『狐』と『虫』。
新しい京極夏彦小説が読めるのは喜ばしい限りです。
2024年8月の読書メーター
読んだ本の数:11冊
読んだページ数:4056ページ
■玩具修理者
8月4日 著者:小林 泰三
■あつまれ!ふしぎ研究部
8月6日 著者:安部 真弘
催眠、マジック、オカルト。オカルトはともかく、催眠とマジックは別に不思議ではなかろうと思うのですが、まぁそんな珍妙なトピックに腐心する女子高生たちと、たまたま入部することになったラッキースケベな男子生徒による、愉快でちょいエロな日常譚です。もっとも「ふしぎ」と謳っていても、玄妙怪奇が跋扈しているわけでもなく、とにかく平和でとにかくユルい。やはりこの世に不思議なことなど何もないのです。各エピソードが短いので、テンポ良くサクッと読めるのもありがたい。そしてなかでも、風紀委員の人がなかなかいいキャラしています。
■狐花 葉不見冥府路行
8月6日 著者:京極 夏彦
ぞっとするほど美しい男。亡魂か幽霊か、はたまた狐狸妖怪か。歌舞伎舞台のための書下ろしという珍しい趣向ですが、内容は安定の京極クオリティであり、哀絶がひたすら胸に迫る一篇であったと思います。『了』に続き、「あの人」のご先祖様が今回もご活躍。そのご先祖が言葉で語る真実。言の葉によって立ち現れるは、予想だにしなかった真相。無愧者たちの旧悪には小胸が悪くなり、犠牲になった一族末裔の最期には哀号が去来したものでした。血と花と、射干玉の闇。ときに忌まわしく怖ろしく、あるいは美しく、赤と黒がどこまでも鮮烈な一篇でした。
■狂骨の夢
8月12日 著者:京極 夏彦
架空無稽な夢、背徳不敬な夢、前世と現世の夢。いくつもの狂想的な夢が綾成す、『百鬼夜行』シリーズ三番手。何度も読んでいるのでいいだけ覚えている訳ですが、それでも最後の反魂術はやはり鳥肌ものです。蘇える死霊、その首を斬り続ける女、集団自殺、髑髏を巡る狂騒。まるで無関係だと思われるそれぞれの事件が、ストーリーが進んでいくに従ってひとつに収束していくそのさまは、『魍魎』や『絡新婦』に通底するカタルシス。さらにその果ては、およそ予想だにしない真相であり、凄いところに連れて行かれた感があります。これぞまさに京極小説。
■病葉草紙
8月16日 著者:京極 夏彦
稀代の朴念仁にして本草学者・久瀬棠庵が、不可解な病状も長屋を騒がす怪事件も、「虫」の仕業と見立てて丸く収めてしまう。頓死、肥満、恋煩いに食中り。しかしそれぞれの事件の背後には、どこか『巷説百物語』にも通ずるような、人の浅ましい欲得と愛憎が逆巻いていたのです。派手な捕り物もなければ剣戟もないし、ましてや憑き物落としもなく、地味というなら激しく地味なのかもしれませんが、それでも面白く読ませるのは安定の京極クオリティと言えるでしょう。素ッ惚けているわけではないのだろうけれど、素ッ惚けたような長屋での応酬もツボ。
■柳生忍法帖 上
8月20日 著者:山田 風太郎
もともとはコミカライズの『Y十M』が好きだったのですが、言うまでもなく原作も面白い。父や夫を殺された女性たちが柳生十兵衛の指南を受け、不俱戴天の怨敵・会津藩主加藤明成と、その取り巻き・七本槍に復讐を仕掛けてゆく。この巻では四人を討ち果たしており、読んでいるとコミカライズで印象が強かった場面が次々に思い起こされたものでした。愛と怒りと悲しみの復讐譚。奇想とエロスが相和した稀代の忍法帖です。そして、下巻では闘いの場を会津に移し、真の首魁も参戦してくるわけで、さらなる争忍の乱が予想され、読むのが実に楽しみです。
■少女Aの殺人
8月22日 著者:今邑 彩
■「その後」のゲゲゲの女房
8月24日 著者:武良 布枝
大先生が旅立たれて来年で10年。お亡くなりになる直前直後、そして数年経った後のご様子を、ずっと連れ添った奥様が語られています。隣にいた人が突然いなくなることの喪失感は、文章として綴られている以上に大きいものであったようです。そんな大先生が遺された品物や言葉たち。それら一つひとつから、夫婦愛、家族愛、周囲やファンの人たちへの感謝に溢れたエピソードが窺えました。そして偉大な大先生と一緒に生きられた奥様の「あるがままに」という金科玉条。それはとても素敵なことであり、「無為自然」もいい言葉だなと思ったものでした。
■覘き小平次
8月26日 著者:京極 夏彦
■ゲゲゲの女房の「長寿力」
8月28日 著者:武良 布枝
■時鐘館の殺人
8月30日 著者:今邑 彩