三橋貴明が発言する原発を再稼働すべき理由の論破 | 三橋貴明氏の原発再稼働を批判するブログ

三橋貴明氏の原発再稼働を批判するブログ

原発を延命するのに使うお金、次のエネルギーを開拓するのに使うお金。
次に原発が事故る確率と、次のエネルギーの技術革新が起こる確率。
次に日本で大地震が起こる確率と、原発の組織内で癒着が起こる確率。

三橋貴明氏の経済政策は正しいが、原発推進は間違い。

●発言● すべての化石燃料を海外からの輸入に依存しているため、もし輸入がストップしたら、火力発電所は1ヶ月でストップし、国民生活と国民経済が危機的状況に陥る。→だから原発再稼働
http://www.youtube.com/watch?v=9F6_nfM2A00

●→ 化石燃料の輸入がストップして停電する確率と、地震が起こって原発事故になる確率の、どちらが高いのでしょうか? 過去50年間に化石燃料の輸入がストップして停電になった例は、オイルショックや色々な戦争を含めて一例もありません。原発事故は、新しいものだけで、新潟地震による柏崎事故、東北地震による福島事故。さらに日本は近い将来に南海地震を控えています。日本で大地震が起こる確率よりも、はるかに小さな確率で起こる事象を引き合いに出しています。悲しいことに恣意的な結論に誘導させる議論になっているのです。

●→ 2010年(3.11前)の日本の電力は、30%が原子力発電、62%が火力発電(30%が天然ガス、25%が石炭、7%が石油)です[1]。日本の天然ガスの輸入先は、60%以上が隣国/安定国で、危険が懸念される中東からは30%です[2]。石炭の輸入先は、90%以上が隣国/安定国で、中東からはほぼゼロです[3]。一方、原油の輸入先は、80%以上が治安が比較的不安定とされる中東です[4]。したがって、原発停止状態の日本の電力の中東依存割合は、天然ガス30%*30%/70%=13%、原油7%*80%/70%=8%です。原油は石油備蓄基地があり、200日間の蓄えがあります。統計を見れば簡単に分かりますが、なぜすぐに原発再稼働へ行きつくのでしょうか? 悲しいことに統計の全体像を見せず、恣意的な結論に誘導させる議論になっているのです。
[1] http://memorva.jp/ranking/japan/enecho_energy_power_share_2010.php
[2] http://www.teikokushoin.co.jp/statistics/map/index17.html
[3] http://www.teikokushoin.co.jp/statistics/map/index18.html
[4] http://www.teikokushoin.co.jp/statistics/map/index16.html
[5] http://www.nikkei.com/article/DGXNZO38992910S2A220C1EE2000

●→ もし、日本の電力の100%を原子力で発電していたとしても、化石燃料の輸入がストップすれば、石油から作られる製品はすべて生産が激減します。車も家電もプラスチック系部品が足らずに最終製品が作れません。工業だけではなく、農業、水産業にも影響します。化学肥料、ビニール、船の燃料、漁業網。さらに、燃料がないので、物流も激減します。工業、農業、水産業とも、商品を輸送できなくなります。輸出入も激減します。すなわち、電力が安定供給されていようがいまいが、製品は作れず、輸送も出来ないのです。もはや、電力の安定供給といったレベルの話ではありません。電力の安定供給とは、比較にならない程の緊急事態です
ちなみに、日本の原油輸入先は、80%以上が、治安が比較的不安定とされる中東に位置する国々です(サウジアラビア、アラブ、カタール、イラン、クウェート)[1]。
[1] http://www.teikokushoin.co.jp/statistics/map/index16.html

●→ もし、化石燃料の輸入がストップするような事態が発生すれば、日本だけでなく世界中の多くの国の経済に大打撃を与えます。なにしろ、石油なしでは、工業、農業、水産業とも激減し、物流も激減するからです。世界経済はつながっています。供給不足、異常なインフレ、世界経済が混乱、後退します。他の先進国が黙って見ていると思いますか? これはオイルショック級の世界的な非常事態になります。日本の電力うんぬんの限定的な小さな話ではありません。それぞれ先進国は自国の利益を守るために、それぞれの権力と軍隊を行使して、事態を早急に解決するよう働きかけると思いませんか?
オイルショック以降、二度とオイルショックを起こさないように世界が秩序を守り、以降は1度もショックが起きていません。一方で、大地震は阪神淡路大震災・東日本大震災をはじめ日本で何度も起こり、これからも起こり続けます。


