再会の猟犬。行方不明になった執行官がテロ活動に関与していると疑われ、監視官が単身東南アジアへと捜査に向かう。
小説で楽しむ『PSYCHO-PASS』。テキストはライトな感が否めなくアニメのあの洗練された雰囲気も感じられなかったのが正直なところですが、ストーリー自体は安定して面白いしレギュラーメンバーの描写もいつもの人たち感があって実家のような安心感でした。まあ小説で『PSYCHO-PASS』を楽しむのも一興というところでしょうか。いずれにせよ、やっぱりクールで格好いいですね、『PSYCHO-PASS』は。映画を観たくなるは必定。
[梗概]
東南アジア連合(通称 SEAUn)から日本への密入国者グループ。常守朱(つねもり あかね)たち公安局刑事課一係は、その悪棍たちの鎮圧に成功する。しかし取り調べの段に及び、事態は思いも寄らない展開を見せる。密入国者たちはSEAUnにおいて反政府運動に従事していたテロリストであり、そして彼らの影には、かつて常守たちの前から姿を消した執行官・狡噛慎也の存在が窺えるのであった。常守は狡噛を逮捕するため、単身SEAUnへと赴く。
よくも悪くもノベライズ特有の薄さはありますが、総じて読みやすくはありますし、ストーリー自体は安定の『PSYCHO-PASS』です。そのうえで霜月、六合塚、雛河、禾生局長。いつものメンツはいつものあの感じ。誰のセリフっていう説明が具体的に書いていなくても、言い回しで誰だか分かるようになっているので、このシリーズはセリフ回しも特徴的であったんだなって妙に感心しました。そして宜野座、常守、狡噛。もっとも、アニメでは描かれないそれぞれの懊悩や葛藤が深掘りされるのかと想像していましたが、その辺はそこまでではありませんでした。陰鬱とした内面の描写より、全体的なストーリーのドライブ感を重視したのかなって印象がありました。
その果ては『PSYCHO-PASS』らしく、日本を統べる「シビュラシステム」の底知れなさが窺える顛末。そこは実に期待どおりと言えるでしょう。
映画は未見なのですが、たぶんこれは映画で観たほうが格好いいんだろうなと思って読んでいました。ストーリーとしてのテンポ感もアニメのそれとは結構違うのかなっていう印象。いずれにせよ自分もそうですが、映画未見であれば確実に映画のほうを観たくなります。そんなノベライズ。
『PSYCHO-PASS』の小説としては、『名前のない怪物』と『ASYLUM』の「1」「2」を読んだことがありますが、このノベライズはどちらかと云えば前者に近いテイストだったと思います。
『ASYLUM』のほうは難しい言い回しや描写が妙に多く、あまり読みやすいとは言えなかったのですが、こちらはあくまでノベライズということで持って回った言い方も少なく、ライトである分読みやすくはあるでしょう。あとは、よくも悪くも展開が早いので、小説を読み慣れていない人であれば、そうゆう意味でも入りやすくはなっていると言えます。
稀代のSFサスペンス『PSYCHO-PASS』。アニメ、映画に加え、ノベライズもまたひとつの楽しみ方ではないでしょうか。
読了:2024年2月14日