「あなたのお金を倍に」 エラリイ・クイーン | 手当たり次第の読書日記

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新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。

エラリイ・クイーン, 青田 勝
クイーン検察局

ニュースになってるのを見て初めて知りましたよ、L&Gとか円天とかって。
「報道ステーション」で、豊田商事からこのL&Gまで歴代の投資サギをフリップずらーっと並べておさらいしてましたが。スタッフと司会者陣の声が聞こえる気がしました。
今回騙された人皆、こういうの何も覚えてない訳!? って(苦笑)。
騙す奴が勿論一番悪いんです。でも、騙される人にも全く問題なしとはいえないと思うんだなあ。
だって、ある訳ないもん。そんなうまい話。
何で信じちゃうのかなあ……?
しかしこういうのって、古今東西を問わない話なんですよねえ。古典ミステリ読んでてもしょっちゅう出てきます。クイーンでもクリスティーもチェスタトンでも、投資サギと新興宗教サギはおなじみのネタ。
「あなたのお金を倍に」は『クイーン検察局』収録のショートショートです。ミステリとしての主眼は、衆人環視の中を密室から逃亡したトリックにありますが、逃亡を試みるからには、つまりその人物は悪党。その悪事は、題名が示す通り投資サギなんですね。
お金を3ヶ月預ければ倍にして返す、という男。日々の暮らしに追われる小商店主や老人や未亡人がなけなしの貯えをつぎこみ、ある者は投資のために借金までする始末。探偵エラリイとその父クイーン警視がこのことを知った時点では、まだ「被害者」は一人も発生していません。参加者全員、ちゃんと預けた額の倍額を手にしているのですが、クイーン父子はただの一瞬も騙されはしない。


彼は今日集めた金を、三ヵ月前に投資した連中の支払いに当てているだけです。


からくりはこんなもの。
銀行にも証券会社にもできないことを、何で一介の個人ができるのか。そう考えてみれば、すぐ気がつきそうなものだといつも思うのですけれども……。