デート当日。


いつも相手の出方を待ってた。

今回は自分から誘ってみた。


相変わらず直前までわからないなんて言いながら

当日何の問題なく午後くらいからメールが頻繁にきた



ちょっとグズグズと気のないふりをしてきたり

意味の分からないイチャモンをつけてきたり


挙句には

「今日は逢うのやめるよ」


「どうして?」


「説明する義務ある?」



時々こんな会話に発展する

そのたびにアタシは胸を痛ませて涙を流してしまう

でも流されない。

そう思って極力冷静に思考をめぐらせる


「冗談だよ。リラックスリラックス」


なんだか想いを試されてるみたい。

本人は表面的にはその気はないのだろうが

屈折しすぎている


けど何をどう話しても結局アタシの問題になって

でもある部分ではアタシ自身も相手のせいにしているところがある

相手は鏡。

そんな風に思ってみたけどなんだかやっぱり辛すぎた。


遅いと思うよってわりに結構早く仕事を終えてるとこを見るとそれなりに考えてくれてるのかなとか

結局車で迎えに来てくれたり

量が多すぎたご飯を頑張って半分以上食べてくれたり

思い起こせば色々な彼なりの思いは確かにあった



・・・けど


疲れちゃったんだよね



上手く言えないけど・・・疲れちゃった

そして寂しかった


気を利かして早く家に送り届けてくれたけど

アタシには彼の気持ちがイマイチ分からなかった。

彼にとってアタシってなんなんだろう。


家に帰る気にはなれなくて1人でお茶してたら

なんだか泣きたくなって泣いちゃった


脱力感だけが残ってまるでスイッチがオフになったような感じだった


彼に逢いたいとかコンタクトを取りたいという気持ちがどこかに消えた

やっぱりこのまま終わってしまうのかな
























ふと自分を振り返った時出逢った頃の自分で彼を見ている事に気づいた

今の私は違う。

もちろん今の彼も。


それぞれ時間が経過してそして今再び出逢ったのだから

必ず前とは違う私達の時間の意味がある


そう思ってふと彼の心の奥を感じる



メールが来た


「芸能人なんだけど。見ると君を思い出しちゃう人がいるんだけど名前がわからない」



思い出しちゃう・・・

ここに彼の心の声を感じた

きっと多分形にならない思いがある

きっと多分気づいてないこうなる意味がある


そう思い始めたらどんどん時が巻き戻されて

でもあの時築けなかった人間同士の絆みたいのが今なら作り直せる気がした


本当に縁がある人とは

時間が経ってからもきっとやるべき二人が築くものを取り組まなくちゃいけないのだと思う



二人にとってまだ見えないけど

まだ築ける関係が他にあるんだと思った


二人成長した今だからこそかもしれないけど



逢う約束をした


どんな時間になるだろう


彼のもしかしたら本当の部分が見え始めた時から

痛いほど彼の心の叫びを感じた

多分本人自身が自覚をし始めたのかもしれない

心の中で彼を抱きしめる。そして愛を送る。


ある日彼のお父さんの存在に気づいた。

これは一つ父と子の問題があるのではないかと。


父は死して初めて気づいたのだと思う。

息子に溢れんばかりの愛情があったけれど

不器用でそれを真っ直ぐに伝えることができていなかったと。

それどころか厳しいことばかりを言ってきた。

それは息子にしっかりしてほしいからゆえの思いだったが

むしろ自分の行動が息子を苦しませ、歪ませてしまった。

自分の責任だ。息子を助けたい。


その思いは本当に強く必死なものだった。

その姿は本当に彼と似ている。

そんなところから見ても彼は本当にお父さんを好きで尊敬していたのだと思う。


しかし彼はそんな好きなお父さんにずっと認めてほしかったのだと思う。

お父さんを亡くし余計にその想いの行き所がなくなってしまったのかもしれない。



とにかくお父さんをなだめ、そして彼に対して自分が本気で取り組むことを約束した。

自分にとってもこれは中途半端に関わる事ではない事はよくわかった。

本気で向き合う事を決めなければ彼の本当の心は見えない。

そういう意味でも自分自身にも約束をした。


少し気配が軽くなり

急に彼にメールをしてあげたくなった。

彼もそれを望んでいるように思えた。


「元気?今日はとてもいいお天気だよ。お仕事頑張ってね」

空の写真と一緒にメールをした。


すぐに返事が来た。

「最高の天気だな☆」


たった一言。何気ない言葉。

でもこの言葉から出る雰囲気が明らかに穏やかな空気を感じさせた。

いつもどこか張り詰めた、そして少し斜に構えたそんな彼はここ数日居なくて

少し気の抜けた炭酸みたいに感じた。

炭酸が苦手な私には程よい抜け具合。

シュンと一回り小さくでも真っ直ぐになった感じ。

私がやっぱり感じるのはそこに小さな男の子がちょこんと座ってる様子。

不安げにでもピュアに真っ直ぐに私を見つめる。


