オジいサン。

 

 

 

2024年3月の読書メーター

読んだ本の数:15冊

読んだページ数:5469ページ

 

 

■虚談

3月1日 著者:京極 夏彦

 

 

■見える子ちゃん 2

3月3日 著者:泉 朝樹

あの世とこの世は地続き。「この世ならぬもの」が見えるという不憫なアビリティを備えた女の子の、珍妙愉快な怪異譚です。学校、往来、果ては試着室の中にまで、彼女の行くとこ漏れなく異形の群れが付いてくる。そして今回は前巻に加え、霊能者志望の級友も仲間入り。この溢れるかませ犬感たるや、これはこれで微笑ましくて憎めないものがあります。彼岸も此岸もグレードアップした第二巻であり、中でも印象強かったのは徘徊ばあちゃんの一篇。いい話だなと思ってちょっと感動したのですが、オチで持っていかれた感があります。きちくのしょぎょう。

 

 

見える子ちゃん

 

 

 

 

 

■覘き小平次

3月5日 著者:京極 夏彦

 

 

■ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 XI 誰が書いたかシャーロック

3月7日 著者:松岡 圭祐

『Ⅳ』におけるシンデレラの起源探求に近い印象があり、このリテラチュアな趣向が良かったです。今回の主役はコナン・ドイル著『バスカヴィル家の犬』。別人の手による原稿が発見され、どちらが先に書かれたものなのか、直木賞候補作家の杉浦李奈がその真偽を見定める。そしてその最中に小説さながら魔犬の襲撃に遭う、というストーリー。真贋鑑定、魔犬騒動、直木賞ノミネート、それぞれの事件が互いに縺れながら進んでいく展開は先の予想が付かず始終面白く読んでいました。そしてそこには浅ましく邪知深い、業突張り達の奸計が潜んでいたのです。

 

 

誰が書いたかシャーロック

 

 

 

 

 

■そして誰もいなくなる

3月9日 著者:今邑 彩

 

 

■PSYCHO-PASS LEGEND 執行官 狡噛慎也 理想郷の猟犬

3月11日 著者:深見 真

人体をバラバラにスライスしては、それらをひとつずつパッケージしてレイアウトする。『魍魎の匣』を彷彿とさせるような猟奇事件であり、『PSYCHO-PASS』らしい厄々しさが遺憾なく発揮されています。かつて犯人を挙げて解決したと思しき事件。それに酷似したバラバラ殺人が再び発生し、執行官に堕した狡嚙慎也が容疑者を追っていくという展開。過去から現在へ年月を経て、シェパードからハウンドへ立場を変えて、狡嚙が真相に迫っていく。インサニティ溢れるストーリーであり、『PSYCHO-PASS』は小説でもダークでクールです。

 

 

理想郷の猟犬

 

 

 

 

 

 

■人造救世主 ギニー・ピッグス

3月13日 著者:小林 泰三

 

 

■深泥丘奇談

3月15日 著者:綾辻 行人

 

 

■貴族探偵
3月17日 著者:摩耶 雄嵩

老舗旅館における痴情の縺れ、傷心の女性を襲った落石事故、花婿の座を狙う三つ巴の殺人など業の深い事件全五篇であり、どれもストーリーが面白くて終始楽しめました。そしてそれぞれの事件を探偵するは、タイトル通りやんごとなき出自の青年。されど、自分では捜査もしなければ推理もしない、結論も語らない。ただこれと使用人に命じるだけの他力本願悠々自適。まぁその人物造形は面白いと思いましたが、その割にそこまでその貴族特性が活かされている印象もなかったというか。このキャラ設定が遺憾なく発揮されたストーリーも読んでみたいところ。

 

 

貴族探偵

 

 

 

 

 

 

■七人の中にいる

3月19日 著者:今邑 彩

 

 

■幸せスイッチ
3月21日 著者:小林 泰三

タイトルに含まれているとおり、「幸せ」について示唆的な話が多かった気がします。メリーさんにストーキングされる『怨霊』や、絶望に沈んだ少女が出会った『幸せスイッチ』など奇才と奇想の全六篇であり、どこを切り取っても安定の小林泰三クオリティが味わえました。インパクトが強かったのは『どっちが大事』と『診断』。ひたすら不条理な応酬が続くのですが、その果てがまた厄いことこの上ない。行き着く先は破滅か幸福か。すべてを知ることが幸せか、あるいは知らないほうが幸せか。人間を止めてしまえば「幸せ」になれる、魔障済々な全六篇。

 

 

幸せスイッチ

 

 

 

 

 

 

■深泥丘奇談・続

3月23日 著者:綾辻 行人

 

 

■オジいサン

3月25日 著者:京極 夏彦

いまだかつてこれ程何も起こらない小説があったでしょうか。大仰な展開はないし特に盛り上がりもない。慎ましい独居老人の日常が淡々と綴られているのですが、これがまあ面白くて仕様がない。目玉焼きを作るだの回覧板を回すだの、ありきたりな日常のいち場面を小説として成立させ尚且つ面白く読ませるその技術とセンスたるや、そんじょそこらの尻の青い小説家に真似できる代物ではないのです。まあ真似できたとしたって誰も真似しないだろうって気もしますが、いずれにせよ『京極堂』や『巷説百物語』とは別方向で京極小説の絶巓と言えるでしょう。

 

 

オジいサン

 

 

 

 

 

 

■見晴らしのいい密室

3月29日 著者:小林 泰三

 

 

■夢をかなえるゾウ0(ゼロ) ガネーシャと夢を食べるバク

3月31日 著者:水野 敬也

小憎らしいアホ面と世界に誇る胴回りとどうしようもない駄洒落をもって人々の顰蹙を買う稀代の珍獣もとい神様が、パワハラに苦しむ青年を救い「本物の夢」を見つけるための指南を施す。その二十の教えは、すこぶる得心したりあるいは耳が痛かったり、多くの人に刺さるものがあると思います。「自分を好きになる」とか「好きなものを見つける」とか、何を日和ったことを、と思わないでもなかったですが、それぞれの「課題」とストーリーを通して語られるその真意は中々どうして瞠目。笑いと涙と含蓄に富んでおり、一篇の小説としても面白く読めます。

 

 

ガネーシャと夢を食べるバク