ソウルハウス二階宿屋__そこにアーサーの部屋はあった。その名の通り、ソウルハウスのメンバー達が生活を送る空間である。
それぞれ個室があてがわれており、依頼を受けない時はギルドのメンバー同士が交流をはかったりなどしている。が、アーサーだけは例外であった。
あの初陣の1件はあっという間にギルド中に広がった。
以来、ギルドのメンバーはアーサーを尊敬の眼差しで見るものや、嫌悪や嫉妬の眼差しで見てくる者のみとなり、アーサーもまたその状況を当たり前のように受け入れていた。そのせいか、ギルドマスターから、どこの部隊に入れとも何も言われないままだ。
そうして、アーサーは1人で外に出てトレーニングをする日々だった。本来なら1人で任務に行きたいところだが、新人1人で任務には行かせてもらえないようだ。
仕方なくアーサーは剣術の練習をしていた時だった「アーサー君や」しゃがれた声がギルドの入り口付近から聞こえた。
振り返ると、ビリーが扉の前で杖をつきながらヒゲを弄んでいた。
「ちょっと、こっちへ来なさいな。」
ビリーはしおれた手で招くとギルドの中に入って行った。
ギルド内は相変わらず人が多いため、アーサーを見ては興味深そうに見る者、あからさまにこちらを憎んでいる目をしている人。だが、アーサーはそんなことを気に留めず、ビリーが座るカウンターまで歩いて行った。
よく見ると受付嬢意外に1人、薄桃色の髪をした、顔立ちからすると、アーサーと同年代と思わせる少女がビリーと並んでいた。
コホン、と少女は咳払いをする。そして、両腕を体の前で束ねて、
「改めて、ソウルハウスへようこそ、これからアーサーとチームを組む華です、よろしくね。」
ニコッと可愛らしい、まさに"華"のような笑顔をアーサーに向けたが、アーサーは一瞥し、ビリーに対してわずかに声を荒げる。
「どういうことですか、マスター? 俺はチームではなく、"部隊"__最前線を志願したはずです。」
「ああ、聞いているぞ。じゃがねぇ、悪いけどおまえさんじゃまだまだ経験不足じゃ。」
「そんなことはありません。俺がそこらの人よりも上手くやれます。」
アーサーの不遜な態度に明らかにギルド内の空気が硬直する。ビリーはどうしたものかと肩をすくめる。華だけは、なにか、子供のわがままを楽しんでいるようなそんな顔をしていたが。
ソウルハウスでは、チームと部隊に分かれて活動している。
部隊は索敵部隊、討伐部隊の2つに分かれている、討伐部隊は強大な"モンスター"の討伐を任務とする、いわば最前線の部隊である。強大な"モンスター"を索敵部隊が発見次第、速やかに討伐するのが役目だ。
そして、チームはそれらの部隊に引っかからないほどの比較的非力な"モンスター"を狩る__それでも一般人からすれば恐怖以外の何物でもないが__で、新人はまずチームを組み、腕を磨くのが通例なのだ。
野生動物たちの親が、弱らせた獲物を子供に与えて狩りの練習をさせるようなものである。
だが、アーサーにはそれが不満だった。
自分はこのギルドの新人では1番強いという自負もある。
「まあまあそんなことは言わないで、早速任務があるから、いこ?」
華はアーサーの肩を軽く叩いて、クエストボードに向かった。
アーサーは初対面の人になだめられるという、ぎこちないな感覚を味わいながら渋々と華の後に着いて行った。