なぜと年を取ると子供の時のように長く眠れないの、神経細胞の代謝が低下するからです | 青山ヒフ科クリニック院長Dr.亀山のオフィシャルブログ

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表参道にある青山ヒフ科クリニック 院長 亀山孝一郎のブログです。

前回睡眠は起床時に生じた酸化グルタチオンやアデノシンを除去するために必用と解説しました。

子供の頃は長い間寝ました。夜寝ついたら朝までぐっすり眠れました。

僕は50歳ころから長く眠れなくなり、夜には2,3時間おきに目が覚めるようになりました。

なぜ年を取ると長く眠れなくなるのかについて解説します。

 

僕は起床時の脳細胞の代謝が低下することにより、起きているときに生じる活性酸素の産生が低下する。

その結果活性酸素を消去する睡眠時間が少なくて済むようになるのではと考えました。

まさにそのとうりで、子供の頃は脳の基礎代謝が盛んで大量の酸化グルタチオンやアデノシンが生じる、

それを消去するための睡眠時間も長くなるということがわかりました。

 

では代謝の盛んな生物とそうでない生物の間に睡眠時間の差があるのでしょうか?

上の図に示すように代謝の盛んな蝙蝠やマウスでは非常に睡眠時間が長く、

代謝(酸素の消費量)が少ない馬や象では睡眠時間はわずか2,3時間となっています。

加齢と共に睡眠時間が短くなるのは代謝と関係していることがわかりました。

時をとっても若い時と同じように論文を読み書きして、患者様の診断に脳を使っているつもりでした。

脳の基礎代謝が落ちて生じる活性酸素が少なくなったので、睡眠時間が少なくて済むという事実がショックでした。

先日人間ドッグの際に行った、記憶力などのテストは満点でした。

若い人でも満点の人はなかなかいないといわれ得意満面でしたが、基礎代謝通常時の神経活動スパイクは減っているようです。

睡眠を促すメラトニンの分泌は50代では10代の10分の1しか分泌されません。

なぜか、代謝が低下して生じる活性酸素の量が低下したため、長い睡眠時間を必要としないからです。

分泌されるメラトニンのレベルが下がれば、なかなか眠りにつけないというのは理にかなっています。

でも加齢により眠りにつけなくなるのは、それだけの理由ではないのです。

 

ストレスや慢性炎症で脳細胞が過剰に興奮しているからなのです。

 

 

青山ヒフ科クリニックに来院される患者様は20代から30代の方が一番多いのですが

夜眠れない、睡眠の質が良くないと訴えられる方がいます。

これらの方はニキビや赤ら顔などの方が多く、やる気が出ないと訴える方もいます。

ニキビ、赤ら顔は食生活の乱れやストレスで起こりますが、やる気低下もストレスで起こります。

 

皮膚にかぶれを起こるものが付着すると、ヒトは排除すべき異物を考え、一刻も早くこれを除去しようとして

炎症を起こします。それが接触皮膚炎です。

この場合ストレスのもととなる物質が皮膚に存在するので、

皮膚に炎症を起こし、その結果炎症を起こす物質が早く皮膚から剥離させるために

敏感肌、乾燥肌となったり角層の一部が剥離するのは、非常に合理的な生体の防衛反応なのです。

 

困ったことに、精神的ストレスに対しても人は全く同じ反応を起こしてしまうのです。

いやな上司がいる、毎日通勤で電車に乗るのがつらい、仕事が苦痛です。

これらの精神的ストレスに対しても、ヒトはそれらが皮膚や腸、脳に存在すると勘違いして

ストレスという異物を排除するために、炎症を皮膚、腸、脳で起こします。

その結果ニキビ、赤ら顔、毛穴の開く、敏感肌、便秘、下痢、腹部膨満感、うつ状態などが出現します。

皮膚は真っ赤になり、毛穴も開く状態になり、炎症が激しくなると

どのような化粧品を使用してもひりつくという状態になってしまいます。

脳の神経細胞の周囲にもマイクログリアなどといわれる炎症性細胞が増加して

炎症を起こすサイトカインを放出します。

その結果神経細胞内にカルシウムイオンが流入して、興奮状態となってしまいます。

ストレスだけでなく、朝から晩まで頭を使って仕事をしても脳細胞は興奮状態になってしまいます。

 

