悪辣な所業を繰り返したその挙げ句、級友を死に追いやっておきながら、事が露見しないのをいいことに虚偽の申告を並べて己が悪事を糊塗し、あまつさえ死人に口なし、とばかりに遺族と己の腰巾着を亡き者にしようとする、歪みに歪んだその性根、このまま捨ておいちゃあ死んだ女学生が浮かばれぬ。

ってな事を思ったのは嘘ではありませんが、それでも、この小娘の己の非を認めたくなくて他人の所為にしてしまう悪癖は、白状すれば、なにか分かるような気もします。

 

飛び降り自殺をしたと思しき女子高生。

なぜ娘は自殺したのかと泣き暮れる父親と、

自分たちの所為で彼女は死んでしまったのではと危惧し保身に走る同級生。

ふたりは邂逅し、そして死んだ娘が遺した日記が見つかるが、そこにはイジメの事実を示唆する内容が綴られていた。父親は復讐を誓い、同級生は事実の隠蔽を決心する。

的なお話でした。

天網恢恢と云うか、一介の高校生が保身のために弄した小細工など見抜かれてしかりとは思うので、最後のほうでこうゆう展開になるだろうなぁとはある程度の想像がつきますが、そこに到るまで始終痛みを孕んだ展開だったと思います。

 

この御本のなかでも描かれていますが、中学高校ではクラスの中で勝手にグループが作られ、休み時間も教室の移動も昼食も厠もだいたい何でも群れて行動していたりするものだとは思います。たしかに身に覚えがあります。まあ実際のところ、別に一人でいたっていいわけで人の世なんかどこ行ったってあまねく孤独の寄せ集めだとは思いますし、むしろ何で複数人で徒党を組んで便所に行く必要があるんだ、ってツッコミたくなりますが、それは今だからそう思うわけであって、当事者にしてみればあの狭い教室の中でハブられたり孤立したりするのはまあ厭だよなとは思います。

死んだお嬢さんの日記は生々しいですし、ここから斟酌される、イジメに遭うような子どもだと親や周りに思われたくない、という気持ちもこれまた胸に落ちてくるものがありました。イジメられた方が口を噤まなきゃいけないなんて読んでいて理不尽で不憫きわまりないものを覚えます。

 

[目次]

プロローグ

第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

エピローグ

 

 

高校生のお話というのは久しぶりに読みました。読んでいるこっちは疾うに高校生ではなくなっているわけですが、読んでいるとあまり思い出したくない当時の忌まわしい記憶が喚起され、ところどころ業深いものを覚えたものです。それでもお話自体は面白くて、次へ次へと読み進められ、気持ちいいドライブ感でした。昨今の女学生の生態など大して興味は無いのですが、それでも読めばなかなか思うところが出てくるもので、たまにこうゆうスクールカースト的なお話は手に取ってみてもいいかなと思ったものでした。

  

読了:201812 16