早く抱きしめてあげたい。


相手の気持ちに不安になって伺うような姿勢でいた時は何も分からなかった。

けどちゃんと自分をしっかり持って自分の足で立ち耳を傾けた時

ちゃんと彼の本当の声が聞こえる。

ちゃんと彼の心を感じられる。

気まぐれとはいえ、いつメールがほしいと感じてるのか

今は必要ないとかちゃんとわかってくる。


早く彼と逢いたい。




少し恋愛に疲れていた時だった

すごく軽い人だなって思って

でもヒネクレてたアタシは別に男なんてみんな同じだし。。なんて思いながら会話をしてた


けど毎日毎日彼とのやり取りが続いていくうちに心がだんだん惹かれていくのが分かった

信じたい・・・けど信じても結局は裏切られるに違いない


最初は軽くみえた彼も怯える私に一つ一つ自分の心を証明してくれて

いつの間にかとてもピュアな想いが二人を包み始めた


毎日寝る間も惜しんでメールをした

これまでの時間を埋めていくように心をギュッと近づけていった


少し遠い場所に住んでいた彼だったが

私の住む町を見たいと逢える訳でもないのに私の住む街へ来てくれた事もあった


本当に純粋にそう思ってしてくれた事が伝わってきたので

何を言われるよりすごく嬉しかった


頻繁に逢える二人ではなかったので

代わりによく連絡をとりあった


彼が大好きだった

彼と逢える時は緊張して顔が見れなかった

上手に話すこともできないくらい

好きだったんだよね


そしてやっと心と体が結ばれた日

その日を最後に彼とあまり連絡が取れなくなった

確かにその日色々と電話でもめていて

帰り際も話もできないくらい上の空で

ぽつりぽつりとくるメールの内容からは

どうやら仕事で大きなミスをしてしまったのらしいが



私には何が起きたのか全くわからずただ混乱するばかりだった

心の中では「ほら、やっぱりね。心を開いた途端どうでもよくなるんだよ」とリピートする


とても苦しかった

連絡が取れない

今まであんなに話していたのに



どうしようもなく気持ちを切り替えようとすると突然メールが来る

そしてまた途絶える


そんなやり取りが続いた


でも正直あの頃の事はあまり覚えてなかった

あまりにも無防備な状態に突然の出来事で

その傷が痛すぎて記憶にない


それから1年くらいがたった頃かな

またメールが来るようになった

けれど私の中ではもう二度目の選択肢はないと思った

一度連絡が取れなくなるような対応をする人は

必ずまた同じ事を繰り返す

だからもう恋人として信頼できる人ではないと結論付けていた


また彼の連絡してくるタイミングも本当に間が悪く

決まって新しい恋愛が始まっていたり彼氏ができていたり

フリーの時があっても結局はクチでいうほど実行動に伴わないので

その程度なのね・・・とやはり見切りをつけざる得なかった



そんなおいかけっこのようなやり取りが続き

決定的に私がお付き合いをする人が現れ

ついに彼の連絡は途絶えた

さすがに彼も諦めた様子だった



そしてまた1年がたった日

連絡がきた

やっと彼も仕事の一件も今では笑い話になるくらいまでに状況は改善し

心にも余裕が出てきたのかもしれない


久々の彼のメールはとても懐かしかった

今なら色々あの頃の話ができる・・・お互いそんな気持ちだった

懐かしげにあの頃の話をした


「あの頃・・・アタシの事好きだった?」

「好きだったよ。本当にごめん。タイミングが悪すぎた。本当に一番辛い時期だった」

「あの頃そこまでそれをわかってあげられなくてごめんね。そういうタイミングだったんだね」

「今でも満月を見ると思い出すんだ。。。無干渉な俺とオマエの最後の時をさ」


私は昔から月が好きで月にあこがれてた

月を見て私を思い出してくれていた事がすごく嬉しかった


「アタシ大好きだったんだ。本当にすっごく大好きだったんだよ。

この気持ち突然途絶えさえなくちゃいけなくて行き所なかったから今言おう。大好きだったんだよ」


「うん、俺もだよ。」


そうしてアタシ達は新しい再スタートを互いに望み歩み始めた



しかし。。。


まだ今のアタシ達はその時期が来ていなかったのか

未だタイミングが合わずのままだった


アタシは本当は彼は私の事必要としてないのではないか、居ても居なくてもどっちでもいいのではないか

彼にとってのアタシの存在はそんなもんなのではないか

そんな風に過去をトラウマに思い続け解決できずにいた


彼はいざ本音をぶつけられると思っている事が言えなくなるという状態にあった

思いや考えは色々あれど

それを伝えるという事が彼には難しいらしい


合わないタイミングはそれ自体に意味があり

二人に与えられた課題をどちらか一方でも超える覚悟ができていない場合

どこまでいっても平行線をたどり続ける運命にあるのかもしれない


ともなると覚悟ができた方が終止符を打たざる得ない

それも愛で思いやりなのかもしれない





一体彼の何を見てきたのだろう?