そうするとベッドで横になっても、神経細胞の興奮が収まらず、寝付けないということになっていまいます。 

 

最近、脳、腸、皮膚などの全身の組織が協調して、炎症状態を制御していることもわかってきました。

酒さという赤ら顔でずっと落ち着いていた女性の方が、腸の検査ののために腸洗浄をしたら

あっという間に顔が真っ赤になりよくなるまでに約1か月かかりました。

この方は以前にも同様のことが起こりました。

おそらく腸の善玉菌が肌を含む全身の炎症を抑えていたのが、

善玉菌が流されてしまい酒さが悪化したのでしょう。

 

やはり酒さの男性の方で仕事の最中にチョコレートを食べるのをやめて、

高脂質、高糖質の食事をやめて日本食、納豆、白身の魚などを中心の食事にしたら2か月で完治した方もいます。

食生活の改善で善玉菌が増えた可能性があります。

そこで皮膚と脳と腸の関係を調べてみました。

その結果3つの組織が密接に関係していることがわかりました。

 

 

ニキビや赤ら顔の方では皮膚に炎症性細胞がたくさんあります。

これらの細胞はアクネ菌を認識してやっつけようとして活性化しているのですが、ほとんどの患者さんで

腸の悪玉菌を認識するTJR4というセンサーが活性化しているのです。

アクネ菌を認識するセンサーはTLR2でこれもほとんどの患者さんで活性化しています。

よく調べてみるとストレスがある方、特に高脂質、高等室の過食をとっている方では腸内に悪玉菌が増加します。

悪玉菌はリポポリサッカライド(LPS)をいう毒素を産生します。

LPSは腸管を通過して、腸管の周囲にある多数の免疫細胞をTLR4を介して活性化します。

この細胞が皮膚に行くとアクネ菌によりTLR2が活性化して

ニキビ、赤ら顔を起こし、脳に行くと不安、うつ状態そして 不眠症状を引き起こすのです。

ニキビの炎症性細胞はほとんどの方で、アクネ菌だけでなく、腸で大腸菌などが産生するLPSに反応して

炎症を起こしてしまうのです。

その結果 皮膚、消火器症状だけでなく、血管や末梢組織で炎症をおこして高血圧、糖尿病

脳神経で炎症をおこして うつ状態 不眠 認知症を起こしてしまうのです。 

 

心配なことがあるとなかなか眠れないということはよく経験することです。

これは活性化した炎症性細胞や脳細胞の隣にあるマイクログリアという脳の免疫細胞を刺激して

IL1βやTNFαという炎症を引き起こすサイトカインの産生をおこして、脳に炎症状態を引き起こすために起こります。

 

ヒトはストレスを外に排出すべきものと認識して炎症反応を超します。

仕事が忙しい、いやな上司がいる、食生活の乱れ、高血圧、糖尿病、ニキビなどがあると

脳、腸、皮膚を含む全身の臓器に慢性の炎症を引き起こしてしまうのです。

ニキビ、赤ら顔の方では半数の方に便秘、下痢などの消化器症状、やる気が出ないなどの精神症状が出るといわれています。

これらの症状を改善する大きな方法が食生活の改善です。

 

 

乳酸菌、ビフィズス菌などを積極的にとり、高糖質、高脂質食をさけ和食中心の腹八分の食事をするようにしましょう。

脳神経の過剰な炎症を抑制して、鎮静作用を発揮するガンマアミノ酪酸(GABA)

を乳酸菌が産生することも報告されています。

摂取した乳酸菌は腸ですぐ死滅するので、摂取は継続的に行うことが必要です。

GABAは脳、腸、皮膚の炎症をおさえ、 睡眠の質を上げるといわれています。

発想を転換して乳酸菌ではなく、乳酸菌が生産するものをとることも大切です。

食生活の改善だけで質の高い睡眠が得られる可能性が増加します。

 

睡眠の質を上げて、食生活をただすということはスキンケア、メンタルケアの基本中の基本です。

優れたスキンケア用品を使用するだけでなく、睡眠の質の向上や食生活にも配慮しましょう。

 

皮膚科で見逃されやすいものが、食生活の乱れや心の状態です。

皮膚は心の鏡です。

 

美しい肌は心を豊かに、体を元気にします。