●発言● 原発なしでは日本の電力量を賄えない。→だから原発再稼働

●→ 原発を全停止しても、現に、電力を賄うことが出来ています[5][6]。原発建設時に、原発の発電量と同等の発電施設を別系統で建設しなくては、原発を作れない法律になっているので、当前です。原発を全停止しても電力供給に支障が出ないように、当初から法律で定められています[1][2]。原発は、法律により、約1年に1回、定期点検を行わなくてはいけません。定期点検のため、原発を停止する期間が約3~6ヶ月、場合によっては1年以上あります[3][4]。このような原発の停止が運悪く重なって、すべて停止になった場合でも、安定して電力を供給できるように、当初から法律で仕組みが作られています。原発がすべて停止しても、それらの原発の発電量より多く発電できる別の発電施設(主に火力発電所)を、必ず併せて建設しなくてはいけないのです。もし、原発を全停止して電力が不足したら、法律を違反して原発を運営していたことになります。
[1] http://enzai.9-11.jp/?p=11446
[2] http://ameblo.jp/datsugenpatsu1208/entry-10890939424.html
[3] http://www.cnic.jp/files/NPPoperational20110823.pdf
[4] http://www.gengikyo.jp/db/fm/plantstatus.php
[5] http://nanohana.me/?p=11533
[6] http://www.kyoto-minpo.net/archives/2012/07/13/post_8889.php
[7] http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n102285?fr=rcmd_chie_detail


●発言● 電気料金が値上げされて、国民経済にとって悪影響になる。→だから原発再稼働

●→ デフレ脱却のために、国債発行と公共事業のパッケージを大規模に行う必要があるので、インフレになるまでお金を無限に用意可能です。なので、景気刺激政策の一つとして、電気料金の値上げ分を国が負担することで、非常に簡単に問題を解決することができます。解決できるのに、解決しないなら、デフレ下なのにデフレ促進策を続けてきた愚策と同等です。日本政府はお金を無限に用意可能なので、この電気料金の国負担費用が、他のデフレ脱却政策の予算に影響することはありません。正しい政策を行えば、電気料金を上げる必要も、原発を再稼働する必要もないのです

●→ 原発と火力発電所で、1kWh当りの発電コストは、少なくともほぼ同等とされています[1][2]。しかし、原発は、廃炉費や放射性廃棄物の保管費などの費用を将来へ先送りしているため、原発があたかも低コストであるかのように誤解されています。発電方法を原子力から火力に切り替えると、将来へ先送りしていたコストを今支払う必要があるため、電気料金の値上げが叫ばれているに過ぎません。
[1] http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB#.E8.AB.B8.E8.A9.A6.E7.AE.97.E3.80.81.E3.82.B3.E3.82.B9.E3.83.88.E6.AF.94.E8.BC.83
[2] http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/04/04070105/02.gif

 

●→ 「日本だけ足元を見られて、天然ガス(LNG)の燃料代が吊り上げられている」[1]---なんて言って調達から帰ってきたら、これがもし民間企業だったら突き返されます。もし民間企業なら、恐れ多すぎて、そんなこと言い訳として口に出来ません。民間企業に比べれば、電力会社は真剣さが圧倒的に足りていません。資源エネルギー庁は「そもそも電力業界には1円でも安く調達しようという気合がない」と指摘しています[2]。燃料を安く調達しようがしまいが、利益にならないという統括原価方式の制度上、真剣さが足りなくなる環境にあります。そんな電力会社の言い訳をすんなり信じますか? すんなり信じて、燃料代の高騰を理由に原発再稼働にうまいこと誘導されますか?

