谷桃子バレエ団によるバレエ版「レ・ミゼラブル」2024年公演の初日を拝見しました。


この作品、2年前にバレエ版「レミゼ」があると知り、レミゼファンとして観ておかねば…と思い、谷桃子バレエ団のことはほとんど知らずに足を運んだのでした。

*その時の感想↓


その後、谷桃子バレエ団はYouTubeに力を入れ始め、指導者、ダンサー1人ずつの人となりがわかるドキュメンタリーが大人気。6月のガラ公演も、このレミゼもSOLD OUTで、YouTubeの力ってすごいなー。


2年前は1人も知っているダンサーさんいなかったのだけど、今回はメインキャスト皆の顔も名前も個性もキャリアもわかった状態で足を運んだのでワクワクが段違い。やっぱり舞台は、出演者を知っている方が楽しい。


前回同様、バルジャンは今井智也さん、ジャベールは三木雄馬さんの日でした。お2人ともバレエ団のプリンシパルで40歳。バルジャンとジャベールとなると、ただ跳んで回れば良いってものじゃない。表現、存在感…年齢、経験を重ねたからこその踊りでした。


(ミュージカルで言うなら)今井さんバルジャンは「Who am I?」、三木雄馬さんジャベールは「Javert's Suicide」に相当する場面の長いソロが見せ場。

ミュージカルなら歌で、映画やストプレなら台詞で表現される逡巡や葛藤だけれど、どちらも本来は心の中の自分とのせめぎ合いで、その表現として(無言の)ダンスの親和性がこんなに高いのか?と思いました。銀の燭台の使い方も、向き合う心の視覚表現のようで印象的。

今井さんの色気と野生味、三木さんのクレバーな雰囲気がピッタリだったと思います。あと、バルジャンがマリウスを軽々と肩に担いでるのは、さすがはバレエダンサーと思いました。


ファンティーヌを踊られた永橋あゆみさんは、生では始めまして。これぞプリマの美しさ💕美しさゆえに翻弄される残酷な人生…過去さまざまなミュージカル版ファンティーヌを観てきたけれど、一番、原作のイメージに近いと思いました。過去の回想(去っていった恋人との)パ・ド・ドゥはバレエならではのエモーショナルさ。


エポニーヌの永倉凛ちゃんは2年前にも同役を踊っていたけれど、私は別の日を観たので、今回が初。マリウスに触れた手を見つめて踊るところは指先まで切なさが迸るよう。ミュージカル版レジェンドの島田歌穂さんを思い出させる、強くいじらしいエポニーヌでした。


コゼットの大塚アリスちゃんは夢のような美しさ。YouTubeで、彼女は(白鳥や精霊は得意だけれど)人間を踊るのが苦手…と聞いていたけれど、この世のものでないような美しさ、儚さ、たおやかさがマリウスに一目惚れさせたのだとわかります。2年前は本舞台上で学生たちが戦い、張り出し舞台でコゼットが祈っていた場面が印象的でしたが、今回の特設ステージは狭かったのか、コゼットが本舞台手前で踊って奥で革命という使い方でした。


マリウス昂師吏功さんはファースト・アーティスト…お若いのかな?凛ちゃんアリスちゃんに注目しすぎて、あまり覚えてないのが申し訳ない💦ミュージカルのカフェソングに相当するようなマリウスの見せ場がないのが残念ですね。


アンジョルラス森脇崇行くんは前回に続き観るのは2回目。新人だった2年前から多くの主役を踊ってきて、今やスターの輝きを放っています。革命シーンは男性の少なさが残念なのだけど、森脇くんの輝きがその物足りなさを補って余りあるのがさすがです。

革命家たちが戦い、倒れていく場面は、前面で展開するバルジャンとジャベールの芝居と同時進行なので目が足りないけれど、重層的な演出がドラマチックでした。


全体として見ると、やはり男性が少ないのがバレエ版の枷になってるかな?最初の街の場面は女性ばかりだし、革命家も名前があるのはマリウスとアンジョルラスだけ。ミュージカルファンとしては、グランテールとか、コンブフェールとか、ジョリとか……1人1人が名前ある役で個性を見せてくれたらもっと胸熱なんだけどなーと思います。