雲を視界いっぱ | apddadcのブログ

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それから、私たち、そのまま手をつないだまま、裏山を登り始めた。

登山道の両脇に植えられた八重桜は、ピンク色の雲華洋坊を視界いっぱいに広げ、かすかな風に吹かれて、甘い香りをあたりに撒き散らしている。

下のほうから聞こえる琴や横笛の音色が、優美でたゆたうような雰囲気をかもし出している。

このピンク色の世界の中で、横になり、お昼寝をすれば、天の国へ昇ったかのような、最高のくつろぎとやすらぎを与えてくれそう。

裏山といっても、高さは100メートルあるかどうかってぐらい。

学校自体が丘の上に建っているから、麓の町からの標高差で、200メートルちょいぐらいになっちゃうのかな?

学校の敷地自体は、もともとさくらヶ丘女子高校の運営財団の所有地だったけど、この学校に隣接する裏山は、さくらヶ丘女子の創始者一族の私有地。だから、今年の春の経営危機のときには、この裏山売りに出されることもなく、依然と同じように、管理されていたんだねぇ~

だからこそ、さくらヶ丘女子の生徒会主催で行われる観桜会が、今年も支障なく開けるってわけだ。



私たちは、中腹にある池まで来た。

池といっても、水溜りみたいなものだし、今は干上がって、底に敷き詰められている小石が転がっているのが見えるだけ。梅雨時になり、雨が降ったときに、ようやく池らしい姿を見せる。

この池の周りでは、文芸部が自作の詩の朗読会を開いているはずなんだけど・・・・・・

まだ、時間がちょっと早いのか、だれもいない。

「だれもいないね?」

「うん、まだ、ちょっと早いみたい」

委員長が、手元のパンフレットと携帯の時間表示を見比べて、いう。

「ね、ちょっと寄り道して、あっちの東屋へいってみようか?」

「たしか、なにか作品を展示してあるんだっけ?」

「そうだよ。同じクラスの美術部の子の作品もあるって、言ってた」

「同じクラス? まだ、入学して、一週間ちょっとなのに?」

「うん」

一年生のそれも入学間なしなのに、もう先輩たちの作品と一緒に展示されるなんて・・・・・

な、なんか、すごい作品がみられそう!