育まれた友情が、たやすく踏み躙られる。

友人の死。その非日常的イベントによって齎される狼狽と嘆き、そして傷跡は、小説よりも悲劇的に表現されている印象でした。

京極版近未来サスペンス、哀号のVol.3。

 

 

 

 

[内容]

log13 : 穿つ隔意

log14 : 矢部裕子Ⅲ

log15 : 逢魔

log16 : 命

log17 : 空蝉

log18 : 凍える爪先

 

 

[前回までのあらすじ]

「端末」と呼ばれる情報機器により、あらゆる情報が管理されている社会。そのディストピアにおいて、猟奇的な連続殺人事件が発生していた。犯人は杳として知れず、14歳の少女・牧野葉月は、友人である歩未や美緒とともにこの事件に巻き込まれてゆく。また、葉月の通うセンターのカウンセラー・不破静枝は、超法規的措置という大義名分のもと不本意な捜査協力を強いられていた。

そんな中で警察は、管理の檻の外に独自のコミュニティを持つ「未登録住民」に目を付け、特に15歳の少女・麗猫(レイ ミャオ)を殺人犯としてマークしていた。しかし、それは明らかに仕組まれた冤罪なのであった。

 

 

今回のはじまりは、警察の「未登録住民」摘発に対し「登録住民」の少女たちと「未登録住民」コミュニティが共闘するシーン。それはどこか、未登録住民がよりフォーカスされた小説『2』を思い起こさせる展開でした。なお、「未登録住民」コミュニティに関しては、主要キャラの麗猫以外はすべてコミカライズのオリジナルであり、それがまた新鮮。

そして、その危機的状況を経て、絆や愛情といった人の繋がりが稀薄な世界に生きる少女たちの間には、濃やかな友情が生まれていたようでした。

しかし、友情・記憶・思い出、それらが積み重なっていくたび、それを失う痛みもまた耐え難いものになっていくのです。哀れ無辜の少女は、人喰らう鬼の餌食となるのでした。

この辺は小説においては割とあっさり読んでいた記憶がありますが、ここでは少女たちの哀絶と慟哭が、ひたすら胸に迫るように演出されています。そういう意味で、この巻はコミカライズとしてシリーズ中一番そして小説よりもトラジックであったと思います。

そして少女たちとはねっ返りの不良刑事は、黒幕の正体に気づいていくのですが、そこに新たな鬼の魔手が忍び寄って来るのでした。

 

 

冒頭の「未登録住民」のコミュニティであったり、死んだと思った者が生きていたり、これまでの巻同様コミカライズ独自のアレンジが大いに加えられており、それらがまたコミカライズとして奏功していると思います。

物語の折り返しを過ぎて、もっとも深い痛みに至ったVol.3。そして次巻は、クライマックスが近づいていることを予感させるVol.4です。

 

 

読了:2017年11月10日