僕には戻る場所があるから、ここじゃない何処かに行ける気がするし、ここじゃない場所でも僕でいれる気がするんだ。

 

 

 

 

 僕は一度ここを離れたことがあるし、ここじゃない所で暮らしていたこともあります。自分からここを出たし、ここじゃない所からここへは自分で来たわけではありません。けれど、僕はここでしか生きていく能力が多分ないんだろうとうすらぼんやりと理解してるんだと思います。だから、僕はここで生きていくと思うし、ここじゃない何処かへと行こうだなんて思わないようしているんだと思います。

 

 彼はそんなことを皮膚の下で感じながらこの場所で生きている。彼には守るべきものがないが、守ってくれたものがたくさんいるようだ。それらは分かちがたく彼をこの場所へと縛り付けている重しであり、彼が彼を見失わないように生きていくための優しい重りでもある。彼は幼い。それ故に大人たちよりも物事をそのままキャッチすることが出来る。そして、傷ついてしまうこともある。けれど、彼はそのまま生きている。ずっとこの場所で生きている。

 

 

 

 

「優しい村」

 

 

 今日はトランペットの音がする。誰かがピアノを弾き始める。ドラムをたたき始める。ギターを奏で始める。それらが調和する。誰もそれを邪魔しない。

 

 

  ここは少しばかりの困難や動揺がある世界ではあったが大方平静に時が流れ始めた世界だった。しかし、最近は何か様子がおかしい。

 

 

 

  彼はその世界でただ一人の彼であることは間違いなかった。だからこそ彼はそれらの重みを一心に背負う必要があったし、それらを支えるための心の足腰を鍛える必要があった。彼は探し物をしている。探し物をしていることは知っている。けれども何を探しているかは分からないし、探し物をしていることにも無自覚だ。彼は彼なりに幸せに生きていきたいと思っている。けれどそれは簡単なことではない。彼は今日も彼で居続ける。どんなにひどいことや嬉しいことがあっても彼は彼でいるだろう。