 

最近、ようやく調達に動きを見せてきました。シェールガスの大量生産により価格が下がっている米国産LNGの生産契約を、中部電力と大阪ガスが取得しました[2]。2017年から、計440万トンのLNG生産能力を中部電力と大阪ガスが半分ずつ確保する契約だそうです。
[1] http://blog.goo.ne.jp/tarutaru22/e/f48f58fb716f2469a24b21b6f48dff22
[2] http://diamond.jp/articles/-/23775


●発言● 使用済み核燃料をMOX燃料に再処理して、原発でMOX燃料を燃やさないといけない。→だから原発再稼働
http://www.youtube.com/watch?v=mSlqn_kdK3Y at 10:30
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11412953219.html

●→ 技術的に「再処理してMOX燃料を原発で燃やさないといけない」と決まっているわけではありません。いくつかの選択肢のうちの一つです。世界における使用済み核燃料の最終処分計画は、日本とフランスの2か国のみが再処理で、アメリカ、ドイツをはじめ、フィンランド、スウェーデン、スイス、ベルギーと、その他すべての国では再処理をせずに、使用済み核燃料を地中に埋めて廃棄する計画です[1]。アメリカは再処理でプルトニウムを取り出す技術が拡散するため、核不拡散の立場から、再処理を行わず直接処分を行う政策を取っています[2]。ドイツ、スイス、ベルギーでは、途中で再処理の政策を取りやめて、再処理をしない方針に切り替えました[1]。
[1] http://www.jnfl.co.jp/business-cycle/4_haikibutsu/haikibutsu_03/hakibutsu_04/_04_04.html
[2] http://www.hiroshimapeacemedia.jp/mediacenter/article.php?story=20120613101133843_ja

●→ もし「再処理してMOX燃料を原発で燃やさないといけない」と仮定すると、今から早急に再処理を開始して、生成したMOX燃料だけを原発で燃やすということになります。今すぐ原発を再稼働して、通常のウラン燃料を燃やすための理由にはなりません。原発を再稼働して、通常のウラン燃料を燃やしていたのでは、使用済み核燃料を増やすだけで、本末転倒です。この理論展開では、再処理でMOX燃料が生成されるまでは、原発を停止すべき、ということになります。

●→ 以前のように原発を稼働すれば、その分、確実に使用済み核燃料が排出されます。原発を停止する前までは、毎年1000トンのペースで使用済み核燃料が増え続けていました。現在、日本は17000トンの使用済み核燃料を保有しています。一斉に原発を停止したことで、毎年1000トンごとに増えていた使用済み核燃料を、全く増やさないことに成功しただけでも、問題の1つを解決したと思いませんか?

 

 

●発言● 電力不安で、企業が海外に出ていってしまう。→だから原発再稼働
 
●→ 電力の安定供給に不安があるので、企業が海外に出ていく、と言いますが、本当でしょうか? 日本より電力が安定供給されていて、採算の取れる海外の国ってどこにあるのでしょうか? 今の日本よりも、海外の方が、電力供給が不安定なのではありませんか? さらに、海外に出るには相当準備費用が必要なのに、電力不安だけで他の戦略は何もなしに、企業は本当に海外に出るでしょうか? 最近は経済成長戦略のおかげで円安基調でもあるのに? 余力のある大企業は、海外に出ていくより、自社の自家発電量比率を上げています[1]。

 
●発言● 今、急ピッチで原発の改修工事をしている。
●→ 「現在は全ての原発において耐震化工事が急ピッチで進められています」とか普通のことのように言ってますが、なんで今やってんの? なんで、もうすでに済んでいないの? 10年前から分かっていたことを、なんで、事故が起こってからしか出来ないの? なんで気づいた時にやってないの? だから、原理的に危険な原発は止めましょう、と言っているのです。結局、誰1人として、事故が起こってからしか、対策なんてしないんですから。

 
●発言● 太陽光や風力といった不安定な電力供給では話にならない。→だから原発再稼働
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11412953219.html
 
●→ 太陽光発電の不安定な電力供給では話にならない、とありますが、ピーク時の電力供給量を太陽光発電によって増加できるので、非常に効果的です電力の安定供給で、もっとも厳しいのは、ピーク時で、電力の安定供給が崩壊するのは、ピーク時からです。そして年間のピークは、真夏日の晴れの日にあります。太陽光発電の効率が最も良い時に一致します。不安定の点では、原発も、不具合や定期点検で、止まったり動いたりするので、同じです。そのため、原発の発電量と同等の発電施設を別系統で建設しなくては、原発を作れない法律になっています。

