品評会に出展した絵が消えたという怪事件。ミスリードが分かりやすいので、犯人は大体想像どおりなのですが、そのような所業に興じた理由と細工のほうは中々どうして意表外でした。詐欺や傷害のような大ごとではなくて、親子のコミュニケーション不足が招いた中事件だったと思います。

なお、冒頭には前巻からの続きである包帯男事件の解決編も収録されています。大人の社会に憧れる思春期あるあるというか、まあ微笑ましいというなら微笑ましいエピソード。

二篇とも怪異色はやや控えめであり、そこまで凶悪事件というわけでもなく、普通に青春譚寄りという印象でした。

 

 

 

 

[内容]

闇に潜む包帯男④

怖い絵①

怖い絵②

怖い絵③

怖い絵④

怖い絵⑤

 

 

[怖い絵]

品評会に提出した絵が無くなった。その絵の作者は九重香織という少女であり、栞奈の学校の美術部員・三宮の友人である。会場には人の出入りはあったものの、保管場所として使われている部屋から絵を持ち出した者は目撃されなかった。

提出日に九重と三宮とともに会場を訪れていた栞奈は、この事件の謎に挑むことになる。

 

 

「絵」と「恐怖」の関連というテーマの一篇。

特に、ここで恐怖を齎す絵の一例として「九相図」をここで出してきているわけですが、その辺はさすがのセンスと言わざるを得ないでしょう。なにせ「九相図」といえば、『巷説百物語』収録の名作「帷子辻」で京極小説ファンにはお馴染みであろう仏教絵。自分はそれを怖い絵だと思ったことはないですが、恐怖を感じる人もいるだろうとは思います。

そんな「怖い絵」に対して「写実的でないほど人は脳内で”より怖いもの”を補完して想像してしまう」という中禅寺のセリフがありましたが、それは感覚として肯うものがあります。ホラーゲームなんかもリアルな実写はそれはそれで怖いかもしれませんが、一方で昔のゲームのドット絵のほうがいろいろ想像してしまって怖かったりする、というケースもあるのではないでしょうか。

 

そして事件の真相については、ほとんど中禅寺が出張ることなく、栞奈一人で謎を解くと云うなかなか珍しい展開。シリーズも長くなり、心霊探偵としてだいぶ成長があったということでしょうか。

途中でいきなりやって来て騒ぐだけ騒いではさっさと帰ってゆく榎木津のインパクトも地味ツボ。何しに来たんだって感じの一幕。

 

総じて今回はそれほど大ごとではなく日常談の延長的なエピソード。包帯男事件における大人社会への憧憬と「怖い絵」篇における大人社会への猜疑、その両篇の対比が印象的であったと思います。

もっとも、面白いは面白いのですが、正直ネタ切れ感も少なからずなので、多少切迫感があったり怪異色が強かったりする事件も久しぶりに読んでみたいところです。

 

 

12巻 →

https://ameblo.jp/apirutemperance/entry-12940000203.html

 

 

読了:2026年6月12日