TSミュージカルファンデーションの「Diana」を観に行ってきました。


今月は少人数ミュージカルにご縁があってか、「ファンタスティックス」に続いて、今回は出演者5人のミュージカル。


でも、「ファンタスティックス」のように、いっぱい笑える話ではなく、つらい話。

観ている最中は極限まで追い詰められて、どこにも救いがないのではないかと思ったけれど、最後の最後に救いがありました。観客も本当につらい涙を流すけれど、その涙で心が浄化されたような気がします。


謝珠栄先生は、本当に熱く、エネルギッシュな方なんでしょうね。


新聞や本で読む悲惨な事件。誰もが読んだ瞬間は「酷い!」と思うけれど、10分後には夕食の献立を考えていたりする。

でも、謝先生は、その悲惨な事件の当事者たちを思いやり、何かを訴えずにいられず、その熱い想いで次々とオリジナルミュージカルを生み出していらっしゃるのではないでしょうか?


これまでにも戦争の傷跡や哀しい歴史などを題材に、謝先生ならではの視点で切り込んで素晴らしいオリジナル作品を送り出していましたが、今回は現在、一番話題になっている家族の事件が発端になっているだけに、さらに熱く、問いかけるものがありました。


子どもを虐待したり、置き去りにして餓死させた母親、親の死を弔わない家族・・・それらへの憤りがDianaの原動力だと思います。


Dianaの舞台が進むにつれて明らかになっていく主人公ルーナの出生の秘密。

生まれたことを、自分の存在を憎まずにいられないほどの絶望。

でも、彼女を愛した家族がいた。

生命は、生まれただけで貴いのだと、誰もが愛されるに値するのだと教えてくれました。


ただ、テーマが重いからといって暗いだけの舞台ではありません。

流れるように美しいメロディの歌、スタイリッシュなダンスなど、エンターテイメントとしても一級。

Diana(月の女神)の月の字を名前に持つ姿月あさとさん、湖月わたるさんの2人のヒロイン、進行役と2人をめぐる重要な人物たちを演じる今拓哉さん、平澤智さん、水谷あつしさんの男性3人。実力者揃いの出演者が、緊密な物語を一瞬のほころびもなく、終始緊張感を持って展開させます。


「運命」とは納得のいかないことを受け入れるための言葉


・・・という台詞が印象に残りました。

でも、謝先生は納得のいかないことを、そのまま受け入れずに想いを発信している。

世の中には、運命と戦っている人もたくさんいると思います。


全ての人へ、全ての生命への応援歌・・・そんな舞台でした。