ざらついた表面を水滴は滑り落ちる
無数に細かな傷がついて磨かれ
ほぼ球体に酷似していた
向こう側から光が当たり
此方側には影が落ちている
立体構造は予測の範囲である
漆黒を練り上げて濃密に煮詰める
薫りを憶える以前に穴は塞がれる
手探りで表層を撫で回し徘徊する
耳のあった辺りから読経が聴える
飢餓を忘れ水の匂いも忘れている
両手があった筈の洞に感覚がある
叩き割った表層は内側と呼ばれる
外へと流れ出れば月明かりに照らされる
あんなに高いところから落ちたのだな
呟く喉が枯れた呼吸音を出している
ざわついた草原に光は溢れ続けている
月の海から産まれた私は名を持たない
照らされた顔はざらついた面であった