入院中、両親に対するちょっとした不信感もあった。
「大人ですし、本人の意思を尊重します」などと言っていたけれど。
治療を医者に丸投げしてるだけじゃない? って。
心配してくれていないわけがないし、入院中着替えを持ってきたり、本当にいろいろやってくれた。
でも、そこだけがやっぱり違う。
知るのが怖かったのかな。
でも、知らない方が怖くないかな、と私は思うのだけど。
抗生剤での治療をしていた頃、母に、手術の可能性があるということを説明をしました。
カテーテルもしていなかったので、まだ確定ではなかったんです。
生体弁、機械弁、小切開、正中切開。そのあたりの、ちょっとデリケートな話。
(このときは正中切開での手術を覚悟していました。いや、覚悟は出来ていなかったけど「そうなるんだろう……」と、心底思って落ち込んでいました)
母は、少し涙ぐみながら聞いていたと思う。
でも、それだけは事前に知っておいてもらう必要がありました。
いきなり聞いても頭に入らないだろうから。
実際、そういう話が出たのは手術直前の説明のときでした。
何も調べていなかったら、術前にいきなり機械弁か生体弁かを選ばなければいけなかったということです。(これは、ほかの方の体験談でもそうおっしゃっていました)
そんなの、いきなり聞いて冷静に判断できる親、いるんでしょうか。
子どもの体に人工物が入る。それだけでショックじゃないでしょうか。
私はそう思います。
だから、私は母に話したときにこう言いました。
「可能性は低い話かもしれないけど、想定はしておいてくれないと困る。だから病状をしっかり理解して、今後どういう処置をして、それがどういうリスクがあるのかということは知っておいて。そして術後は先生から説明があるだろうから、記録しておいて」
本当は、どのチューブが入っていて、いつ抜けたかとか、自分の意識のあいまいな部分をすべて記録したかったのだけど
術後数日して、小さなノートを見せてもらった。
弁破壊強、予定通り小切開形成術、など、先生からあったであろう話をメモしてくれていた。
母なりに先生の話を必死に書きとめてくれたのだろうなと思い、少し泣きそうになった。
なんだかんだ言って、感謝しかない。