ひなぎく | AMO オフィシャルブログ 「AMOSCREAM」Powered by Ameba

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今日から渋谷イメージフォーラムでリバイバル上映される
1966年のチェコ映画の名作『ひなぎく』

初日の今日、観てきました。
DVDで何度も観ている作品ですが、まさかスクリーンで観られる日が来るなんて!




《以下からネタバレがあるのでこれから観る予定のある方は気をつけてくださいね》


マリエとマリエ
ふたりの女の子が織り成すその世界は、
断面的にみているとまるで意味不明。
男たちに食事を奢らせては騙し、
部屋の中にたくさんの紙を飾っては燃やし、
ハサミを振り回して
食べ物を踏みつけ、ケーキを投げつけ、
シャンデリアに乗って遊ぶ。
少女と呼ぶにはあまりに大人びた表情で、
女性と呼ぶにはあまりに無防備。

『私は人形だ』

『男は“愛してる”って言う以外に、どうして“卵!”って言えないの?』

『匂う。通り過ぎる人生の匂いが。』

『今あたし達がこうしてて、自分じゃない確信がある?』

『わたしは幸せ』と自分たちに言い聞かせたり

とても会話になっていない、意味深い台詞のやりとり。

切り貼りしたかのように次々と場面展開をしていき、つじつまなんてものは存在しないまま進んでいくストーリー。
頭がおかしくなりそうになるその感覚は、寝ているときに見ている夢の中の世界に似ています。

そのストーリー性とかけ離れた唐突な展開に、
初めて観たときは頭に『?』がたくさん浮かび
得体の知れない狂気を植え付けられたものでした。
映像の色ズレや光学処理などの60年代の映画ならではのサイケデリックな演出も、
この映画に隠された狂気の影を濃くします。


女の子たちがはちゃめちゃに騒ぎ倒す、一見かわいくて、おしゃれで、『ロリータムービー』『渋谷系おしゃれムービー』なんて言葉でまとめられがちですが、この作品の本当の姿はそんなものではないのです。


監督のヴェラ・ヒティロヴァは元ファッションデザイナー、モデル、という経歴を持つチェコの前衛映画監督。
66年にチェコ国内で公開された『ひなぎく』は、内容が共産主義国家から反国家的・反体制的と見なされ、7年間の発禁処分を受けてしまいます。
この時代のチェコは冷戦の時代で、ソビエトの圧力を強く受け、社会主義体制を敷かれていました。
『ひなぎく』で描かれる自由奔放な姉妹の姿には、その時代の人々の精神的欲求が映し出されているのです。
そのメッセージに気づいて初めてこの映画の本質に触れることができ、
解読できなかった台詞の数々の意味にもようやくたどり着ける。
男性社会から疎外される女性の哀れさ、孤独、世界に向けた鋭い視線。
会話としての台詞ではなく、鑑賞しているこちらに訴えかけている言葉たちなのだと。

実際に映画本編の中にも、第二次世界大戦の爆撃の映像や、銃を撃つ音がストーリーとは関係なしに混じります。
サブリミナル効果のように。


こんな反逆的な社会派ムービーでありながらも、アバンギャルドな映像技術や60sファッションという女の子の感覚を刺激するガーリーフィルターを通した前衛的な作品であるというところが、『ひなぎく』の魅力なのだと思います。


上映は、渋谷イメージフォーラムにて5月30日まで。
『ひなぎく』は現代のガーリーカルチャーにとってルーツと言える重要な作品です。
まだこの作品に触れたことのない方にはぜひ観てほしい。
この作品のファンの方にも、スクリーンで観ることができる喜びにぜひ浸ってほしいです。






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AMO