ナンバー 487 小生のブログの宣伝2 | 堀切光男のエッセイ畑

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主にエッセイ。


 

イワナと自然薯 「ツカモトのぬくもり物語」 時田富士男さんの語りで、2000 年10月

 

文化放送系列で放送されました。

 

上の写真は その時頂いた記念の今は亡き 時田富士夫さんの色紙


 

「川はようー、川はようー、おいらのう川はようー」

 

(注,親父の海のメロデイで) カーステレオから流れるカラオケテープに合わせて、

 

私はご機嫌の極みだった。

 

昨夜から林道の奥にテントをはって泊まり込み、早朝からの渓流釣りは

 

大満足の釣果だった。 尺越えイワナが二匹アイスボックスに入っている。

 

もうすぐ師走の声が聞こえ始める今日は,今年の竿納めと決めた釣行だった。

 

今年はずっとボウズの日が続いていたので、納竿のこの日に

 

有終の美を飾れた事が私を有頂天にさせていたのだ。

 

そんな気分が、ふと目についた露店の八百屋に寄ってみようかなという気に

 

させた。 秋の夕暮れはつるべ落としだ。

 

太陽がもう遠くのお山に沈みそうで、初老の親父さんが慌ただしく店じまいをしていた。

 

ふと見ると隅っこに(自然薯、一本八千円) と書かれた一山がある。

 

私も山で掘った事があるので、小枝にアケビのツルで結わえられたそれが、

 

半日がかりでいかに苦労して掘り出した物であるのかが解る。

 

良く見ると脇にもう一山在り、こちらには (一本 四千円) とだけ書いてある。

 

見た目には、どちらの山も全く同じだ。

 

値段の差が,どこにあるのか不思議で聞いてみた。

 

「親父さん、 こっちと あっちじゃあ鮮度が違うのかな?」

 

「いんやあ、採れた日はおんなじだあ」

 

「じゃあ、どうして値段が違うんだい? 見た所、全く同じに見えるけど?」

 

「まあ、いろいろ あるでな」

 

「それじゃあ解んないよ。味が違うんだろ?」

 

「いんやあ、おらは同じだと思うんじゃがね」

 

「じれったいなあ、もう。 じゃあ何で値段が違うんだよっ」

 

少し考え込んでいた親父さんは、私の目をジーと覗き込むとボソッと言った。

 

「お前さん、どうしても・・・・・知りたいかい?」

 

何やら大きな秘密に出くわしそうで、私はたじろぎながらも、うなずいた。

 

 

「じゃあ、ちょっとかたすのを手伝ってくれるか。 なあに、おらの後を

 

ついてくれば、教えるでな」

 

親父さんの軽トラについていくと裏山に入って行く。

 

親父さんは林の中に車を止めると、黙って指を指した。

 

見ると大きな古タイヤが六本重ねてある。 近づくと他にもタイヤの塔が

 

あちこちにある。 良く見るとそこから冬枯れた自然薯のツルが伸びていた。

 

「中には山から運んできた土が、そのまんまで入っているんじゃ。

 

つまり自然とまったく同じ条件で、栽培しとるんじゃよ」

 

「なるほど、これなら上から一つづつタイヤを外して行くだけで、ものの五分もあれば

 

掘りだせる」 「そう言う ことじゃな」

 

「うーん、よく考えたなあ。それで栽培物は安くしてあるのか。

 

だけど、親父さんも正直だなあ、 誰にも見分けはつかないだろうに」

 

「いんやあ、 人の手が加わったからには、ただの山芋で自然薯とは言えないじゃろ?」

 

「そうかっ、うーんエライッ。 親父さんあんたは本当に正直者だ。 俺は感動した。

 

ほんとーに、感動した。 親父さん、俺の気持ちだ。 イワナが二匹あるんだが、

 

一匹は親父さんが食べてくれっ」

 

私はイワナを差し出した。 すると親父さんも軽トラの荷台から 自然薯を

 

一本取り出して、

 

「本物の方じゃ。 お前さんが釣った 尺イワナとおらが掘り出した自然薯は、

 

多分同じぐらいの価値じゃろうて、なあ」

 

親父さんに貰った自然薯を横目に見ながら、私は又歌いながら車を走らせた。

 

「芋はようー、芋はあようー、親父さんのう、芋はあようー」

 

陽は とっくに沈み、 替わって 顔を出した まん丸い 月が まるで笑っている様に見えた。

 

 

 

つい最近テレビ放送を観ていたら 私の故郷、和歌山県での自然薯堀りを

 

紹介していました。

 

驚いた事に 小生のこの「イワナと自然薯」の記事と同じ様に栽培していたのです。

 

 

その方法とは下の写真のように 古タイヤを積み上げ中に山土を入れて

 

ムカゴを植えて自然薯を育てるというやりかたをしていたのです。

 

あの話は 小生の考えた創作だったはず・・・・

 

もしかしたら あのラジオ放送を聞いた誰かがマネをしたのかも・・・。

 

と、思ったりもしたのだが プラスチック製の雨どいに親芋を入れて

 

栽培するのはよく知られた栽培法、これから発展させて古タイヤに行きついたのかも知れない。

 

要するに誰でも考え付く栽培法だったというおそまつな 話です。

 

上 テレビ画面から撮った古タイヤの映像。