カッキー(柿澤勇人くん)演じる原田雅之は、最初に集まりを呼びかけ、集団自殺を企てていると思いきや、突然、人格が変わって「自粛警察と戦う」と言い始める。最初は、パンデ(コロナ)に感染した友人が会社を辞めさせられ自殺したため、友人を救えなかった自責の念から・・・と思われていたけれど、ラスト、実は、彼自身がSNSに友人のことを書き込み、責めて追い詰めた自粛警察だったと告白する。
普通の青年の弱さ、優しさ、闇・・・を見せ、「デスノート」の月と似ているようで、全く異なる(普通の人間の中にある)闇と狂気を演じて、そのリアリティにさすがカッキーと思いました。
石井一孝さんは、ゲイであることを隠しながら妻も子もいる父親・橋本哲造。自分を偽るストレスからギャンブルにはまり、自殺して生命保険で借金を返さなければならないところまで追いつめられている。楽に、楽しく死ぬことを求める様子が傍からは滑稽にも見えるけれど、カズさんの不器用そうで熱く、ダイナミックな表現がその真剣さを際立たせていました。
南沢奈央さん演じる谷川先生は、生徒の自殺を止められなかったことに責任を感じているスクールカウンセラーで、新たな自殺を食い止めるために自殺志願者のふりをしてやってくる。最初から(生徒の死という)悲劇を背負っているはずだけど、その亡くなった生徒が常に側にいる(幽霊というよりは、先生の妄想に近い)ので、彼とのかけあいが寧ろコミカルに感じられるのは作劇の妙。
須藤連くん演じる平山明生は、その自殺した学生の幽霊?or先生の妄想?普通、こういう役って、途中までは正体がわからないように観客をミスリードするものだと思うけど、この舞台では、カッキーの最初のセリフ(この公園には他に2人の自殺志願者がいる)で、すぐに彼が生きてないことがわかってしまったのは良かったのか?多分この舞台の狙いは、そこにはなかったのでしょうね。彼が表していたのは谷川先生の闇で、最後に彼が見えなくなったことで先生の闇は晴れたのだと思います。