飛べると思った。


 数年前に亡くなった男性が言った。

 彼が入居してきたのは、地域の中核病院から

 紹介されての入居


 入院前は他人のビニールハウスで寝泊まりし、

 山からの水を汲み

 ゴミを周りに従え。カセットコンロ

 火鉢を使い調理


 最近では珍しいケーズである。

 しかし、彼には息子がいた。

 死んでも連絡はしてくれるな。


 生活保護での入居

 適切な衣類。三食の保障

 医療の保障がされた。


 倒れて心停止での入院であった。

 入院を経て、退院となると

 他人の所有するビニールハウスでの生活は

 しかし、他者との関わり

 社会との関わりを拒絶している為

 退院後の生活を安全にと

 医療連携室は私の施設を

 息子さんは協力しない

 身元保証人にはならないかも。

 そう情報が入る。


 なんと息子さんは施設入居の保証人にはなる

 それだけだといい。保証人となった。

 亡くなっても連絡はしないでほしい。


 そして、彼は施設での生活が始まる。

 やはり、他者との関わりを拒絶しただけあり

 俺様。

 不平不満だらけ。

 そんな彼が二階の自室で青い空を眺めて


 飛べる。

 

 そう思ったらしく。

 ベットから立ち上がり

 少し高い位置にある窓から

 飛んだ


 施設職員は知らない

 隣のいつもうるさいなどと苦情ばかり

 吠えられるだけのおじさんが

 二階から人が降ってきた

 落ちてると教えてくれた。


 すぐさま救急車

 腰椎骨折で入院。


 落ち着き話ができるようになり、

 その時の彼は

 青い空がきれいで、飛びたい

 翔べると鳥のように優雅に翔べる

 そう思ったらしい

 

 私と会うとその時の話をする。

 跳べると思った。

 だから手を広げたと。


 そして彼は寝たきりとなる。

 誤嚥を繰り返し亡くなった。


 青い雲一つない空を観るたび

 彼を思い出す


 翔べると。思った。手を広げた。


 彼はいないが空を眺めては思い出す


 知り合いが言った。

 人は海に帰る。と。

 しかし、彼は空に帰った


 あまり性格も、人間的にも好きではないが

 空に帰った彼のことは

 思い出す機会は多い。


 空で優雅に飛んで楽しんでいることだろうと。

 しかし、私は警察や色々なところで

 お叱りが。


 やっぱり他人との関わりを捨てた

 あなただからやらかした。


 もう、悪さはせず、ゆっくりと眠ってください


 来世で会いましょう。