前回では、生地を織り上げるために必要な経糸(たていと)を整える工程を見てきた。

今回は、整えた経糸に緯糸(よこいと)を織り込んでいく製織工程について見ていく。

ちなみに自分はこの製織工程で使われる織機の販売代理をしている。

 

織物を織るためには、製織機の各部品に経糸を1本ずつ通していく必要がある。この作業を経通しという。

織物の種類など、定められた規格に合わせて経糸を通し、通し方も織物により異なる。

手仕事で通す場合と、機械で通す場合があり、手仕事でも1日約4,000本の糸を通すが、

機械だと1日約2万本通せるものもある。

通し方を1本でも間違えると筋が入り、布の品質グレードが下がってしまうので、非常に気を遣う作業になる。

 

緯糸は、円筒形のチーズや円錐形のコーンなどさまざまな形の紙管に約1kg〜2kgずつ巻かれた状態で紡績工場から納品されてくる。

製織機にセットする緯糸は、分速約1,000mの非常に早いスピードで送り出すため、円筒形のチーズに巻かれているとスムーズに糸を送り出すことができない。また、円錐形のコーンに巻かれていても、1巻当たりの糸の長さが短いと、頻繁にコーンを取り替えないといけない。そのため、3〜4個のチーズまたはコーンをまとめて、再利用できるプラスチックコーンに巻き直していく。糸を巻きつけることをワインドということから、この工程をワインダー工程と呼んでいる。

 

(写真:紡績工場から届いた緯糸が入ったダンボール)

 

製織工場では、綿糸などを切れにくくするために、湿度70%以上、室温27〜30度ぐらいに環境を保つ。

 

(写真:工場内の様子)

まず、製織機に経糸のシート(織幅分の経糸を、まっすぐに並べて糊付けしたシート状のもの)をセットする。経糸の経通しができあがり、緯糸のセットが完了するといよいよ製織が始まる。

 

(写真:経糸のシート)

 

(写真:製織機の正面)

 

(写真:経糸シートがセットされている製織機の背面)

 

(写真:製織機にセットされた2本の緯糸チーズ)

一定の速さで送り出された経糸は、1本ずつ分かれてドロッパという部品を通る。ドロッパは経糸が1本でも切れると製織機が止まるように見張るセンサーの役割を果たす。 次にヘルドという部品に通し、糸の通った複数本のヘルドを1つの枠にセットしたヘルド枠を、織物の規格に合わせて数種類作る。そして、セットした、各ヘルド枠が規則的に上下に動いて経糸を開く「開口」と呼ばれる動きをして、緯糸の通り道を作る。

 

(写真:赤枠内の部分は製織機のドロッパ)

 

(写真:赤枠内の部分は製織機のヘルド)

その上下2層に開いた経糸の間に、緯糸を圧縮空気で噴射して飛ばす、「緯糸入れ」をおこなう。 緯糸が布の端まで到達しない場合や、行き過ぎてしまい手前側に糸が残らない場合には、自動的に織機が止まるように機械の右側にセンサーが2つ装着されている。

 

 

(写真:矢印方向に緯糸を圧縮空気で飛ばしている様子①)

 

(写真:製織機の筬と緯糸の動きを察知するセンサー)

緯糸が1本挿入されると、上下2層に分かれたヘルド枠の一部または全部が入れ替わる。その境目にリードと呼ばれる筬(おさ)を打ち込む「緯糸打ち込み」をして、織りの密度を整える。 機械には2つの緯糸がセットされている。天然繊維である綿の糸は、糸ムラが出やすく、1つのチーズ(円錐形に糸を巻いたもの)だけで織ると、糸ムラがそのまま織物に反映されてしまう。同じ糸だが、2つの緯糸を交互に飛ばすことで、品質のムラをなくし、より均整のとれた生地にしている。

 

(写真:矢印方向に緯糸を圧縮空気で飛ばしている様子②)

 

織物には、用途に応じて織り組織や密度の違い、素材の違い、異素材をミックスするなど、さまざまな種類がある。そのため規格に応じて、微細に製織機の設定を変えなければいけない。緯糸を飛ばす圧縮空気の速度や、タイミング、経糸を引っ張る力加減や開口するときの張力の調整といった基本的なことのほかにも、さまざまな調整や部品の選定が求めらる。

昔の織機に比べて機械の自動化が進み、均一な織物を織りやすくなったとはいえ、より品質の高い織物を作るには、長年蓄積された実績データと経験が必要です。規定の番手(糸の太さ)、織り組織、経糸の総本数、インチ間密度などの条件でどのくらい織り縮みが出るか、どんなトラブルがあったかなど細かくデータを蓄積することにより、どんな注文に対しても、精度の高い織物を作り出している。 このように、随所で経験と実績によるデータの蓄積から生まれた創意工夫が施されている。

 

(写真:出来上がった生地が巻かれている製織機の正面)

 

織り上がった生地は、検反工程へ送られる。 ここでは、生地を透過板の上に置き、裏から蛍光灯で透過させながら、織物に不備がないかをチェックしていく。例えば、切れた糸の残りがはみ出ていないかなどを点検しながら除去していく。

 

(写真:検品作業の機械)

織物に横ゆるみなどの欠点が発生していた場合、即座に生産現場に伝え、機械を修理する。検反作業は、織物の品質状態をチェックするだけではなく、機械の不良も見つけ、管理する重要な役割を果たしている。また、必要に応じて、ブラックライトでの検品や、サンプルを取り、簡易的に染めて、異原糸(異なる糸)の混入などの事故防止をする場合もある。 最後に、検反した織物をロール状に巻いていく。たたむと、たたみジワができてしまう場合があるので、次の加工でシワが残らないように約100mごとにロール巻きで梱包して、次の加工場へ出荷する。

 

(写真:検品の様子)