「もしかして、◯◯さん?」

 
 
 
知人の母の葬式で彼女を見つけた。
 
 
 
昨年、小学校の同窓会の案内を送るために
 
 
 
誰か連絡先を知らないかと手を尽くしたがわからなかった。
 
 
 
その頃、まだ“いじめ”という言葉を聞くことはなかったが
 
 
 
彼女は小、中学校に通う間ずっといじめられっ子だった。
 
 
 
とくに男子の間では露骨に嫌なことを言われ、のけ者にされていた。
 
 
 
だから、なおさら自分からはクラスの子たちと距離をおいていた。
 
 
 
運動会のフォークダンスの時も、誰の手に触れることもなかった。
 
 
 
中学校を卒業と同時に彼女はみんなの前から消え
 
 
 
誰とも関わることもなく忘れ去られた。
 
 
 
 
 
同窓会の準備で数名が集まった時、名簿に住所も何も記載されていない彼女の名前を見つけ
 
 
 
みんな酷いことしていたなぁ…、
 
 
 
そんな話が出て、彼女を探したが見つからなかった。
 
 
 
同窓会の話をしたら
 
 
 
「次は呼んでね」と明るく答えてくれたが
 
 
 
きっと彼女は来ないだろうと感じた。
 
 
 
月日が流れたからといって、そんな簡単なものではないだろう。
 
 
 
あの時、みんなに「これはいけないことだ」と
 
 
 
言う勇気があったなら
 
 
 
後悔は小さくてすんだのに。
 
 
 
そんなことはまるでなかったかのように彼女は笑顔で帰って行った。