透明感のある肌を目指して その3 化粧品の開発者向けに書きました。 | 青山ヒフ科クリニック院長Dr.亀山のオフィシャルブログ

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表参道にある青山ヒフ科クリニック 院長 亀山孝一郎のブログです。

慢性炎症

皮膚を含む全身では穏やかな自覚書状のない慢性炎症が常に生じて老化や発がんを促進しています21)。ニキビや脂漏性皮膚炎や酒さなどの赤ら顔では大量の炎症性細胞が皮脂腺周囲に存在しています。正常皮膚でも皮脂腺や血管周囲には炎症性細胞が存在しています。これらの炎症性細胞は血管内皮細胞同士の隙間をすり抜けて血管内から皮膚に遊出してきます。好中球は血管内に存在しているときはself-asssociated molecular pattern SAMPS)であるシアル酸を認識しているので、炎症を起こす活性酸素を産生して炎症を起こすことは抑えられています。でも血管外に流出するとシアル酸を認識できなくなり活性酸素の産生を開始することが報告されています22。すなわち正常皮膚でも血管周囲性に存在する好中球は活性酸素を放出して炎症を起こしていることになります。皮膚の炎症を押さえるには、炎症性細胞がサイトカインや活性酸素を産生するのを抑えるだけでなく、血管透過性を低下させ炎症性細胞の血管外への遊出を抑制することも大切です。ビタミンCは短期的にはリン酸化酵素であるAMPKを活性化して一酸化窒素合成酵素(eNOS)をリン酸化して活性化して一酸化窒素(NO)産生を増加させ13長期的にはeNOSの補酵素であるtetrahydrobiopterinを安定化させて増加させNOの合成を促進させます23。ビタミンCNOを介して血管内皮細胞に働きかけ、vascular endothelial- cadherinVE-Cad)を強化して血管透過性を低下させると共に、細胞骨格に作用して内皮細胞を増大させ、血管を拡張させます24)。この際ビタミンCcAMPを介してexchange protein directly activated by cAMP (Epac)を増加させ、α-tubulinに結合させてVE-Cadを安定化させて透過性を低下させています。この反応にはNOが必須です。血管内皮細胞成長因子(VEGF)、血小板活性化因子(PAF)などはNOを介して血管を拡張させるとともに血管透過性を増加させます。NOを産生させる物質により血管透過性の反応になぜ差が出るのかは、私が調べた限りでは不明です。eNOSは細胞膜に存在していますが、calmodulinが結合して活性化すると細胞内に移動します。細胞内のNOSの分布の差がcAMP-Epac/Rap1 の活性化によるVE-Cadの安定化に影響を及ぼすのではと私は想像しています。ビタミンCは炎症性細胞に直接作用して炎症を抑制するだけでなく、内皮細胞に作用して血管透過性を低下させて炎症を抑制します。皮膚が白く見えるためには、見た目のヘモグロビンの量が低下することが大切です。見た目とは皮膚にヘモグロビンがたくさん存在するけれども、一部のヘモグロビンが外来光を反射している状態のことです。

上の図に示すように、ビタミンCは血管を拡張させてヘモグロビンを含む血流を増加させますが、内皮細胞を大きくして内皮細胞の隙間からヘモグロビンを見えないようにして皮膚の見た目の赤みを直ちに低下させるので、ただちに皮膚の赤みが低下するのではと筆者は想像しています。すなわちビタミンCは内皮細胞の隙間から血管内のヘモグロビンに光があたり、反射することを抑制し瞬時に皮膚の赤みを低下させるのでしょう。そして拡大した末梢血管は、抹消組織により多くの糖質、脂質そして酸素を供給してミトコンドリアの酸化的リン酸化を促進します。ビタミンABC、グルタチオンをイオン導入や電子穿孔法で皮膚に浸透させると速やかに毛穴が閉じ、皮膚の赤みが低下します。これはACCの抑制による皮脂分泌抑制、血管透過性低下による炎症性細胞遊出抑制、炎症性細胞からのサイトカイン産生抑制、活性酸素の消去などによるのです。

 

透明感のある肌の実現

上は40代の女性で、顔全体にくすみがあり、直径数ミリの色素斑が散在しています(図左)。

ビタミンC、トラネキサム酸、カミツレエキスという作用機序が異なり抗炎症作用を持つ美白剤とオリゴノール、キュアべリーなどの抗炎症作用を持つ植物エキスを毎日外用しました。外用開始1日目と7日目にイオン導入を行いました。顔全体に光沢が出現し、白くなり、眼の下のしわ、法令線が浅くなっている(図中央)。毎日外用を行い、イオン導入を週に1回のペースで7回行った42日後にはさらに色が白くなり色素斑は薄くなり、光沢感が増加して、顔全体がリフトアップして眼の下のシワやほうれい線はさらに浅くなっています(図右)

上の女性は20代後半で、毛穴が軽度開き正常範囲内ですが頬上部がやや赤く、皮膚の光沢も少なく透明感のある肌とは言いがたい状態です(図左)。この方にビタミンCB群を先行して外用して、その後ビタミンA(レチノール)およびグルタチオンを数ヶ月外用しました。これを約2年行いました(図中央)。その後ビタミンABCとグルタチオンを電子穿孔とイオン導入で皮膚に導入した(図右)。導入後は色が白くなり、赤みが低下して毛穴が閉じ、肌の光沢が増加した透明感のある肌となっています。毛穴の大きさや目の下の血管性のくまやシワも外用開始前に比して大幅に低下しています。また眼の大きさも外用前より後のほうが大きくなっています。導入後、コニカミノルタの色彩色差計で測定すると明度指数は左右の鼻の横で測定すると64.8から66.5に増加し、赤み指数は14.2から12.4に低下しています。この撮影はノーメイクで同じ条件で行いました。残念ながら外用開始前の肌の状態は色彩色差計で測定していません。頸部の明度もイオン導入後は約2.2増加し、赤み指数は2.0低下しました。頸部には直接導入はしていません。

 

その4に続く