東京芸術劇場プレイハウスにて、「インヘリタンス-継承」前後編を観劇しました。


この舞台、都民劇場新劇サークルの選択肢に入っていたので、あまり詳細を確認せず、福士誠治くん主演なんだ?久々に生の福士くん観たいかも?と、軽い気持ちで選んで、チケット届いてから気づきました…💦前後編で、合計6時間半の舞台だと😱


まあ、せっかくなら前後編観ないと…と、翌月の都民劇場で後編も入手したのですが、その日は仕事都合で観られず、当日券で千秋楽を観ることになりました。


一言で表すと現代ニューヨークのゲイ・コミュニティの話。

そうかー、今はゲイ・コミュニティって、こうなってるのかーと思いつつ、考えてみれば私のゲイやLGBTQの知識って全部、観劇から得たものだった。


「ラ・カージュ・オ・フォール」は1970年代フランスの明るいゲイカップル

「ザ・ビュー・アップステアズ」は1973年、アメリカ・ニューオーリンズの悲劇

「レント」と「ラディアント・ベイビー」は1990年前後、AIDSに苦しんだ時代のニューヨーク

「スリル・ミー」、「bare」は同性愛の少年たちの悲劇

「プリシラ」、「キンキーブーツ」、「ジェイミー」はドラァグクイーンの性自認の悩み


…と、こんなところかな?


私の知識は全然、足りないけれど、

「インヘリタンス」はゲイ・コミュニティも大きく変容していることを教えてくれました。


AIDSは、不治の病ではなく発症を抑えることも可能になっていて

ゲイの様々な権利も認められ、同性の結婚も可能、子どもを引き取って家族として育てることもできる。

アプリを通して出会うことができるので、パートナーを見つけるのも容易になり、出会いの場としてのコミュニティは縮小


「レント」と比べると、「インヘリタンス」の登場人物は成功者がメインで、会話も知的だったりするのだけど、ゲイの中にも政治的信条や貧富の差があり、それが生命に直結していたりする。


2016年の大統領選、ヒラリー・クリントンが当選して、自分たちの権利はさらに強化されると信じていた彼らがトランプ勝利で落胆する場面など、政治と生き方が直結しているのだな…と。


彼らの様々な物語が6時間半かけて、語られていきます。



相関図は↑の通り、やや複雑だけれど、福士くん演じるエリック中心に展開。


エリック(福士誠治くん)はトビー(田中俊介くん)と長年連れ添ったパートナーだったけれど、作家のトビーは自分の脚本舞台で主演したアダム(新原泰佑くん)に心を奪われて別離。エリックは友人ウォルター(篠井英介さん)の死後、その夫ヘンリー(山路和弘さん)と結婚、亡くなったウォルターの遺言で田舎の家(末期エイズ患者の看取りの家)を託される。

エリックから去ったトビーはアダム(新原泰介くん)に振られて、彼と瓜二つの男娼レオ(新原泰介くん二役)を買う。レオはヘンリーにも買われたことがある。

…と極力、シンプルにするとこういう感じ。


福士誠治くんエリックは、「スリル・ミー」彼とは真逆のフェミニンで優しい男性でかわいかった🥰篠井英介さんウォルターとの会話は女友達同士のように穏やかです。

山路和弘さんヘンリーは不動産王で、私の記憶が確かなら年2.5億ドル稼いでいると言った?他の登場人物(教師、医療従事者などのゲイ男性)は民主党支持者で、ヒラリー・クリントン大統領誕生を望んでいたのに対し、ヘンリーはトランプにも献金した共和党支持者。資本主義を信奉し、HIV治療が可能になったのは製薬会社が金を儲けようとしたから…という持論を主張していましたが、実際に1980年代から(「レント」、「ラディアント・べイビー」の時代)多くの仲間の死を目の当たりにしてきて、今、一番愛する相手とは身体の関係を持てない…など、辛い時代を生き抜いてきた世代の苦悩を感じました。

田中俊介さんのトビーは、かなり自分勝手で、見ていて腹立たしかったのですが、一番、悲劇的結末を迎えた彼が、最も傷を抱えていたのかもしれません。

そしてアダムとレオを演じた新原泰佑くんには驚いた。以前、「クラウディア」を観た時に凄い子がいる…と目を引かれ、生で観るのはその時以来だったのだけど、上流階級で育ったアダムと男娼レオ…どちらも他の男たちを狂わせる美少年だけど、キャラは真逆。その二役をただ演じるだけでなく、アダムが行き倒れたレオを助ける場面まであり!代役の後ろ姿を使うのでなく、抱えたストール(?)と声、演技だけであの場面を演じるなんて、若いのに凄すぎる。こんなハードな舞台に素晴らしいベテラン役者たちと共演し、もまれる経験をして、これからどんな役者になるのか、本当に将来が楽しみです。


↑ポスターと同じ写真だけどロビーの壁一面の大きさ!