ミュージカル「この世界の片隅に」2回目観劇です。


前回、ほとんど予備知識ないまま観て、主に登場人物の感情面でわからない部分が多かったので、帰宅後すぐに原作購入、読破しました。


何もわからず観ていた時は、その場面場面に集中しているので逆に時系列は気にならなかったのですが、原作を読んで見返すと、かなり時系列パッチワークな感じですね。

昭和20年6月を起点にして振り返るだけでなく、結婚後の里帰りを起点にした回想も入るし、昭和20年7月の空襲は(6月の詳細を語る前の)前半に入っている。回想している人も、すずさんだったり、周作さんだったり、リンさんだったり。

水原さんが年月を語るのでストーリーテラーの役割?と思うと周作の姉やすずの兄が語る場面もあるから、そこも一貫していない。

「波のウサギ」…"海の底に眠る愛しいあなた"という歌詞だけ見ると、水原さんが亡くなった後?と思うけど、最初の里帰り時の回想で出てくるから、まだ水原さん生きてるしなぁ(しかもこれ歌うの子役すずちゃん)。その回想をさらに外から見ている視点があるような気がする。

たぶん時系列とか、誰の視点とか関係なく、さまざまな人がそれぞれに出会った人の姿を心にとどめている「記憶の器」の底をランダムに覗き見るようなミュージカル…と考えれば良いのかも?


昭和20年6月…大切なものを2つ無くしたすずちゃんの目には"世界が歪んでいる"…ここから始まるのって、「四月は君の嘘」は有馬公生の目に映る"世界が色を無くした"ところから始まるのと似ている?上田一豪さんの作るミュージカルのセオリーかな?


ただ、「四月は君の嘘」の作曲はフランク・ワイルドホーンだったことに対して、この舞台はアンジェラ・アキさんの作詞作曲。英語からの翻訳でなく日本語オリジナルで作られたからこそ生まれたと思われる繊細な歌詞で、日本人の感性に響く歌が生まれています。

"波のウサギ"とか、

"記憶の器"とか、

"あの人を呼ぶこの人の口の端っこ"とか、

"この世界で出会った全ては私の笑うまなじりに宿っている"とか、

素敵だなぁと思っていた言葉はすでに原作の中にもあって、美しい原作を理解、尊重して真摯に作られた日本オリジナルミュージカル…クリエイターたちの幸せな出会いに感謝です。


この日、初めて観たキャストは…


大原櫻子ちゃん(すず):櫻子ちゃんとの出会いはミュージカル「わたしは真吾」で、8歳のしずかを演じた姿が主演の高畑充希ちゃん&門脇麦ちゃん以上に印象に残りました。その後、「リトルヴォイス」、「怪人と探偵」…ミュージカルで観るたびにその魅力を知り、この舞台では、櫻子ちゃんの素朴な愛らしさがすずちゃんにピッタリ。たしかな歌声からは、すずちゃんの内面の強さが感じられました。


平野綾ちゃん(リン):着物姿が艶やかに色っぽく、幸薄そうなのに明るく、周作さんが惹かれたのも納得できる女性像ですね。1度目の観劇では周作とリンの関係がよくわからなかったので原作を読んだのだけど、原作は舞台以上にぼんやりとしか描かれず(原作は花見での再会シーンもなし)。でも、周作さんが9年間すずを想い続け、探し続けていたわけではないのはわかりました。夫婦になってから愛情が生まれたなら、それはそれで良かったと思うけれど、「見つけるのに9年かかった」とか言っておいて実は…って言うのは、ちょっと(観客として)騙された感ありました🙁


小林唯さん(水原哲):劇団四季で主演していた方とのことで、ソロナンバーないのがもったいなかったけれど、少ない出番ながら、すずちゃんの想い人としての存在感があります。終盤のナンバー「記憶の器」の最後の歌詞、"あなたを消してしまわぬように"で水原さんにスポットライトが当たる瞬間…語られなかったすずちゃんの想いが垣間見えたように感じました🥲


↓オリジナルドリンクはれもんみるくをいただきました🥰