一体彼の何を見てきたのだろう?
やっと彼の本当の姿が見えてきた気がする。
彼と出会ったのは退屈なクラブイベントだった。
初めて逢った瞬間からなんとなく好きな雰囲気で。
2人でずっと話してた。
年下の彼はまだあの頃20代で一生懸命背伸びしていたように思えた。
あの頃のアタシには彼の気持ちが全く読めず
一度グッと距離が縮まったものの
直後に彼はスッと距離を置いた気がして諦めたアタシがいた
けれど半年に一度はふと思い立ったように連絡がきて
そして気が済んだかのようにまた途絶え逢う事もなかった
たまに共通のバーで顔を合わせたりしても「よ!」と挨拶を交わすだけで
特にそれ以上でもそれ以下でもなかった
でもずっと心に残り続けて終わらずにいたようにも思う
昨年また気まぐれに連絡が来た
しかし今回は色々な偶然が重なり久しぶりに逢う事になった
彼との空間はとても不思議で
この世の中で本当にアタシ達だけしか存在していないような感覚を感じた
錯覚でも感じるかのように恋人同士のような時間を過ごす
しかし彼には複雑な二つの顔が見えて
先程まですぐそばにいた彼が次の瞬間にとても遠く感じた
数ヶ月そんな時間が続いた
アタシは当時自分が傷つくことを怖がっていつも彼を疑っていた
彼の行動一つ一つに疑念を抱き
そうしては「もう逢わない理由」を探した
自分の事しか考えてなかったし、見てなかった
ある日疲れたアタシは彼との別れを決めた
けどそもそも始めてもいないから終わりもしなかった
半年後彼からまたメールがきた
逢うべきではない・・・そう思って交わしていたが
結局アタシは彼に逢いたくなってメールを送った
「今から逢おうよ」
「それは無理だよ」
「なんとかならないの?」
「こんな嵐じゃ無理だよ」
「本当に無理?例えばなんか理由つけて」
「無理だよそれは・・・また改めて逢おうよ」
「・・・今日逢えないならもう二度と逢わない」
胸に痛みが走った
この時初めて気づいた想いがあった
「あはは。冗談冗談。ちょっと困らせたかったんだ。俺って性格悪いなww」
どちらの言葉も初めて彼が見せる感情に思えた
胸がキュッと締め付けられて寂しそうな子供の姿が見えた気がした
それからまたアタシ達の関係は始まった
再会した彼はまた時折切ない子供の顔を見せる
いや、彼は至ってそんなつもりはないのかもしれない
一生懸命に以前よりずっと自分を大きく見せようとしている
けどアタシには心に痛みが走る
そんな表向きからは想像もつかないようなエネルギー
だからしばらくはまた理解できずにいた
理解できないから彼のその雰囲気にのまれて自分を見失いかけた
でもアタシは今回覚悟を決めた
関わるからには本気で覚悟を決めよう
それができないなら二度と逢わないことだ
アタシはどうにも彼が好きだった
まだ彼とするべきことがあるように思えた
だから終われない
そう思った瞬間
いかに自分が今まで彼を正しく見られてなかったか
彼を理解しようとしてなかったか
それがすごくよくわかった
そんな風に視点を変えたら全く違う顔の彼が見えてきた
愛しくアタシを抱き寄せ、おでこに優しくキスをしたり
切なげに力いっぱい抱きついたり
優しくゆっくりと頭をなでたり
しかしかと思うとアタシの感情を逆なでるような発言をして煽ったり
わざと揚げ足をとったり、屁理屈を言ってきたりした
すごく冷たく接したり、意地悪を言ったりもした
アタシは混乱の中でも冷静に戻るように心がけた
ある日久々に逢っていた時の事
ふざけながらも言い合いになる様子を見て彼は楽しそうに笑い
「あ~楽しいなぁ☆」と本当に嬉しそうに言った
しかしアタシは半ば本気で頭に来ていたのでちょっと理解に苦しんだ
また甘い時間が流れ愛しそうに彼が私にキスをして
さらにいつもとはちょっと違う彼がそこにいた
明らかに少し心を開いた彼
しかしその後アタシ達はとんでもない言い争いを始めた
今思うと理由が定かではないので
本当に些細なことだったのかもしれない
でもアタシは滅多に怒りを露にすることもないのだが
激しく怒り、彼を罵るような発言を繰り返した
明らかに自分が感情的になっているのがわかった
大声をあげ感情のままに言葉を吐いた
そんな自分にとても戸惑った
すると彼も今まで見たことないような様子で感情的に話し始めた
大声で叫び次々と言葉を吐いた
それはアタシを罵る言葉ではなく
まるで自分の心の叫びと言わんばかりの言葉だった
胸が痛くて何も話せなくなった
想いがグッとこみ上げて悲しみや切なさや苦しみ、不安も感じた
後から分かったことなのだが
おそらくそれは全て彼の感情、心の痛みだったのではないかと
しまい込んでいた彼の感情が一気に吹き出てアタシにぶつけられたように思えた
4年目にしてやっと気づいた
彼はずっとアタシに助けを求めていたんじゃないかと
自分ではどうにもできないこの想いを
どこかでアタシなら何かヒントを見つけられるんじゃないかと思ったのではないか
しかしアタシに対して踏み込む事への躊躇の中でずっとゆれていたのかもしれない
ある時彼が言った
「アナタの方がずっと意地悪かもね」
その言葉がずっと引っかかっていた
彼の世界から見た時
アタシの方がよっぽど意地悪で理解不能で信じたくても信じられない存在だったのかもしれない
アタシが彼にずっと思ってきたこと
彼も同じようにずっとアタシに思ってきたのかもしれない
そう思ったらアタシは彼の手を握り抱きしめたくなった
一度だってしたことはなかった
振りほどかれるような気がして
一度だってアタシから彼に触れることはなかった
けど本当は彼は触れてほしかったのかもしれない
手を握ってほしかったのかもしれない
抱きしめてほしかったのかもしれない
4年目のスタート。