彼はヴィジュアルを表現する能力に長けていた。

 

 そこにないものを視覚化し、そこにある感情を視覚化し、そこにある臭いを視覚化し、そこにある気配を視覚化し、とにかくあらゆるものを視覚化する能力に長けていた。

 

 しかし、彼は自分の存在を視覚化することだけは出来なかった。

 

 そう。世界中の視覚化されたものは彼の制作物で我々も例外ではない。

 

 ついさっき私は彼に会ってきた。もうそろそろ引退するからこの世から視覚された僕の制作物は更新されなくなるので最後に視覚化してほしいものは何かと私は聞かれた。

 

 私は私の未来を視覚化してもらった。

 

 私の未来は明るい。

 

 もうそこに私は存在しない。

 

 つまり彼は無も視覚化できるということだ。

 

 彼の最後の制作物は無に決まったそうである。