小田原の北条が降り天下は秀吉のもとですっかり平定されました。
何の伝統も持たない秀吉は、箔を付けようと北条時頼にあやかって諸国行脚に出ると
言い出したのです。側近が何と言って宥めればいいかと思案に暮れているとき、
秀吉のお伽衆の一人、曽呂利新左衛門が秀吉に語り始めました。
「近頃、清滝のあたりで諸国より集まった人々が賭博場に集まり賑わっています。
一人の山伏が張るたびに勝ち、負け知らずの独り勝ち、その他の衆は素寒貧に。
山伏が言うには、
『自分は妙術を心得ているのでばくちに大勝するのは当たり前、それどころか
術により愛宕山のように体を大きくすることも出来れば、煎り豆のように小さくも
できるのだ』と言うのです。
ばくちに負けた一人が『それなら煎り豆になって見せてくれ』と言うと山伏は
たちどころに一粒の煎り豆になりました、その途端男がそれを摘まんでカリカリと
食べてしまったそうです。」
これを聞いた秀吉は、話の真意を悟り
「うい奴よ、我は天下を持つと言えどもその位にあればこその威光であるのに、
ただの秀吉になればどんなことが起きるやもしれず、諸国行 脚は取り止めじゃ」
としみじみと言ったそうです。
