朗読劇を始めて4年以上になるだろうか。当初は20人前後いた仲間も、増えたり減ったりを繰り返しているうちに、今は6人になってしまった。
そんな中、ある会を催すにあたり、その、4年前の最初の頃に使った台本の一部を再演することになった。
懐かしく読み合わせをしながら、わたし自身はともかく、回りの人の成長を強く感じた。あの頃はこんな風に自然にできなかったよなあ、声も小さかったし、間も悪くてよく注意されていたのに、なんてスムーズにできるようになったんだろう。
と、女性同士の会話劇を調子よく読み進んでいたら、「サクライさん、いいんだけど、あのね、」と先生に止められた。「ここはもう少し年配の、落ち着いた上品な奥様の感じにしてほしいの」
わ、またやった。
もともと「おっとり」とは程遠いしゃべり方な上に、声をよく出そうとすると力んでしまい、チャキチャキの下町の江戸っ子風になってしまう。
でも、注意をされたので気をつけて、第一声から柔らかくゆっくりと始めてみた。
そうしたら先生は手を叩いて、「そうそうそう、それそれ、そんな感じで!」と言ってくださったのだけど、わたしには自分の口から出たそのセリフの言い回しが、他の人の言葉に聞こえてびっくりだった。
わたしじゃない。
まるで、誰かが乗り移ったみたいだ。
……なんて言うのは大袈裟だけど、無意識に、4年前にその部分を読んだ誰かの読み方を、そっくり真似ていたらしい。
覚えているものなんだなあと、我ながら感心してしまった。
あれは、どなただっただろう。
おっとりとした話し方の人。
セリフの言い方と一緒にその人の姿も脳裏に浮かんだ気がして、懐かしくて、誰だったかあとでゆっくり考えようと思った。けれども、何度か練習しているうちに最初のその言い方が分からなくなってしまって、いつの間にかすっかりわたしのセリフ。
もう面影も思い出せない。