なぜレチノールは紫外線を浴びるといけないの? 活性酸素と同じ作用を発揮するからです その2 | 青山ヒフ科クリニック院長Dr.亀山のオフィシャルブログ

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表参道にある青山ヒフ科クリニック 院長 亀山孝一郎のブログです。

図1

マウスの皮膚にパルミチン酸レチノールを外用した場合の模式図を示します。外用後に紫外線にあたるとメラニンがないので皮膚に大量の活性酸素が生じます。パルミチン酸レチノールも紫外線同様に皮膚に大量に吸収されます。波長325nmのUVAを良く吸収するパルミチン酸レチノールは紫外線のエネルギーを吸収して分子のエネルギーが増加します。この時に活性酸素が存在するとパルミチン酸レチノールに結合してしまい、パルミチン酸レチノールが活性酸素と同じ性質を持つようになります。周囲の蛋白や遺伝子にダメージを与え脂質を酸化します。遺伝子のダメージは発癌を引き起こします。

前述した2%パルミチン酸レチノールがSPF20程度のUVBによる紅斑形成抑制作用を示したという報告は、UVBを使用した実験です。パルミチン酸レチノールが325nm のUVAを吸収するけれども、UVBは比較的吸収しにくいために光子による励起が起きにくく、パルミチン酸レチノールの光変性や光酸化が起きにくいために、UVBに対して優れた紅斑形成抑制作用を示したのかもしれません。


 

 

図2

 上にレチノールの構造を示します。左の6環状構造から炭素の1重結合と2重結合からなった鎖が右に伸びています。炭素同士が1重構造と2重構造を繰り返すのを共益2重構造といいます。この結合は極めて不安定で紫外線の光子による刺激を受けると分子構造を変えずに2重結合の部位が移動します。鎖の右端のCH2OHより水素原子や水分子を放出します。水素原子は周囲の物質を還元するので、抗酸化作用を発揮し炎症を抑えます。一方6環構造の2重結合の部位は周囲から水酸ラジカルなどの活性酸素を吸収して周囲の物質を酸化する活性酸素と同じ向酸化作用を発揮し炎症を起こします。すなわちビタミンAは紫外線を照射されると活性酸素を消去する性質(抗酸化作用) と活性酸素を生じる2つの性質(向酸化作用)を持っているのです。ビタミンAが活性酸素としての働きを生じるには、紫外線とビタミンA周囲の活性酸素を必要としますしたがって、紫外線を浴びないこと、皮膚に活性酸素を生じないようにビタミンCやビタミンEそしてグルタチオンなどの抗酸化物質大量にあれば、ビタミンAは皮膚に外用しても活性酸素としての性質を発揮しないようになるのです。日常生活で過剰な紫外線を浴びないようにサンスクリーンを使用する事が大切です。 皮膚にビタミンCなどの抗酸化剤を補給することも大切です。

 


 

図3
 

ヒトでビタミンCを一番多く含む臓器は皮膚です。特に外側にある表皮に65/100gと非常に多く含まれています。 心臓が鼓動するにもビタミンCは必要のですが、皮膚には心臓の10倍以上のビタミンCが含まれているのです。なぜ皮膚にビタミンCが多く存在するのか? それは紫外線により生じた活性酸素を消去するためです。ヒトの皮膚ではマウスと異なりビタミンCやビタミンEが非常に豊富に含まれるので、ビタミンAすなわちレチノールを皮膚に外用してもレチノールが活性酸素の影響を受け向酸化物質としての作用を発揮して遺伝子の変異を起こし発癌を引き起こすことはないのです。

図4

皮膚、得に表皮にはSODやカタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼという活性酸素を消去する酵素が豊富に存在しており、紫外線により生じた活性酸素を速やかに消去します。解糖系のグルコース6リン酸やミトコンドリア内のクエン酸回路の酵素も非常に多く含まれます。これらの酵素は代謝を上げる作用をもち、紫外線によりダメージを受けた皮膚を速やかに回復します。

図5

ヒトの皮膚にABC-G repair serum を外用した場合の模式図を上に示します。ヒトの皮膚は厚く外用後パルミチン酸レチノールが吸収される量はマウスに比してわずかです。皮膚にもともと存在する抗酸化剤以外にABC-G repair serum に含まれる、ビタミンC、ビタミンB3(ナイアシン)、グルタチオンも抗酸化作用を発揮して、紫外線により皮膚に活性酸素が生じるのを強力に抑制して、パルミチン酸レチノールが向酸化作用を発揮するのを抑制します。パルミチン酸レチノールはレチノイン酸に変換されて表皮の増殖やコラーゲンの合成を促進し、さらに皮脂分泌を抑制して毛穴を縮小します。パルミチン酸レチノールは人ではSPF20を発揮してUBVによる紅斑形成を抑制して代謝促進作用を発揮します。パルミチン酸レチノールだけ外用しても朝でも酸スクリーンを併用すれば安心です。ABC-G repair serum の場合配合されたビタミンC,ビタミンB3、そしてグルタチオンがさらに抗酸化作用を発揮するので、サンスクリーンを併用すれば、全く安心して晩だけでなく、朝も使用できます。