K-BALLET TOKYO(旧K-BALLETカンパニー)の創立25周年記念公演「眠れる森の美女」に足を運びました。

この舞台、熊川哲也さん自らTBSやNHKの番組で宣伝後、開幕前に全公演完売と発表されていて期待の高さがうかがえました。


当日のキャストはこちら↑

「白鳥の湖」に続き、推しの山本雅也くんと日高世菜さんの日を選びました。


新制作として、ストーリーも変えて上演する(キャッチコピーは「オーロラ姫を死に導いたのは、王子だった」)と聞いていて、どうなるんだろう?と思っていましたが、予想以上に斬新でした。


第1幕1場
オーロラ姫誕生祝い場面…グレゴワール・ランシエさん王と山田蘭さん王妃は立っているだけでもビジュアル最高!近隣4つの王国のロイヤルファミリーが祝福に来たという設定で、4人の男の子(子ども)がいて、これが成長して後のオーロラ16歳の場面でローズアダージオを踊る4人の求婚者になるのだな?と思いました。でも、その中に(オーロラ姫と結婚する)デジレ王子も入っていたこと(つまり王子は同時代人)まではわからなかった(幕間にパンフレット見て知りました)💦
妖精も従来の6人ではなく、リラ+4人でそれぞれの国を守護する妖精とのこと。
この場面でバリエーション踊るのはリラの精だけで、他の妖精はバリエーションなく(代わりに妖精4人一緒の踊り、子ども王子たちの踊りなどあり)、テンポ早い展開。リラの精は成田紗弥さんで、品よく優しいけれど凛々しさもあり(バリエーションが、レッスンで踊ったことあるVer.より難度↑😱)。
悪役のカラボスは妖精ではなく近隣国の女王様(で誕生祝いに招ばれず怒り…)。王様とカラボスの絡みが多く、ディズニー実写「マレフィセント」みたいな元恋人設定?と想像したけれど、Kバレエ公式にはそういう記述なし。この日のカラボスは小林美奈さんで、衣装も踊りも魅力的。美奈さんは姫系の役よりこういう役の方が美しさが映えると思うなぁ。カラボス+狼vs妖精たちの戦いの踊りがかなり長く、ジャンプの連続、迫力あってカッコ良いです。その結果、カラボスは杖に封印され、従来版とかなり違う導入。

1幕2場
従来版に全くないオリジナルシーン。森で楽しく踊るオーロラ姫。花たちと蛙たちの群舞が美しく楽しい。従来、ラストの結婚祝いで踊るブルーバードとフロリナ王女、猫たち、赤ずきんもこの場に登場。ブルーバードの吉田周平さんは高い連続ジャンプで魅せ、フロリナ王女の岩井優花ちゃん(別日はオーロラで、ポスタービジュアルも彼女)は可憐で華があります。猫の栗原柊くんも期待の若手。文字通りこれがパ・ドゥ・シャだなーと思って見てました🤭山田夏生さん赤ずきんはカラボスの手下の悪役で(これを思いついた熊川さんの発想がすごい)、黒いずきんに赤いリボン、ゴスロリメイク?
この場でオーロラ姫とデジレ王子が出会って恋に落ちますが、日高世菜さんオーロラが本当〜に初々しく、かわいくてビックリ!お顔立ちは大人っぽい方なのに引きで見ると全身の表情が少女なんですねー。山本雅也くん王子は引きでも寄りでも凛々しい。狼から姫を助け、恋に落ち…このまま行けば幸せな2人なのに、ブラック赤ずきんに導かれ、カラボスの封印を解いてしまって呪いをかけられた王子が闇堕ちしたところで1幕終了です。

2幕1場
オーロラ姫の16歳誕生日、求婚者4人の中にいるデジレ王子は黒衣装で、表情もダーク、魔法にかけられてオーロラ姫を殺そうとしているのがスリリング。ローズアダージオなど、振りは一緒なのに設定違う(暗殺者混じってる)とまるで別物。1人ずつ手を取るオーロラ姫に、その王子は危険だから手をとってはダメよ〜!と叫びたくなります。結局、姫は王子によって殺され…と思ったけどリラの精の力で眠るだけにとどまったのか?ガラスの箱?の中で眠りに落ちます(コールドスリープっぽい感じ)。

2幕2場 
正気に戻った王子が自分は何ということをしたんだ!と後悔し、夢の中でオーロラと再会し、リラの精の助けを借りてカラボスを倒す。ここはほぼ、従来通り?だけど、さらにスピーディーだったような気もします。
オーロラが眠っているガラスの箱?を運んで来たのが森の友だち=蛙と花たちというのが、ファンタジーっぽく、森の中での目覚めの口づけはむしろ白雪姫っぽい?

3幕3場
ブルーバード、猫のパ・ド・ドゥが1幕で終わっているので短縮されて間延びしないのが良いですね。改心した(?)赤ずきんちゃんと狼の踊りはコミカルだけど、杉野慧くん狼はダイナミックで迫力あってピッタリ。宝石の踊りは3人ともゴージャスで、堀内將平くんにはプリンシパルの品格を感じました。
そしてオーロラ姫とデジレ王子のグラン・パ・ド・ドゥが最高のクライマックス。白&金の衣装(この場面、ほとんどの登場人物衣装が白&金だけど、どれもシルエット綺麗で本当にセンス良いと思いました)の2人が幸せそうで美しい。アダージオは、従来版でも、いくつかバージョンあるようだけど、この舞台の、王子がサポートするオーロラのピルエットからフィッシュ・ダイヴを3回繰り返す超絶技巧はロイヤル版と同じかな?リフトされた瞬間、上向きに反る世菜さんの上半身のしなやかさに目を見張りました。オーロラのバリエーションはスタンダードな振付で、世界のプリマたちと比べてひけを取らない美しい踊り。1幕のオーロラより大人っぽく、女性らしいラインの踊りになっているように見えました。

舞台全体の感想としては、見せ場が分散され、ストーリー性が増していると思います。従来版なら1幕で6人の妖精たちのバリエーションが続いたり、結婚式では物語に関係ないお祝いの踊りが続いたり、ストーリーを先に進めない踊りの場面が長い。ダンサー側にはソリストの出番が多くて良いかもしれないけれど、観る側(特にバレエになじみの少ない層)には少し間延びする気もしていました。それを、妖精のバリエーションをカットしたり、青い鳥や猫を物語に絡めて前半に見せ場を持ってきたりして、最初から最後まで、全てが見どころというバレエになっていたので、終始、クラシックバレエにはないくらいのワクワク、ドキドキ、ハラハラを感じ、見終わった後の感想は「綺麗だった」より、「面白かった〜」でした。

もう一つ、印象的だったのは王子の二面性。女性なら、「白鳥の湖」の主役にキャスティングされれば、白鳥と黒鳥という対照的な役を踊り、実力を発揮する機会があるけれど、男性ダンサーにはそういう作品がない(ある意味、アルブレヒトは二面性あるけど)。だから男性ダンサーが白と黒を踊る作品として、熊川哲也氏はこの"呪われた王子"を造形したのでは?雅也くんは品格ある正確な踊りに的確な感情表現で、白王子と黒王子を表現していました。
熊川さん自身が全盛期なら、ご自分で踊りたかった役だろうなー、似合っただろうなー、熊川さんの黒王子観たかったなー…と、その点は少し残念です(もちろん雅也くんは最高でしたが😉)。