2013-07-09 08:54:00付「FITの恐怖」記事に対して | 三橋貴明氏の原発再稼働を批判するブログ

三橋貴明氏の原発再稼働を批判するブログ

原発を延命するのに使うお金、次のエネルギーを開拓するのに使うお金。
次に原発が事故る確率と、次のエネルギーの技術革新が起こる確率。
次に日本で大地震が起こる確率と、原発の組織内で癒着が起こる確率。

三橋貴明氏の経済政策は正しいが、原発推進は間違い。

2013-07-09 08:54:00付「FITの恐怖」記事に対して
三橋氏『FITこそが典型的な「1%対99%」であり、レント・シーキングが「完璧に成功した例」なのです。FIT導入を目論んだ企業家、投資家たちは、「反原発」「脱原発」の国民感情を利用し、2011年7月に再生可能エネルギー特別措置法を成立させました。

レントシーキングの経済理論(文献)『レントシーキングとは、政治や官僚に働きかけることによって規制を生み出し、経済主体が自分の活動環境を有利なように変えていく行動を意味する。』

なるほど、固定価格で電力会社に売ることが出来るという制度なので、レント・シーキングの1つということでしょうか。

今、メガソーラーを大々的に導入しようと目論んでいる企業家や投資家たちが、法案成立時に、政治や官僚に働きかけていたかどうかは、皆目分かり兼ねます。レント・シーキングという言葉を調べると、企業が政治や官僚に働きかけることで、自分の都合のよい規制を作らせて、独占、寡占を行う問題が多く取り上げられていますが、一方、太陽電池パネルのレント・シーキングでは、屋根があれば、誰でも、一般家庭の個人でも、制度を利用することが出来ます。すべての企業が制度を利用できる機会があります。レント・シーキングという言葉の使い方が、本当に正しいのか、疑問です。

得られる利益が大きければ大きいほど、その分野への投資は加速するでしょう。制度の作り方次第で、投資先を制御することが出来ます。日本の土地に、迅速に太陽電池パネルを普及させるためには、どのような政策を採るのが良いのか、投資から得られる利益が大きくなる政策を施すことで、迅速に普及させることが出来ます。何もしなければゆっくり普及していたであろうところを、迅速に普及させられるようになる代わりに、その普及加速費用が余分に掛かっている、と捉えることが出来ます。

何も、太陽電池パネルのレント・シーキングによって、何も生まれていないのかと言えば、そうではありません。太陽電池パネルという電力を生産する有効な財が、日本の土地に生まれています。すなわち、日本の財産が増えています。三橋氏が以前に言及した、国富が増えています。

三橋氏『FIT導入を目論んだ企業家、投資家たちは、「反原発」「脱原発」の国民感情を利用し、2011年7月に再生可能エネルギー特別措置法を成立させました。

情報ソースがありませんが、裏ではそんな事実があったのでしょうか、知りませんでした。隠されていて、あまり耳に入って来なかったのかもしれません。いったい、どれぐらいの企業家、投資家がFIT導入を虎視眈々と目論んで、どれぐらいロビー活動でプッシュしたのか、もっとよく知りたいものです。

三橋氏『わたくし達の所得の一部がFITの事業者、投資家に吸い上げられる構図は、最短でも20年は終わらないということになります。ちなみに、我々から「賦課金」として所得を吸い上げているのは、日本国内の事業者、投資家に限らず、「外国の投資家・事業者」も含まれています。

同様に、わたくし達の所得の一部が、電源開発促進税として、創設時(1974年)から長らく、原発推進のための費用、および、原発関連天下り法人に吸い上げられる構図が続いている事実も知られるべきです[3]。電源開発促進税による徴収総額の約3,300億円程度が、政府のエネルギー対策特別会計の電源開発促進勘定となっています(2011)。電源開発促進勘定のうち約1,800億円が、原発の新技術や核燃料サイクルなどの研究・開発費として官僚OBが在籍する独立行政法人や財団法人などに支払われています[1][2][3]。例えば、高速増殖炉もんじゅを運営する独立行政法人「日本原子力研究開発機構」には1,200億円強が支払われています。
[1] http://www.meti.go.jp/main/yosan2011/20110523-2.pdf
[2] http://www.windfarm.co.jp/blog/blog_kaze/post-11781
[3] http://matome.naver.jp/odai/2131918145751786801

三橋氏『何度も繰り返し書いていますが、再生可能エネルギーで原発の代替をすることはできません。電力サービスに求められるのは「安定性」ですが、再生可能エネルギーの発電安定性は、著しく低いのです。現在、最も増えているメガソーラは、当たり前ですが夜は発電できません。そして、街一つを賄うような蓄電池が存在しない以上、再生可能エネルギーのみで日本国民の需要を賄うなど、現時点では夢物語です。

