透明感のある皮膚を目指して その1 化粧品の開発者向けに詳しく書きました | 青山ヒフ科クリニック院長Dr.亀山のオフィシャルブログ

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表参道にある青山ヒフ科クリニック 院長 亀山孝一郎のブログです。

最近、透明感のある肌という表現がされています。透明感のある肌とはどのような状態か解説します。

化粧品の開発者の方を対象に書いた解説(論文)なのでやや難解な表現もありますので加筆して図も新たに

加えてなるべくわかりやすくしました。最後に引用文献も入れました。透明感のある肌とは何か、それを実現する

ためにはどのようなことをしたらいいか、皆さんの参考になれば幸いです。

 

初めに

化粧品工業会によれば、皮膚の透明感とは”皮膚がくもりなく透き通ったように見える状態”と定義されています。私が透明感のある肌と感じるのは、肌が光を反射して光沢感があり輝いている状態です。 そして赤みがなく、くすみや褐色がなく、透き通るような白さを持ち、みずみずしい状態です。皮膚を光学的に測定すると、キメが細かく深く、角質水分量が多いと透明感は増加します。 透明感のある肌を実現するためには代謝を促進してキメを細かくする、毛穴縮小、美白、炎症抑制(赤み低下)、 乾燥肌による落屑抑制、角質水分増加をすればいいのです。透明感のある皮膚を実現するための改善すべき項目について解説していきます。私は皮膚の代謝促進、炎症抑制と共に毛穴縮小が透明感実現に大きく関与していると感じています。皮脂分泌が増加すると毛穴が開き、キメの程度を低下させ、増加した皮脂は内部で炎症を起こし、赤みを増加させ、皮膚表面では乱反射を増加させるからです。ビタミンABCやグルタチオン、トラネキサム酸、甘草エキス(リコカルコンA)などが透明感のある肌を実現します。

 

キメと毛穴と反射光

皮膚が反射する光の量が多くなるためには、皮膚の表面が滑らかであり、乱反射が少ないことが必要です。メラニンやヘモグロビンの量は透明感を下げると報告されています1)。乾燥肌に伴う落屑は乱反射を生じ透明感を損ないます。反射光の方向を揃える要素で大切なものとしてキメがあります。キメは皮丘、皮溝からなり、皮膚の代謝を反映します。表皮角化細胞の増殖は主に縦方向に起こりますが、横方向にも起こり、横幅が広くなります。広くなった皮膚を一定の面積に収めるには、皮膚が波打つ必要がある。これがキメの機序です。

上の図の下に若い代謝の盛んな皮膚を示します。横に広がった皮膚を一定の幅に収めるために表皮は波打っています。上の部分が皮丘であり、溝の部分が皮溝です。上には代謝の低下した皮膚を示します。横に広がっていないで皮膚はほとんど波打っていません。代謝の盛んな皮膚ではキメは細かく代謝の低下とともにキメは粗くなります。

上の図は前腕内側の紫外線に当たらない部位のスキンスコープ像です。加齢と共にキメが粗くなってゆくのがわかります。キメを細かくするには代謝を上げるだけでなく、毛穴を縮小させることが非常に大切です。

毛穴の開きが著明になるとしばしば毛穴の出口がすり鉢状にへこみ、乱反射の原因となるだけでなく、周囲の表皮を毛穴のほうに引っ張り、波状を呈しキメを形成している皮膚を毛穴方向に牽引して、キメの程度を縮小させてしまうからです。透明感のある皮膚の実現のために毛穴縮小はあまり言われていませんが、透明感のある皮膚の実現には毛穴縮小は非常に重要なのです。

上は10代の女性の50倍に拡大したスキンスコープ像です。毛穴が拡大していると同時にキメが低下しています。大量の皮脂による反射光は多いのですが違う方向に反射しています。皮脂の過剰分泌により光沢も増加しています。10代であれば代謝が盛んでキメも細かくなるはずですが、大きくなった毛穴が代謝のキメに対する効果を打ち消しています。赤みも強く透明感のある皮膚ではありません。

上の図は20代の軽度皮脂分泌が亢進している女性に、ビタミンCと男性ホルモンの抑制作用を持つ甘草エキスを1か月外用した結果です。赤みが低下するとともにキメが細かくなっています。ビタミンCもリコカルコンAも皮脂分泌抑制作用を持っています。ビタミンCは代謝促進作用を発揮します。ビタミンCとリコカルコンAは青山ヒフ科クリニックのアンチアクネローション、毛穴レスローション、毛穴レス美白ローションに配合されています。

 

美白

クスミがあり、シミが散在すると透明感のある皮膚とは言えません。クスミの原因としてはメラニンの量の増加以外に、皮膚の乱反射が多いことにも注意が必要です。美白剤はチロジナーゼの活性を抑制したり、メラノサイトからケラチノサイトへの移送を抑制するなどの機序がありますが、美白を徹底するには皮膚の眼に見えない慢性炎症を抑える事も大切です。慢性炎症は皮膚を含む全身で起こっていますが、炎症はメラニン産生だけでなくシワやたるみも増加させます。ビタミンC、グルタチオンは共にメラニン産生を抑制します。グルタチオンはメラニン産生の律速酵素となるチロジナーゼやL-DOPAに結合してその活性を抑制してメラニン産生を抑制します。メラニン産生の段階の中間体であるdopaquinoneSH基を持つグルタチオンの存在下では黒褐色のeumelaninではなく赤から黄色のpheomelanin となります2)。グルタチオンは産生されたメラニンの凝集を抑制することも報告されています3)。 ビタミンCはチロジナーゼの活性を抑制します。ビタミンB3はメラノサイトからケラチノサイトへのメラノゾームの移送を抑制して美白を実現します5。ビタミンB6はチロジナーゼの発現を抑制してメラニン産生を抑制します6)。レチノールがαMSHによるメラノーマ細胞のチロジナーゼの発現の増加を濃度依存性に抑制することが報告されています7)。ストレスを人は炎症として感知し、クスミを増加して肌の透明感を抑制するが、ストレスや炎症により視床下部-脳下垂体-副腎皮質よりなるHPA軸が活性化され全身や皮膚におけるproopiomelanocortin (POMC)が増加します 8)POMCは皮膚においてはケラチノサイトなどから分泌され、肥満細胞が分泌するtryptaseという蛋白分解酵素によりprocessing(切断) されてαMSHとなります9),肥満細胞は露光部に多く存在する傾向があり10、紫外線などによる炎症の際にtryptaseを放出することを考慮するとレチノールはストレスや紫外線による炎症によるαMSHを介した皮膚のメラニン産生を抑制することが示唆されます。

 

その2に続きます