業中でも教室を飛び出してしまったり、教室内を歩き回ってしまったりします。
また、移動はしないものの、常にモジモジと動いていたり、キョロキョロしていたり、体を小刻みに揺らしたりします 。
3 「衝動性」の症状
衝動が抑えられず、突発的に行動してしまいます。感情のコントロールが出来なかったり、自身の欲求をコントロールできずに衝動買いをしてしまったします。
思ったことをすぐに口にしてしまったり、相手が話の途中であるのに話始めてしまったりしてしまいます。
ADHDの症状は7歳までに明らかとなり、幼稚園や学校生活のさまざまな場面で2つの特性による行動が確認されますが、大人になってから診断がつくこともあります。大人のADHDは、子供にはよくみられる多動性は、大人になると軽減されてきます。
大人のADHDの主な症状は衝動性と不注意です。(しかし、モジモジしたり、キョロキョロしたりする症状や多弁の症状に変わって残る場合もあります。)
大人のADHDの症状は、社会生活においてマイナス面となることも多く、重要なものを失くしたり、約束を忘れたりすることは、だらしない・無責任と思われてしまいます。そのことにより、人間関係が心のバランスを崩し、うつ病や不眠などその他の症状を伴いやすくなるのも特徴です。
ADHDの原因は、はっきりとはわかっていません。さまざまな研究より、ADHDは「脳」の機能に問題があることで、注意や行動をコントロールすることが難しくなっていると考えられています。
生まれつきのものであり、きちんとしたしつけを受けていないことや、また、逆に厳しすぎる養育環境によって、ADHDになるというわけではありません。
もしお子さんがADHDと診断されたとしても、早期から適切にサポートすることで、自信や自尊心を失わずに社会へうまく適応できるようになる場合があります。そのためには周囲の理解や支援が欠かせません。
ADHDを持つ子どもの治療は、
1. 環境への介入
本人が少しでも集中しやすくなる方法を考える物理的な介入法や、勉強や作業を10~15分など集中できそうな最小単位の時間に区切って行わせる時間的介入法などが有効です。
2. 行動への介入
保護者がADHDの子どものことを理解し、良好な親子関係を保ちながら、ADHDの子どもの行動に対応できるようにするための、保護者に対するペアレントトレーニングなどがあります。子どもの行動に対して、具体的な対処法を学びます。
以下に代表的なポイントを示します。
○子どもの行動に注目し、今できている好ましい行動は必ずほめる
○好ましくない行動は注目せずに無視し、行動を止めたらすぐにほめる
○人を傷つけるなど危険な行動をした場合、叱りつけるのではなく、その場から離し、クールダウンさせる
3. 薬物療法
薬物療法での薬は、ノルアドレナリンやドーパミンといった脳内物質の不足を改善する効果があり、それによりADHD特有の症状を抑制する効果が期待されます。
近年、ADHDが世間に知られるにつれ、不注意や多動・衝動など注目されやすいですが、意外に好きな分野や特異な分野では集中力を維持できたり、ミスも少ないことがあります。ADHDの多くの方は、独自の視点や豊かな発想を持つことでその才能を生かしたり、衝動性も適切な方向で発揮することで行動力につながるため、社会で十分に活躍することができると思います。
つぎは、トゥレット症候群ついて考えたいと思います。 つづく
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