やっと彼の本当の姿が見えてきた気がする。


彼と出会ったのは退屈なクラブイベントだった。

初めて逢った瞬間からなんとなく好きな雰囲気で。

2人でずっと話してた。

年下の彼はまだあの頃20代で一生懸命背伸びしていたように思えた。


あの頃のアタシには彼の気持ちが全く読めず

一度グッと距離が縮まったものの

直後に彼はスッと距離を置いた気がして諦めたアタシがいた


けれど半年に一度はふと思い立ったように連絡がきて

そして気が済んだかのようにまた途絶え逢う事もなかった

たまに共通のバーで顔を合わせたりしても「よ!」と挨拶を交わすだけで

特にそれ以上でもそれ以下でもなかった


でもずっと心に残り続けて終わらずにいたようにも思う



昨年また気まぐれに連絡が来た

しかし今回は色々な偶然が重なり久しぶりに逢う事になった

彼との空間はとても不思議で

この世の中で本当にアタシ達だけしか存在していないような感覚を感じた

錯覚でも感じるかのように恋人同士のような時間を過ごす

しかし彼には複雑な二つの顔が見えて

先程まですぐそばにいた彼が次の瞬間にとても遠く感じた

数ヶ月そんな時間が続いた

アタシは当時自分が傷つくことを怖がっていつも彼を疑っていた

彼の行動一つ一つに疑念を抱き

そうしては「もう逢わない理由」を探した

自分の事しか考えてなかったし、見てなかった


ある日疲れたアタシは彼との別れを決めた


けどそもそも始めてもいないから終わりもしなかった


半年後彼からまたメールがきた

逢うべきではない・・・そう思って交わしていたが

結局アタシは彼に逢いたくなってメールを送った



「今から逢おうよ」

「それは無理だよ」

「なんとかならないの?」

「こんな嵐じゃ無理だよ」

「本当に無理?例えばなんか理由つけて」

「無理だよそれは・・・また改めて逢おうよ」



「・・・今日逢えないならもう二度と逢わない」



胸に痛みが走った

この時初めて気づいた想いがあった


「あはは。冗談冗談。ちょっと困らせたかったんだ。俺って性格悪いなww」


どちらの言葉も初めて彼が見せる感情に思えた

胸がキュッと締め付けられて寂しそうな子供の姿が見えた気がした



それからまたアタシ達の関係は始まった


再会した彼はまた時折切ない子供の顔を見せる

いや、彼は至ってそんなつもりはないのかもしれない

一生懸命に以前よりずっと自分を大きく見せようとしている

けどアタシには心に痛みが走る

そんな表向きからは想像もつかないようなエネルギー

だからしばらくはまた理解できずにいた

理解できないから彼のその雰囲気にのまれて自分を見失いかけた


でもアタシは今回覚悟を決めた

関わるからには本気で覚悟を決めよう

それができないなら二度と逢わないことだ


アタシはどうにも彼が好きだった

まだ彼とするべきことがあるように思えた

だから終われない


そう思った瞬間

