『新選組の哲学』 福田定良 | 手当たり次第の読書日記

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新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。

福田 定良
新選組の哲学

面白いよー、という噂は前から聞いてました。すっごく面白いんだよー、でももう絶版なんだよね残念……という話を聞くにつけ、うーんそれはぜひとも読んでみたいものだとかねがね思っていたのですが。

白牡丹さんのところ で耳寄り情報。えっ復刊!? うわーーーーー!!

休みの日を待ち焦がれ(最寄の書店の品揃えでは、中公文庫限定復刊なんて置いてあろう筈がない・苦笑)、一番近い紀伊國屋書店で首尾よく入手致しました! ふっふっふ♪

で、早速読みましたよ。いやあ、評判いいのも頷けます。

題名の「哲学」って、そうか、こういう意味だったんだ。新選組の組織哲学について論じる!訳ではなくて、新選組を題材にしての哲学的会話。但しここでちょっと面白いのが、その題材になっている新選組とは、小説及びテレビドラマの「新選組血風録」シリーズだということなんですね。

一見、何てことないつくりに見えるんですよ。小説やドラマの2次創作(笑)のようにも思えるし、そうとだけ受け取って楽しむこともできます。

しかし読者の気持ちひとつで、やろうと思えばどこまでも深読み可能。小説やドラマから離れて、実際の新選組隊士達の人間関係や心情に思いを巡らすもよし、更には「新選組それ自体」からさえも離れて、ひろく「新選組的なもの」について考えるのもよし。新選組マニアの老紳士が「夢の中で見た」と称する、ある日ある時の沖田総司や斎藤一や土方歳三の会話は、別段びっくりするようなことが語られている訳でも何でもないんですが……どれも、なぜか心に残ります。

読んでいて気持ちがいいのが、著者の眼差しの温かさ。「新選組血風録」シリーズに依拠しながらも、伊東甲子太郎とか武田観柳斎とか、原作者(笑)は決して好意を持ってたとはいえないであろうキャラクターのことも見放してはいないんですね。彼等の限界や弱点はしっかり見据えていますが、断罪はしない。

限定復刊のゆえか、文庫本でありながらハードカバー単行本並みの高額(何と1,500円!)なのが難といえば難ですが、やはり新選組好きの人は買って損はないかと。研究でも考察でも小説でも随想でもない、ちょっと不思議な「新選組のはなし」です。


……しかし、あの土方さんの「癖」の話は……! よくも思いつきましたねあんなの(爆)。