昼食をとるために、うどん屋さんに入ると
一番奥の座敷に二人の女性が座っていました。
ひとりはうどんを食べ、もうひとりは向かい合ってお茶だけを手元に置き
食べている女性をじっと見ています。
うどんをすする女性のテーブルの上の左手には
もうひとりの女性の手が添えられていました。
うどんを食べている女性は痩せて青白い顔で
そのゆっくりと箸を使う動作は、それなりの事情を感じさせる様子でした。
手を添えていた女性が席を離れると
食べていた女性はその手をとめて、うつむき顔を伏せました。
私と一足違いで席をたった女性が、私に会釈をして横を過ぎて行きました。
私が二人を見ていたのを知っていたのでしょう。
誰かの手助けがなければ社会に出れない人がいます。
誰かのせいで社会に出れなくなった人もいます。
強い者が生き残り、強い者によって動かされていく社会の中で
弱者や心を病む人たちに手を差しのべることができた時に
人が他の生き物と異なる存在になれる気がします。
強い者だけ生き残るのは、立派でも勝ち誇ることでもなく
当たり前のことなのだから…。

