入院日記とは別に、どうでもいい独り言を書く。

 
 昨日の夕暮れ。
 
 すこしだけ、刑務所みたいだな、と思った。
 
 ある本に「刑務所は病院に似ている」と書いてあったのが思い出される。主語が「刑務所」なのは、その本が獄中記だったからだ。病院が病人を治すところなら、刑務所は社会的病人を「治す」ところではないか、という些細な皮肉だと私は受け取った。
 
 もちろん病院は刑務所よりよほど自由で、その目的から言ってもまったく違う。
 
 けれど、それまで当たり前に居座っていた社会から切り離される感覚は、刑務所のそれに近いのではないか、と思ってしまった。
 
 獄中から病院との共通点を見いだした著者に、私は病院から獄中との共通点を感じ取った。ひたすら読書や創作などをして一日を過ごしている点、本を差し入れてもらう点など、まったく同じである。けれど、病院には検閲などない。
 
 社会から切り離されることで、自分に向き合う余裕が生まれるところも似ている。ある意味で、病気になったことで与えられた、貴重な時間である。人生の時間を失ったと考えるよりは、そう考えたい。
 
 だから、闘病記はもちろんのこと、獄中記に、意外にも共感させられるところは多い。考えれば当たり前かもしれないが、私には興味深い、面白い発見だった。