『発掘! 子どもの古本』 北原尚彦 | 手当たり次第の読書日記

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新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。

北原 尚彦
発掘!子どもの古本

前に記事にした「本棚探偵シリーズ」(喜国雅彦)を思い出してしまいましたが、しかしあれよりはまだ一般人にも何とかついていける世界かと。とにもかくにも、北原さんが買い漁りまくっている古本は、ちゃんと彼が読むための本ですからね(笑)。


 子どもの本は大人の本以上に入れ替わりが激しく、よほどの名作でない限り、昔と同じものが今でも新刊書店で売っている可能性は極めて低い。(「はしがき」より)


あれっそうだっけ?と、私が子供だったウン十年前と同じ絵本が平積みになっている書店の児童書コーナーを思い浮かべて首をかしげてしまいましたが、つまり『ぐりとぐら』や『さむがりやのサンタ』なんかは「よほどの名作」の部類なんですよね。ここで北原さんが紹介してるのは、原作とあちこち違ってるホームズ(「超訳」かい!)、原作のない日本オリジナルのルパン(こらこらこらっ!)、エロティックな映画の紹介をうまいこと誤魔化してるSF入門(北原さんによれば、エロを取ったら意味のない映画なんだそうですが)、物語と全然関係のない表紙絵がついてる大昔の少女小説(紙質も粗悪)、などなどの心躍る(笑)ラインナップです。
小学校の図書室で読んだ、これ一体いつからこの学校にあるんだろ的古本の群れがまざまざと脳裏によみがえりました……佐々木倫子いうところの「図書館で借りた推理小説の本には毒がしみこんでいるよう」という、あの世界ですよ!(笑) そういえば憶えがありますもん、ルパン全集が2種類あって、まず片方の『奇岩城』を読んだらあんまり面白かったものでもう一方のも読んだんですが(笑)、事実上の主人公である少年探偵の名前も違えば物語の結末も違ってたということが(爆)。
ところで、自分が親に買って貰った本ではなく、誰かよそのうちで読んだばっかりにその後再会できずに気になっていた話がありました。全体のストーリーもタイトルも憶えていなくて、ただ、「本当の空色」という絵具が出てくる、ということのみ。この絵具を使って絵を描くと、たとえば絵の中の家に避雷針を描き忘れたため落雷しちゃって大変なことになったり、この絵具を塗った板に乗って川を下っていると、川面に映る夜空と全く見分けがつかずに「水の上を歩いている!」とびっくりされたり、という場面場面の記憶のみがあったのです。
そしたら。
出てきたんですよこの本に!
ハンガリーの作家バラージュ・ベラという人の『ほんとうの空色』。過去に複数の出版社から出ては絶版になっていましたが、現在岩波少年文庫に入っているとのこと! うわあ、これはぜひとも探さなくっちゃ。
読んで純粋に面白かったと同時に、個人的に著者に満腔の謝意を捧げたい1冊でありました。北原さん、ありがとう!