松井秀喜が10月30日、選手の前で訓示を述べた。


「すぐ勝つことを考えるなら、すごい選手をとればいい。でも、それでは楽しくありません。ジャイアンツの血が流れている君たちが、その文化をつくっていってください」


いやはや、立派な訓示である。


補強に頼らず、ジャイアンツの血が流れる生え抜きの選手たちで、強いチームになるための文化をつくろうという言葉だ。


しかし、待ってくれ。


「すごい選手をとればいい」とは、実に景気のいい話である。


世の中には、欲しくても獲れない球団があることなど、読売で育った松井くんには想像もつかないのかもしれない。


松井くんは、まさに金満全開の時代に、NPBで全盛期を過ごした男である。それを忘れてはいないか。


それにしても、「それでは楽しくありません」とは恐れ入った。


他球団の4番打者を次々と集め、豪華な打線を作り上げたのは、ほかでもない松井くんの師匠、長嶋茂雄ではなかったか。


あの時代の読売は、さぞかし退屈な野球をしていたのだろう。


松井くんがどう思おうが、連日超満員の東京ドームの観客は、オレンジのタオルを振り回し、大変に楽しんでおられました。


どうやら読売では、補強に頼らず選手を育てるという、ごく当たり前の話が、歴史に残る名訓示になるらしい。


なるほど、伝統ある球団は違う。


監督が代わっただけで、当たり前のことまで新鮮に聞こえるのだから。