いかに自分が今まで彼を正しく見られてなかったか

彼を理解しようとしてなかったか

それがすごくよくわかった


そんな風に視点を変えたら全く違う顔の彼が見えてきた


愛しくアタシを抱き寄せ、おでこに優しくキスをしたり

切なげに力いっぱい抱きついたり
優しくゆっくりと頭をなでたり


しかしかと思うとアタシの感情を逆なでるような発言をして煽ったり

わざと揚げ足をとったり、屁理屈を言ってきたりした

すごく冷たく接したり、意地悪を言ったりもした


アタシは混乱の中でも冷静に戻るように心がけた


ある日久々に逢っていた時の事

ふざけながらも言い合いになる様子を見て彼は楽しそうに笑い

「あ~楽しいなぁ☆」と本当に嬉しそうに言った

しかしアタシは半ば本気で頭に来ていたのでちょっと理解に苦しんだ


また甘い時間が流れ愛しそうに彼が私にキスをして

さらにいつもとはちょっと違う彼がそこにいた

明らかに少し心を開いた彼


しかしその後アタシ達はとんでもない言い争いを始めた

今思うと理由が定かではないので

本当に些細なことだったのかもしれない

でもアタシは滅多に怒りを露にすることもないのだが

激しく怒り、彼を罵るような発言を繰り返した

明らかに自分が感情的になっているのがわかった

大声をあげ感情のままに言葉を吐いた

そんな自分にとても戸惑った


すると彼も今まで見たことないような様子で感情的に話し始めた

大声で叫び次々と言葉を吐いた

それはアタシを罵る言葉ではなく

まるで自分の心の叫びと言わんばかりの言葉だった

胸が痛くて何も話せなくなった

想いがグッとこみ上げて悲しみや切なさや苦しみ、不安も感じた



後から分かったことなのだが

おそらくそれは全て彼の感情、心の痛みだったのではないかと

しまい込んでいた彼の感情が一気に吹き出てアタシにぶつけられたように思えた



4年目にしてやっと気づいた


彼はずっとアタシに助けを求めていたんじゃないかと

自分ではどうにもできないこの想いを

どこかでアタシなら何かヒントを見つけられるんじゃないかと思ったのではないか


しかしアタシに対して踏み込む事への躊躇の中でずっとゆれていたのかもしれない



ある時彼が言った

「アナタの方がずっと意地悪かもね」


その言葉がずっと引っかかっていた

彼の世界から見た時

アタシの方がよっぽど意地悪で理解不能で信じたくても信じられない存在だったのかもしれない


アタシが彼にずっと思ってきたこと

彼も同じようにずっとアタシに思ってきたのかもしれない



そう思ったらアタシは彼の手を握り抱きしめたくなった

一度だってしたことはなかった

振りほどかれるような気がして

一度だってアタシから彼に触れることはなかった


けど本当は彼は触れてほしかったのかもしれない

手を握ってほしかったのかもしれない

抱きしめてほしかったのかもしれない


4年目のスタート。