原題:Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance) (2015)
空も飛べる..はず?
あらすじ。
過去「バードマン」というスーパーヒーロー映画を主演し、その当時は大スターであったがその後ヒット作に恵まれず、
現在は落ち目のハリウッド俳優であるリーガン・トムソン。
彼は再起をかけて、自身が俳優になったきっかけでもあるレイモンド・カーヴァーの短編小説を自ら演出・主演で舞台用にアレンジし、ブロードウェイに進出すると決めたのだった。
人間関係等の様々なトラブルを抱えつつ、舞台の制作を進めていく中で
リーガンは自分自身の問題と向き合わざるを得なくなる。
そのうち彼には事あるごとに自分を嘲う「バードマン」の声が聞こえるようになる…。
[登場人物紹介]
・リーガン・トムソン
(マイケル・キートン)
映画「バードマン」で知られる元大スター俳優。
・マイク・シャイナー
(エドワード・ノートン)
性格に難ありの有名ブロードウェイ俳優。
・サマンサ・トムソン
(エマ・ストーン)
リーガンの娘、サム。薬物依存症治療後、リーガンの付き人となる。
・レズリー・トルーマン
(ナオミ・ワッツ)
ブロードウェイに初出演する女優。マイクの恋人。
・ジェイク
(ザック・ガリフィアナキス)
リーガンの弁護士で友人。今回の舞台のプロデューサー。
・ローラ・オーバーン
(アンドレア・ライズボロー)
リーガンの恋人で女優。
・シルヴィア
(エイミー・ライアン)
リーガンの元妻。
・タビサ・ディッキンソン
(リンゼイ・ダンカン)
NYタイムズの辛口演劇批評家。
ネタバレ感想。
とにかく凄い、の一言。
結構前から観たかったのですが、いざレンタルしようとしたら棚から消えてて一度諦めていたのですが、今回別の映画を探してたらたまたま見つけたのでやっと観ることができました。
※今回探してた映画は同じように消えたので諦めました。
・全て長回しの一本撮りのような映像。
回想などはなく場面の切り替わりといえば空の移ろいのみ。
すべてその場で起こっているような錯覚をします。
まさにこれ自体が舞台を見ている感覚です。
・個性的すぎる登場人物。
上に人物紹介を入れましたが、一人ひとりがすごく濃いキャラクター。
憂き目の俳優、舞台以外はクズな男、元ジャンキーな娘、頭の固い批評家、等々…。
まぁこれだけ濃い面々ならいろいろ起きますよね。
・リーガンという男と「バードマン」
のっけからパンイチで空中浮遊しているだらしない体のおじさん、リーガン。
眩しすぎる過去の栄光のせいでついた“元バードマンの俳優”というイメージを払拭し、“できる男リーガン”として認めてもらいたい一心で
「映画でダメなら舞台で成功すればいいじゃないか」とばかりに無謀にもブロードウェイに全てを賭して挑戦します。
案の定批評家にはコテンパンに言われ、
娘や共演者からは「誰もお前なんか見ていない」と罵られます。
どんどん自分の世界に入り込むリーガン。
彼に囁くのは、何者でもない“本当の自分=バードマン”。
ここにリーガンの中の理想と現実が剥離してきているのが伺えます。
彼が度々超能力を使うシーンがありますが、それが本物なのかという言及はありません。
しかし、建物の屋上から飛び立ち、街を見下ろして、劇場に戻るシーンでは飛んでいたはずの彼が最後にタクシーから降りてくるという描写があります。
きっと囁くバードマンも、超能力もそれらすべて彼の妄想なのでしょう。
その辺りが曖昧にされていることによって、彼自身の中の現実も曖昧なものとなっている事を感じられます。
ある時、ひょんなことからパンイチでNYの街を歩かなければならない羽目になったリーガン。
彼はそこで笑われ、動画を撮られ、たくさんの奇異の目に晒されます。
そして娘からその動画の再生回数がすごいという事実を知らされます。
そこでリーガンの中の何かが壊れたのではないかと感じました。
皆は“元バードマンであるリーガン・トムソン”自体に興味はなく、なにか突飛な出来事がなければ人々に注目されないということに気がつきます。
もはや過去の栄光などあってないようなもの、誰も自分に興味がないということに改めて気付かされてしまう。
その後の公演での演技中に本物の銃で自分を撃ちます。
彼が自殺しようとしたのか、意図的に鼻を吹っ飛ばしたのかわかりません。
鼻を整形手術した彼の顔は、皮肉にもバードマンそっくりとなってしまいます。
そして澄み渡る空を眺めながら窓の外へ出るリーガン。
彼の娘が最後に笑顔で見上げた空には、彼は飛んでいたのでしょうか。
はたまたこれも彼の妄想で、その時に聞こえるサイレンの音が現実なのでしょうか。
誰にもわかりません。
きっと様々な解釈があると思うのですが、私はこの様に感じました。
・繰り返す舞台
劇中、何度か同じ舞台を観ることになるのですが、観るたびに演者達の背景が変わってくるので同じシーンでも違った印象になります。本当に素晴らしい。
・総じて感じたこと
観始めて最初は何が何だかわかりませんでした。
現実なのか妄想なのか、混乱します。
しかし終わってみれば人間の苦悩を描いた作品なんだという感想を持ちました。
リーガンは“バードマンの人”ではなく、リーガン・トムソンとして認めて欲しかったのです。
しかしどこかでまた「バードマン(の時の様なスター)に戻れるのではないか」という気持ちも残っているというジレンマ。
登場人物もそれぞれが葛藤しながら生きていました。
自分が特別な人間ではないのはわかっている、わかっているけどどこかでそう信じたい。
これは単にショービズ界を皮肉るエンターテイメント作でも、SFでもなく、
人間ドラマです。
本当に面白い映画でした。





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