(2017.02.07 日本経済新聞)
特許権侵害であるとして、差止請求や損害賠償請求の訴訟を提起された場合に、検討すべき事項としては、存続期間が有効かどうか、特許発明の技術的範囲に属するか否か、業としての実施かどうか、などがあります。
また、抗弁として、先使用権の抗弁や、特許発明に無効理由がある場合の無効の抗弁、特許権者が拒絶理由や無効理由を解消するため、特許請求の範囲を狭く限定したような場合に、侵害訴訟で特許発明を拡大解釈して権利範囲を広く主張することを許さない包袋禁反言の抗弁、などがあります。

マイクロソフトの膨大なパテントポートフォリオを提供することで、一定の牽制効果があるかもしれませんが、これと併せて、パテント・トロールが標的とする中小企業に、上記のような一般的な対抗策を教授することも必要だと思います。
特許権は、独占排他的側面ばかり注目されますが、特許法第1条にも掲げられている通り、その目的の半分は、産業の発達に寄与することです。実際、ずっと一企業に秘密にされていたかもしれない優れた発明が、特許制度があることにより、広く社会に公開されることになりますし、審査請求がされなかったり、毎年の特許料を納付しなかったり、存続期間が満了したりすれば、特許発明は誰でも実施できるようになるので、技術促進に寄与している面もあるといえるでしょう。
このような特許法の本来の目的から外れ、技術促進を阻害するように特許制度を悪用するトロールには、社会全体で対抗していくことが重要だと思います。