県境にほど近い行き止まりの山村にやって来た。



子ども?



いないよ、ここには…。



若者?



50代が若者だな…。



路地から出る所には、



色あせた“飛び出し婆ちゃん”が立っていた。






飛び出しても車にはそう出くわさない。



お店もない。



週に1度程度の移動販売で必要なものを買う。



「手紙なんか出さないよー」



郵便ポストは寂しく飾られていた。




ここを限界集落と呼ぶのだろう。



しかし、そう呼ぶ人もここには来ない。





東京で大きな地震が来たら810000人がトイレに行けないらしい。



ここではそれは大丈夫。



ただ忘れられたこの村には



いつまで経っても救援物資は届かないかも知れない。



孤独死?



そんな世間が騒ぐほど珍しいもんじゃないよ。



まわりには数えるほどしか人間はいないんだから。





まだ、桜は咲いていない。



華やかに咲いても誰も知らない。



これでいいのだろうか…。