お風呂上り髪をタオルで拭きながら自分の部屋へと階段を上っていると、部屋から携帯の着信音が鳴っているのを敏感に感じ取った。
のろのろと階段に運ぶ足を速め、ほんの数秒で部屋の中に飛び込むと、寝ている時でもとれるようにとベッドに置かれた携帯を掴み、送信者を見て落胆する。
(なんだリンちゃんか……)
内容は、わたしが最近元気がない事についてだった。
気にかけてくれてありがとう、という旨を書き込み、送信する。
嘆息すると、ベッドにごろんと寝転がり大の字で天井を見上げた。そこで、自分の首にかかっていたタオルがなくなっている事に気づく。
(階段で落としてきちゃった……)
拾いに行く気にはなれなかった。湿った髪もそのまんまで、わたしは先輩の事を考える。
最近連絡がこなくなったのだ。元々そんなに向こうからは連絡が来ることはなかったけれど、今では音信不通と言っていいほど。
そんな事もあり、わたしはメールが来るたびにドキドキしながら携帯を開けた。それが先輩のメールだった時の喜びは数倍マシになり、食事中でも携帯をテーブルの横に置いておくくらいとなっていた。
しかし、それはマナーにうるさい母の叱咤によってすぐさまやめさせられるはめになってしまったけれど。
ふと、枕元に置かれている先輩からプレゼントされたうさぎのぬいぐるみが目に入り、両手でつかむと、天井にかかげてみた。
先日、先輩にもらった人形だった。
わたしが人形好きだといつ知ったのだと疑問だったけれど、嬉しかったので特に気にとめはしなかった。
ぐるんと裏返してみると、背中にチャックがあることに気づく。
(なんだろう……?)
ジジジと音を立ててファスナーを開くと、入っていたのは、小さな紙切れ。何らかのサプライズか、それともこういう仕組みの人形だったのか。
どちらにせよ、間違っているとも知らずにわたしはその紙を広げた。