三橋氏がこの手の安易なプロパガンダを使うとは非常に悲しいことですが、誰も、再生可能エネルギーのみで日本の電力需要を賄おうなどとは言っていません。同じように、原発のみで日本の電力需要を賄うことも出来ません。街一つを賄うような蓄電池が存在しない以上、必ず、火力と水力、揚水発電の組合せが必要です。極論に持ち込むことで相手を否定してみせるパターンです。

三橋氏『現在、最も増えているメガソーラは、当たり前ですが夜は発電できません。

当たり前ですが夜は発電できません。そして、夜間電力が非常に安い事実が示すように、夜間は発電できなくても、現状、一向に構いません。

三橋氏『再生可能エネルギーの発電安定性は、著しく低いのです。

ひとりひとりの人、あるいは、1つ1つの事業所が、突然電気を使い出し、突然電気を使い終わる、という電力需要の方も、安定性は著しく低いものです。一方、電気の利用者が非常に多いと、全体として平均化されます。太陽電池パネルも同様に、母数が増えれば全体として平均化されます。母数が少ないうちはとりわけ安定性が問題にはなりません。

太陽光発電の課題点と蓄電技術促進の必要性に関して資料があります[1]。pp3以降のグラフを見ると、ある1家庭に設置された太陽光発電の発電量に大きな変動が見られますが、それ以上に1家庭の電力需要の方が激しく変動します。火力発電所でこの急激な変動をすべて吸収しているのかと言えば、そうではありません。利用者が非常に多いので、全体として平均化され、火力発電所では緩やかに慣らされた全体の電力需要の変動に対して、出力調整の制御を行っています。太陽電池パネルも同様に、設置数が増えるほど全体として変動は平均化されます。従って、この資料では、1家庭のみの発電量変動しか見ていない点が問題です。
[1] http://www.jnpc.or.jp/files/2011/07/b1df274875a4578a18c611ff8ee8f9f8.pdf

三橋氏『本問題は我が国のエネルギー安全保障を覆す可能性がある、極めて深刻な問題なのです。とはいえ、解決のためにはまずは日本国民が「FITの恐怖」について理解しなければなりません。

太陽電池パネルのレント・シーキングは、単純にお金の問題であって、エネルギー安全保障と無関係ではありませんか? 日本に電力生産の財が残るだけの話に対し、どこがエネルギーの安全保障と関わるのでしょうか? 疑問です。



確かに、『定額』買取り制度を導入したことで、民間投資を制御する手段がなくなってしまうという点は、制度上の問題点と言えます。最後に、再生可能エネルギー特措法の内部利益率(IRR)設定に関する議事録を示した良いコメントがありましたので、転載いたします。

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http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry2-11569206289.html コメントNo.28

こちらから、議事が確認出来ます
昨年度の意見より気になる点を抜粋
内部利益率(IRR)について 
『 ドイツやスペインでは、それぞれ税引前7%程度、税引前8.5~10%程度のIRRを設定している。日本との金利差(ドイツで1%程度、スペインで4%程度)を考慮すれば、両国のIRRと同程度のIRRとして我が国で標準的に設定すべきIRRは、税引前5~6%程度と考えることができる。

3年間は、例外的に、利潤に特に配慮するものとする旨の規定(法律附則第7条)がなかった場合には、この程度のIRRの水準が我が国では妥当であると考える。

実際には、施行後3年間は、例外的に、利潤に特に配慮する必要があることを加味し、これに更に1~2%程度を上乗せし、税引前7~8%を当初3年間のリスクが中程度の電源に対して設定するIRRとすることとした。 無論、3年間経過後は、この上乗せ措置は、廃止されるものである 

10kW以上の太陽光発電については、ヒアリングにおいては、税引前6%と、他の分野に比べて低めのIRRが提示された。これは再生可能エネルギーの他の分野と比べた場合の太陽光発電のリスクの小ささを反映しているものと判断した。

このため、最初3年間のリスクが中程度の電源に対して設定するIRRを税引前7~8%として想定するのであれば、10kW以上の太陽光発電については、これより低い水準に設定することとし、ヒアリングどおり、税引前6%とすることとした。

一方、10kW未満の太陽光発電については、IRRを、3.2%と設定した。これは、一般的なソーラーローンの金利に相当する。補助金効果を勘案した場合の価格に対応するIRRは、当然ながら、これより高いものとなる 』

IRRの解りやすい解説