●→ 不安定な電力供給では話にならない、とありますが、輸入する天然ガスの消費量を減らせるので、非常に効果的です。晴れている日は太陽光発電で発電して火力発電の出力を抑え、晴れていない日は火力発電の出力を上げることで、電力を安定供給しながら、燃料消費量を減らすことが出来ます[1]。火力発電は、燃料などを調節することで発電量を柔軟に調節できます[2][3][4][5]。原発も、出力調整機構として、必ず火力と併せて使います[5]。
●→ 太陽光発電は、毎年200万kW=原発2基分ぐらいずつ増えています(太陽光の電力増加量は、2011年度129万kW、2012年度250万kW)[1][2][3]。その約85%は、一般戸建住宅用の太陽光発電です。この傾向は、太陽光発電の余剰電力買取制度によって、今後加速すると見られています。毎年、原発2基分ぐらいずつ発電量が増加していく見通しです。三橋貴明が声高に叫ぶ建築物の耐震化のついでに、ソーラーパネルも据え付けてはいかがでしょうか?
 
 

●発言● 原発を再稼働しない場合、代替のエネルギー供給はどうなるのか。原発に代わる有力な代替案がない。→だから原発再稼働
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11412953219.html

 

●→ お金を掛けずに代替案を得ようとするなら、代替案はありません。そして、お金さえ掛ければ、実現可能なことは多くあります。一般戸建住宅用の太陽光発電や、メガソーラーの普及は確実に電気を作り、確実に日本の資産となります。太陽光発電効率の研究開発も、石油生成藻の研究開発も、メタンハイドレートの研究開発も、蓄電技術の研究開発も、公共事業として研究開発、および、インフラ整備に投資することで、国土強靭化の根幹となるエネルギー技術を発展させ、これこそ確実に日本の資産となります。

 

●→ 現状は、原子力の研究だけに対して、極端に莫大な予算がつぎ込まれています。この10年間、政府の総エネルギー開発費の約70%以上が原子力研究費です[1][2][3][4]。2010年の原子力研究費は2500億円。世界と比較しても突出しています。米国の原子力研究費は800億円で19%、フランスは500億円で42%、ドイツは200億円で28%です。あらゆる分野の可能性を追求するため、原子力以外のエネルギー開発にも、均等な割合で予算を費やすべきです。アメリカは、そうなっています[2]。原子力研究があるがために、他のエネルギー研究費の予算が削られ、その開発が妨げられるのは、日本国民にとって損です。
 
●→ 原子力研究があるがために、他のエネルギー研究費の予算が削られ、その開発が妨げられています。メタンハイドレートは、その好例です。メタンハイドレートの研究開発費は、2002年から2011年の間に、平均して1年間で約50億円の予算しか付いていません[1]。原子力研究費は1年間で2500億円です。50倍も差があります。さらに、低コストで採掘できそうだと分かっている日本海側での採掘研究には、1年間で250万円の予算しか付いていません[2]。このように政治的圧力によって、正しく開発が進まないのは、日本国民にとって損です。その他にも、メタンハイドレートの研究開発に対して、原子力・石油利権に絡む大学教授、国会議員、企業などが、反対の姿勢を取っています。
[1] http://www.meti.go.jp/policy/tech_evaluation/c00/C0000000H23/120131_sekiyutennengas/sekiyutennengas11-1_6.pdf
 
●→ 次のエネルギー開発が成功しようがしまいが、投資したお金は研究員の誰かの所得になり(内需)、雇用を生み出すので、雇用創出=国民所得合計の向上=GDP成長=経済成長となり、デフレ脱却の効果を十分発揮します。デフレ脱却のために、これから国債発行と公共事業のパッケージを大規模に行うのですから、エネルギー安全保障が日本が抱える喫緊の課題というのであれば、原子力以外の次のエネルギー開発にももっと投資すべきではありませんか? 国民経済は企業経営と全く違いますが、技術開発は企業経営と同様に、まずまとまった投資をしないと何も始まりません。原子力の研究に、世界でずば抜けて、一番多くの投資をしているのですから、日本の原子力技術は世界最高水準です。
 
●→ 今後、原発の延命につぎ込むお金すべてを、太陽光発電、石油生成藻、メタンハイドレート、蓄電技術を含む、次のエネルギー開発[1]につぎ込んだ方が、将来の日本の資産になると思いませんか?
[1] http://ameblo.jp/ap-o-mp/entry-11442802553.html

v1 2013-02-10
v2 2016-01-08
v3 2018-01-01